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第二十九話:人材の「頭脳流出」と最強のニート領


「……セバス。国境の検問所がパンクしていると報告があったが、どういうことだ? 帝国軍の残党がまだ暴れているのか?」


領主館のバルコニーで、最新式の「全自動・全方位マッサージチェア」に身を委ねていたレオンは、怪訝そうに尋ねた。


「いえ、若様。帝国から逃げ出してきたのは兵士ではなく、一線級の魔導技師や土木建築士、そして王都の腐敗に嫌気がさした優秀な官僚たちでございます。彼らは口を揃えてこう申しております――『帝国や王国に未来はない。真の英明なる指導者、レオン閣下のもとで、その叡智の末端に加えさせてほしい』と」


レオンは呆れて天を仰いだ。 (……何が『叡智』だ。俺はただ、二度と帝国に攻め込まれないように要塞化しただけで、快適な暮らしを求めて設備投資をしただけだぞ!)


国境の受付所には、異様な光景が広がっていた。


「頼む! 通してくれ! 私は帝国で魔導動力炉の設計をしていた者だ。帝国の無能な将軍たちに資金を削られ、研究を潰された! だが、グラウス領なら……あの飛行船を作り上げたレオン閣下のもとなら、真の魔導の深淵に触れられるはずだ!」


「私は王都の財務官を務めていた。あの若き天才領主による『合理的かつ無慈悲な資産接収術』を間近で学び、この身を捧げたいのだ!」


集まったのは、各国のエリートたちである。彼らにとって、レオンが帝国軍を「経済的に解体」し、王都の叱責を「正論で粉砕」した事実は、既存の国家システムを超越した「新しい理想郷」の誕生に見えていた。


レオンは、セバスが持ってきた移住希望者のリストを眺めながら、邪悪な笑みを浮かべた。


「……ふむ。帝国最高の土木技師か。こいつがいれば、領地全体の『全自動ゴミ回収システム』と『温泉付き床暖房ロード』の完成が早まるな。それに、この王都の元財務官……こいつに実務を丸投げすれば、俺の書類仕事がゼロになるじゃないか」


「流石は若様。移住者を『領地の歯車』としてではなく、若様の『怠惰の質を向上させる専門職』として配置されるのですね」


「言い方が悪いぞ、セバス。これは『適材適所』だ」


レオンはすぐさま、移住の条件を提示した。 「……いいか、受け入れるのは『俺の生活を便利にするスキル』を持つ者だけだ。それ以外の、ただ平和を享受したいだけの無能は王都へ送り返せ。ここは俺の安息地であって、慈善施設じゃない」


数日後。 グラウス領の各所では、帝国と王国の天才たちが、レオンの「わがままな要望(超高性能なニート設備)」を実現するために、熱狂的に働いていた。


「見てくれ! 閣下が考案された『自動背中流し機能付き・高気圧酸素風呂』の設計図だ! なんて独創的な魔力回路なんだ! 閣下は、我々が思いつきもしなかった次元で魔力を捉えている!」 (※レオンがただ「風呂に入るのが面倒だから自動化して」とリネットに頼んだメモである)


「……素晴らしい。閣下は、我々のような行き場を失った天才たちを救うために、あえて『贅沢な要望』という形で高いハードルを与え、我々の矜持を刺激してくださっているのだ……!」


フェリスは、活気付く領地を眺め、その目に尊敬の念を込めて呟いた。 「……閣下。貴方は国を奪うのではなく、人々の『心』と『才能』を接収されたのですね。もはやこの領地は、どの国家よりも強靭な『知の要塞』となりました」


(……よしよし。これで俺が何もしなくても、勝手に領地が便利になり、勝手に金が回り、勝手に防御力が高まっていく……。完璧だ。これでやっと、本当の夏休みが始められるぞ)


レオンは、天才たちが血眼になって作り上げた「究極の遮光カーテン」を閉め、深い昼寝へと落ちていくのだった。

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