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第二十八話:王都の功労賞(という名の嫌がらせ)


バルムート帝国の五万の軍勢を一人残らず「物理的・経済的に解体」してから数日。グラウス領は、帝国から接収した賠償金と物資によって、空前の建築ラッシュに沸いていた。


「ひっひっひ……見ろセバス。この『金剛石入りの遮音壁』を。これで隣で魔王軍が滅びようとも、俺の昼寝は妨げられない。完璧な防音だ」


レオンが成金趣味全開で領主館のリフォームを指揮していると、空から王国の紋章を刻んだ伝令の高速魔導鳥が舞い降りてきた。


運ばれてきた親書を開いたレオンの顔が、みるみるうちに引き攣っていく。


「……セバス。王都から手紙だ。『帝国軍撃退の功績は認める。しかし、王家の許可なく隣国に宣戦を布告し、勝手に戦争を終わらせ、あまつさえ巨額の賠償金を独占したことは、王国の外交秩序を乱す重大な越権行為である。よって、王都にて弁明を命じる』……だと?」


レオンは机を叩いた。 (ふざけるな! 放置してたら領地が踏み潰されてたんだぞ! 俺はただ自分の『ニート用資産』を守っただけだ! 秩序? そんなもののために俺の金が奪われてたまるか!)


数日後、王都・玉座の間。 レオンは、最高級の「対・精神干渉」魔導繊維で編まれた(見た目は非常に地味な)漆黒の礼服を纏い、国王と大臣たちの前に立っていた。


「レオン・フォン・グラウス。貴殿の勇猛さは聞き及んでいる。帝国五万を退けたのは、王国史上類を見ない快挙だ。……だが!」


恰幅のいい外務大臣が一歩前に出て、顔を真っ赤にして叫んだ。


「勝手に帝国を経済破綻させるほど毟り取るとは何事だ! 本来、帝国の賠償金は王国の国庫に入り、外交交渉の材料とされるべきもの。それを貴殿は勝手に領地のインフラ整備に使ったというではないか! これは反逆罪にも等しい独断専行である!」


(……出たよ。俺が命がけで(快適な生活のために)稼いだ金を、横から掠め取ろうとするハイエナ共が)


レオンは冷淡な目を大臣に向け、懐から「一枚の紙」を取り出した。


「……大臣。これをご覧いただきたい。帝国軍が侵攻を開始した際、私は三度にわたり王都へ援軍の要請を出した。しかし、王都からの返答は『辺境の一領地のために貴重な兵は動かせない。各自で対応せよ』……。これは王家の印が押された正式な『見捨てられた証拠』だ」


玉座の間が静まり返る。レオンの声はさらに冷たさを増す。


「『各自で対応せよ』と言われたので、私は私財を投じ、私兵を使い、私の責任で対応した。その結果得た報酬を、なぜ一歩も動かなかった貴殿らに分け与えねばならない? それこそ、王国の法に反する『不当な略奪』ではないか?」


「なっ……貴様……!」


「……そこまでにしておけ、大臣」


沈黙を守っていた国王が、重い口を開いた。国王の目は、レオンの背後に控えるセバスとフェリス、そしてレオン自身から放たれる「もしここで金を要求したら、王都ごと接収しかねない」というドス黒い威圧感を見抜いていた。


「グラウス卿。……貴殿の言い分はもっともだ。叱責は取り消そう。……だが、王国の名誉を守ったことも事実。褒美として、貴殿に『辺境伯』の爵位と、帝国国境付近の『完全自治権』を与えよう」


「……自治権、ですか」


(よし、これで王都に税金を払わなくて済むし、役人の干渉も受けない! 完全な『ニートの城』の完成だ!)


「ありがたくお受けいたします」


レオンは内心でガッツポーズをしながら、慇懃に頭を下げた。 だが、彼が去った後、国王は大臣たちに力なく呟いた。


「……気づかなかったか? 彼の礼服……あれだけで、我が国の騎士団全員の装備が買えるほどの魔力密度だったぞ。……下手に突っつけば、明日にはこの玉座すら『接収』されていただろうな」


こうして、レオンは「勝手な行動」への叱責を跳ね除け、王家すら手を出せない「独立国家並みの自治権」を手に入れた。


領地へ戻る魔導船の中で、レオンはホクホク顔でセバスに命じた。 「セバス! 帰ったらすぐに自治権の施行だ! まずは王都からの余計な役人を全員追い出して、その宿泊施設を『全自動猫カフェ』に改装しろ!」


「御意に、若様。……王家すら退けるその威厳、もはや次の『接収対象』は、この世界そのものかもしれませんな」


レオンの「平穏な生活」を守るための戦いは、いつの間にか王国すらも震え上がらせる「権力」へと変貌を遂げていた。

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