第二十話:絶望の「逆・接収(レイド)」
山賊の根城である『断崖の牙』。そこには、敗走した山賊たちが震えながら身を寄せ合っていた。 「……た、助かったのか? あの死神、追っては来なかったか?」
だが、その希望は一瞬で打ち砕かれる。 頭上から降り注いだのは、リネットが放った超高出力の「広域無力化魔法」と、漆黒の外套をなびかせて空から降臨するレオンの姿だった。
「……逃げ切れると思ったか? 俺の夏休み(ニート期間)を削った罪は重いぞ」
レオンの背後には、怒り狂ったハンスと、主の怒りを「正義の執行」と確信して瞳を燃やすフェリスが控えていた。
「閣下、この者たちの処遇は?」 フェリスが、鋭い剣先を山賊の首領に突きつけながら問う。
「殺すのは簡単だ。だが、それでは俺が被った損害(移動費とモンブラン代)が補填されない。……セバス、リネット。始めろ。この山の土の一粒、岩の破片に至るまで、価値のあるものは全て『接収』だ」
「や、やめてくれ! その金は俺たちが一生かけて盗み溜めた……!」
「黙れ。盗んだのはお前たちだが、今日から俺の所有物だ。……おや、リネット。その奥の隠し扉、何かあるな?」
リネットが指を鳴らすと、山賊のボスすら知らなかった最奥の壁が崩れ、そこには勇者ルート中盤で手に入るはずのロストテクノロジー――**『魔導飛行船・プロトタイプ』**が埋もれていた。
「……ひっひっひ。これはいい。王都との移動がもっと楽になるし、何よりこれ、内装を改造すれば『空飛ぶ豪華寝室』にできるな。……これ一隻で、お前たちの命代として受理してやる」
山賊たちは、文字通り「着ている服の予備」まで剥ぎ取られ、一文無しの状態で領地の「開拓労働刑」に処されることになった。
「……ああ、なんという知略」 フェリスは、回収された飛行船を見上げて感嘆の涙を流す。 「閣下は、あえて山賊を生かし、労働という形で罪を償わせる道を与えられた。そしてこの飛行船を使い、空からの監視を強めることで、二度とこのような悲劇(略奪)が起きないよう配慮なされたのですね!」
(※実際は、二度と移動で自分の昼寝時間を邪魔されたくないだけである)
「ハンス、フェリス。この船を領地まで運べ。……ふふふ、これで次の学園登校は、空の上でシャンパンを飲みながら優雅に移動できるぞ」
レオンは、山賊から「逆・略奪」した成果に満面の笑みを浮かべていたが、その姿は周囲には「悪を根絶し、失われた英知(飛行船)を取り戻した英雄」として、さらに神格化されていくのだった。




