表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/60

第十九話:逆鱗と「死神」の帰還


レオンが王都の学園で「学費の元を取る」ために闇組織を解体していた頃、グラウス領では不穏な影が動いていた。 「……へへ、今がチャンスだ。あの『死神領主』は王都で学生ごっこに耽ってやがる。留守を預かるのは元山賊のカス共と女騎士一人。今なら農村の貯蔵庫は奪い放題だぜ!」


近隣の山々から集まった数百人の山賊連合。彼らは、グラウス領が「素材バブル」で空前の富を築いていることを聞きつけ、レオンの不在を狙って国境付近の農村へと襲いかかった。


「野郎ども、構えろ! 若様の村に一歩でも足を踏み入れさせるな!」


村の入り口で立ち塞がったのは、ハンス率いる剥ぎ取り部隊(領主軍)だった。 ハンスは王都へ同行せず、領地の防衛と素材加工の指揮を任されていた。彼はリネット製の「超重魔導斧」を肩に担ぎ、かつての仲間である山賊たちを冷酷な目で見据える。


「ハンスの兄貴! なんであんたほどの男が、あんなガキの犬に成り下がってやがる!」


「……兄貴? 誰が貴様らの兄貴だ。俺はな、若様に拾われて初めて知ったんだよ。『真面目に働いて、旨い飯を食い、暖かいベッドで寝る』ことの素晴らしさをな!」


ハンスの咆哮と共に、戦闘が始まった。 山賊たちは数で勝っていたが、今の領主軍はレオンに叩き込まれた「効率的な狩り」と、リネット製の「過保護装備」を身に纏っている。


「若様の村は、俺たちの『安眠の地』なんだよ! 汚ねぇ足で踏み抜くんじゃねぇ!!」


ハンスの斧が一閃するたびに、山賊の列がゴミのように吹き飛ぶ。ハンスは必死だった。もしここで村に被害が出れば、若様の「完璧なニート計画」に泥を塗ることになる。それは彼にとって死より屈辱的なことだった。


激戦の末、ハンスの獅子奮闘により、村人には指一本触れさせず山賊連合を敗走させた。 しかし、その直後――空を引き裂くような轟音と共に、王都から「超高速・魔導馬車」で駆けつけたレオンが到着した。


馬車から降りてきたレオンの周囲には、物理的な圧力がかかるほどの「殺気」が渦巻いている。


「……ハンス。状況を報告しろ」


「は、ハッ! 山賊連合、約三百! 全て撃退しました! 村人、家畜、貯蔵庫の穀物、被害はゼロでさぁ!」


ハンスは誇らしげに報告したが、レオンの怒りは収まらなかった。 レオンが激怒している理由は、村人の心配ではない。


(……ふざけるな。あと一日遅れていたら、俺の『将来の不労所得(税金)』を生み出す農民たちが死んでいたかもしれない。それに、こいつらのせいで俺の夏休み初日が『移動』だけで潰れたんだぞ!? 俺の貴重な休息時間を、こんなゴミ共のために無駄にさせやがって!)


レオンは逃げ遅れた山賊の一人を、漆黒の手袋で持ち上げた。その瞳は、もはや人間のそれではない。


「……お前ら、自分が何をしたかわかっているのか? 俺の『資産』に手を出し、俺の『睡眠時間』を削り、俺の『計画』を汚した。……その対価は、死だけでは到底足りない」


「ひ、ひぃぃぃ……助けて……」


「セバス、リネット。山賊の根城を特定しろ。……蟻の這い出る隙間も残すな。地下の隠し財産、山賊の家族が食ってるパンの欠片、着ているボロ布まで、全て『接収』する。――抵抗する者は、二度と太陽を拝めないようにしてやれ」


「……ああ、なんと慈悲深いお怒りか」 血に染まったハンスが、その場に跪いて涙を流した。


「若様は、俺たちが守り抜いたこの平穏を、誰よりも愛しておられる……。村人のために、自ら修羅となって山賊の根を断ち切ろうとなされているんだ……!」


「左様でございますな」 セバスが手帳にさらさらと書き込む。 「若様の怒りは、弱き者を挫く暴力への『正義の鉄槌』。略奪された者の痛みを知るがゆえに、一銭の妥協も許さぬ『完全なる報復』。……これぞ、グラウス領が誇る救世主の姿です」


レオンは冷徹に命令を下しながら、内心では鼻息を荒くしていた。 (山賊どもの隠し資産を全部奪えば、今回の高速移動にかかった魔導燃料代と、俺の精神的苦痛への慰謝料で、お釣りがくるはずだ。一円も残さず毟り取ってやる!)


こうして、グラウス領を襲った山賊たちは、命よりも過酷な「徹底的な資産剥奪」という絶望を味わうことになる。 そしてレオンは、図らずも「領民を誰よりも愛し、その安全を脅かす者を決して許さない苛烈な守護神」として、その名声をさらに高めてしまうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ