表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/44

休息

中野から新宿へ向かう道すがら、

れんとひよりは薄暗いビル街を歩いていた。


やがて、ひよりが立ち止まって前方を指差す。


「れんさん、あれ……今日の寝床にできそうじゃないですか?」


巨大な建物があった。

ガラスは割れ、看板は色褪せている。

かつては賑わったであろう“デパート”の廃墟だ。


れんは頷く。


「ひより。今日はここで試したいことがある。

 だから……新宿に行くのは、明日にしよう。」


ひよりが首をかしげる。


「ここって……デパートですか?」


「ああ。」


れんは少し間を置き、続けた。


「ひよりについてきてもらったのは……

 別に情報が欲しかっただけじゃないんだ。」


ひよりは目を丸くし、胸の前で手を組む。


「私が可愛いからですか?」


れん「……」


ひより「……?」


れん「……俺が向こうの世界で得意にしてた魔法があるんだ。

 それをするのに、最低二人はいたほうがいい。」


ひよりはぱっと笑顔になる。


「じゃあ、特訓ですね!」


れんは小さく息をついた。


「……特訓するぞ。」



ーーーーーーーー


「……結構筋がいいんじゃないか。」


ひよりは胸を張っていた。




ーーーーーーー


れんはデパート内部の暗がりを見渡し、ぽつりと呟いた。


「……昔映画で見たんだ。

 荒廃したデパートで物色するやつ。

 一度やってみたかった。」


ひよりの目がきらりと光る。


「れんさん、そういうタイプだったんですね!」


二人はデパート奥へ進んだ。


だが——


棚は空。

お菓子コーナーも空。

酒売り場も空。

服は引きちぎられた残骸ばかり。


れんは肩を落とした。


「……なんにもないじゃん。」


ひよりはけろっとして言った。


「そりゃそうですよ〜れんさん。

 この辺りって、新宿コロニーに物資が全部持ってかれる地域なんです。

 私たちもコロニーにいたとき、

 この辺の建物は結構漁りましたし。」


れんは言葉を失い、もう一度空の棚を見る。


「……マジか。」


ひよりは笑いながら、れんの肩を軽く叩く。


「そう落ち込まないでくださいよ。

 でも……一緒に歩いてると、なんだかゲームみたいで楽しいです。」


れんは視線を横にそらす。


「そうかよ。」


ひよりは満足げに頷いた。





デパートを出て外の空気を吸った瞬間、

ひよりが小さく息を呑んだ。


「……れんさん。今の……」


れんも気づいていた。

肌をかすめるような“見られている気配”。


「……前からずっとだ。

 でも、ここまで近いのは初めてだな。」


夕暮れに染まる路地の奥から、

細身の男が静かに現れる。


首に古いチョーカー、

ひび割れた笑み。


「やっと見つけましたよ。

 ——帰還者さん。」


れんは無言で腰の剣に触れる。


男は一歩、距離を縮めた。


「ネクロマンサー様は、あなたと“お話”したいそうです。」


ひよりの喉が震えた。


れんの表情だけが、風のように鋭くなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ