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「陽だまり」こまりさんの憂鬱  作者: 双鶴


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7/10

6話

雨って、ずーっと降ってると、なんかこう…世界がぬるま湯みたいになるよね。

わたしは、梅雨がちょっと苦手。

だって、テラスに出られないんだもん。

陽だまりも消えちゃうし、床が冷たいし、風も湿っぽいし。

それに、雨の音って、ずーっと「しとしとしとしと」って鳴ってて、耳の奥に入り込んでくる。

まどろもうとしても、なんかこう…うまく沈めないの。


でも、梅雨には梅雨の楽しみもある。

それはね、窓辺の観察。

わたしは、リビングの窓の下にあるクッションに丸くなって、外をじーっと見るの。

雨粒が窓にぴたぴた当たって、流れて、線になって、また消えていく。

それを見てると、なんかこう…時間がとろけていく感じがする。

雨粒って、ひとつひとつ、ちがう動きをするんだよ。

速いやつ、ゆっくりなやつ、途中で止まるやつ、仲間と合流するやつ。

それって、ちょっと人生っぽいよね。

って、わたしが言うのも変だけど。


美希さんは、梅雨になると髪がふわふわになる。

「湿気でまとまらない〜」って言いながら、鏡の前でくしを動かしてる。

その姿が、なんかこう…ちょっとだけおもしろい。

わたしは、クッションの上からじーっと見てる。

すると、美希さんが「こまりさん、笑ってるでしょ」って言う。

うん、笑ってるかも。ちょっとだけね。


雨の日って、美希さんも静かになる。

コーヒーじゃなくて、紅茶を飲んでることが多い。

本を読んだり、スマホで音楽を流したり、窓の外をぼんやり見たり。

その時間が、わたしはけっこう好き。

人間が静かになると、部屋の空気もやさしくなる。

わたしは、その空気の中で、そっと丸くなる。

まどろみって、静けさの中にあるんだと思う。


このあいだなんて、美希さんが「こまりさん、雨って好き?」って聞いてきた。

わたしは、答えなかった。

でも、たぶん、顔に出てたと思う。

雨は、ちょっとだけさみしいけど、ちょっとだけ落ち着く。

陽だまりがないぶん、窓辺の世界が広がる。

それって、悪くない。


小鳥たちは、雨の日は来ない。

テラスはしんとしてて、葉っぱが濡れてて、風がすこしだけ冷たい。

でも、窓の外には、傘をさした人たちが歩いてる。

その姿を見てると、「みんな、がんばってるなぁ」って思う。

わたしは、がんばらないけどね。

猫って、がんばらない生きものだから。


今日も、雨が降ってる。

窓辺のクッションに丸くなって、雨粒の動きを見ながら、ちょっとだけ哲学する。

「雨粒って、どこから来て、どこへ行くんだろう」

「わたしって、なんで丸くなると落ち着くんだろう」

「美希さんの髪は、いつになったらまとまるんだろう」

そんなことを考えてるうちに、目がとろんとしてくる。


梅雨って、まどろみの季節。

陽だまりはないけど、窓辺の哲学がある。

それが、こまりさんの、雨の日の過ごし方。

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