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「陽だまり」こまりさんの憂鬱  作者: 双鶴


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5/10

4話

よく言われるんだけどね、「猫って魚が好きなんでしょ?」って。

うーん、どうかなぁ。わたしは、そんなに好きじゃない。

っていうか、魚って、においが強すぎるし、骨がいっぱいあるし、なんかこう…落ち着かないの。

ツナ缶はまあまあ好きだけど、それは“ツナ缶”だからであって、“魚”とはちょっと違うと思うんだよね。

それに、わたしは三毛猫。ちょっと気品があるっていうか、なんでもかんでも食べるわけじゃないの。


ネズミ?いやいやいや、絶対ムリ。

あんなちっちゃくて、ちょろちょろしてて、目がきょろきょろしてるやつ、見てるだけで疲れる。

たまにテレビで「猫とネズミの追いかけっこ」みたいなのが流れてるけど、あれってほんと?

わたしは、ネズミなんて見たことないし、見たとしても、たぶん逃げると思う。

だって、わたしの暮らしは、陽だまりとカリカリでできてるんだもん。

ネズミを追いかけるなんて、そんなアクティブなこと、わたしの哲学に反するよ。


鳥もね、食べないよ。

テラスに来る小鳥たち、わたし、けっこう好きなんだ。

チュンチュンって鳴いて、手すりにとまって、風に吹かれてる姿を見ると、なんかこう…詩的っていうか、絵になるっていうか。

わたしは、彼らを眺めるのが好き。

たまに、ちょっとだけ手を伸ばしてみるけど、それは“遊び”であって、“狩り”じゃない。

だって、わたしは三毛猫。ちょっと文化的な猫なの。


美希さんも、わたしの好みをよくわかってくれてる。

このあいだなんて、「こまりさん、サーモン味はあんまり好きじゃないんだよね」って言って、チキン味に変えてくれた。

うん、チキン味は好き。ほどよく香ばしくて、カリッとしてて、口の中でほろっと崩れる感じがいい。

でも、チキンって“鳥”だよね?

うーん…それはそれ、これはこれ。

生きてる鳥と、加工されたチキンは、ちょっと違うの。

わたしの中では、ちゃんと線が引かれてるから。


それにね、わたしは“食べる”ってことに、ちょっとした美学を持ってるの。

おなかがすいたからって、がつがつ食べるのは、ちょっと違う。

まず、においをかいで、器のまわりを一周して、ひと粒ずつ、じっくり味わう。

それが、こまり流。

美希さんは「こまりさん、食べるの遅いね〜」って言うけど、わたしは“食事”をしてるの。

“エサ”じゃなくて、“食事”。

そこ、大事。


だからね、「猫って魚が好き」「ネズミを追いかける」「鳥を食べる」っていうのは、ぜんぶステレオタイプ。

わたしは、魚もネズミも鳥も、食べない。

カリカリと、たまにツナ缶。それが、わたしの世界。

それでじゅうぶん。

それが、こまりさんの、ちょっとした誇り。


今日も、テラスでまどろみながら、小鳥たちを眺めてる。

彼らは、わたしの“ごはん”じゃなくて、“風景”。

ネズミは、テレビの中だけの存在。

魚は…まあ、ツナ缶だけは、ちょっとだけ好き。

でも、それは“ツナ缶”だから。

わたしの食の哲学は、けっこう深いんだよ。


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