2話
最近、ちょっと困ってることがあるんだよね。
それはね、テラスに増えてきた“あいつら”のこと。
そう、観葉植物。しかも、でっかいやつ。葉っぱがぴらぴらしてて、茎がぐんぐん伸びてて、なんかこう…主張が強いの。
わたしの陽だまりスポット、ちょっとずつ、ちょっとずつ、あいつらに侵食されてる気がするんだけど。
最初は、小さな鉢だったの。美希さんが「この子、かわいいでしょ」って言いながら、テラスの隅っこに置いたやつ。
うん、まあ、かわいかったよ。ちょこんとしてて、葉っぱも控えめで、わたしの昼寝の邪魔にはならなかったし。
でもね、あれから数ヶ月。気づいたら、仲間が増えてた。
しかも、どれもこれも、やたらと背が高い。葉っぱがわさわさしてて、風が吹くたびに「さわさわ〜」って音を立てるの。
あれ、けっこう気になるんだよね。寝てるときに、耳の先っぽに触れたりすると、びくってなるし。
このあいだなんて、わたしの定位置に、でっかい鉢がどーんと置かれてたの。
「ちょっと!そこ、わたしの場所なんだけど!」って言いたかったけど、言えないから、じーっと見つめてやった。
そしたら美希さん、「あ、ごめんごめん、こまりさんの場所だったね」って言って、鉢をちょっとだけずらしてくれた。
でも“ちょっとだけ”じゃ足りないのよ。わたしの丸まりスペース、半分になっちゃったじゃん。
しかもね、あいつら、夜になるとちょっと怖いの。
葉っぱの影が、部屋の壁にゆらゆら映って、なんかこう…動いてるみたいに見えるの。
わたし、最初の夜はびっくりして、ソファの下に隠れちゃった。
美希さんは「観葉植物って癒やされるよね〜」って言ってたけど、わたしにはちょっとしたホラーだよ。
でもまあ、わたしも大人だから、少しは譲ってあげる。
テラスの半分は、あいつらに貸してあげることにした。
そのかわり、朝のいちばんいい時間帯、陽が差し込むゴールデンタイムだけは、わたしのもの。
そこに寝そべって、ふわ〜ってなってるときだけは、誰にも邪魔されたくないの。
葉っぱがちょっと触れてきても、目をつぶって、気づかないふりをする。
それが、わたしの平和のルール。
あ、そうそう。あいつらの中に、ひとつだけ気になるやつがいるの。
葉っぱが細くて、ちょっと猫じゃらしっぽいやつ。風が吹くと、ふにゃふにゃ揺れて、なんか遊びたくなっちゃう。
このあいだ、ちょいちょいってしてみたら、美希さんに「こら、こまりさん、それはだめ〜」って言われた。
でも、あれ、絶対わたしのために置いたやつだと思うんだけどなぁ。
観葉植物って、たぶん美希さんにとっては“癒やし”なんだろうけど、わたしにとっては“侵略者”であり“ライバル”であり、ちょっとだけ“遊び相手”でもある。
でも、まあ、悪いやつらじゃない。たぶん。
夜にこっそり話しかけてみたら、葉っぱがふるふるって揺れたから、もしかしたら返事してくれたのかも。
それとも、ただの風だったのかな。
今日も、テラスはにぎやか。
小鳥たちが来て、葉っぱが揺れて、陽だまりがわたしを包んでくれる。
わたしは、ちょっとだけ狭くなったスペースに、ぎゅっと丸くなって、目を閉じる。
春の光は、まだわたしの味方。
観葉植物たちよ、そこだけは、譲らないからね。




