プロローグ
やっほー。わたし、こまりっていいます。三毛猫の女の子です。
ほんとは「小鞠」って書くんだけど、飼い主の美希さんが「こまりさん」って呼ぶから、いつのまにかそれが定着しちゃった。
なんで「小鞠」かっていうとね、わたしが丸くなって寝てるときに、「あ、小さい鞠みたい」って言ったのがはじまりなんだって。
ふーん、って感じだけど、まあまあ気に入ってる。かわいいし、ちょっとおしゃれっぽいし。
わたしが住んでるのは、マンションの三階。けっこう新しくて、ピカピカしてるところもあるけど、広さはそんなにないかな。
でもね、すっごく大事な場所があるの。それが、テラス!
このテラスが、わたしのいちばんのお気に入り。朝になると、陽が差して、床がぽかぽかになるの。
そこに寝っころがると、なんかもう、世界がふわ〜って溶けていくみたいで、目をつぶると、夢の中に落っこちそうになる。
小鳥たちも来るよ。チュンチュンって鳴いて、ちょっとだけ遊んで、すぐ飛んでっちゃう。
「もっといてよ〜」って思うけど、彼らは忙しいみたい。わたしは、そうでもないけどね。
部屋の中は、ミニマムっていうのかな?必要なものだけ、って感じ。
でも、ちょっとだけ散らかってる。美希さん、コーヒーが好きだから、マグカップがあちこちにあるの。
あとね、雑誌とか本とか、読みかけのやつがソファの上に積み重なってたりする。
でも、それがなんか、落ち着くんだよね。きれいすぎる部屋って、逆に落ち着かないし。
美希さんはね、優しいけど、ちょっとクール。
わたしに話しかけるときも、なんか詩人みたいな声で「こまりさん、今日もいい天気ね」って言ったりする。
うん、いい天気だよ。だから、テラスで寝てるんだよ。って思うけど、わたしはあんまり返事しない。
でもね、わたしにはわかるんだ。美希さん、わたしのこと、けっこう好き。
だって、わたしが寝てると、そーっと写真撮ったりするし、コーヒー飲みながら「かわいいなぁ」ってつぶやいてるの、聞こえてるもん。
たぶん、わたしも美希さんのこと、けっこう好き。
たぶんね。ちょっとだけ、すねてるときもあるけど。
そんなわたしの、まどろみの日々。
陽だまりの国から、ちょっとだけおしゃべりをお届けします。
今日も、何かが起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。
でも、起こらない日のほうが、けっこう好きだったりする。
それが、猫の暮らしってもんです。
のんびり、ふわふわ、ちょっとだけ憂鬱。
でも、わたしは今日も、陽だまりの中で、丸くなってます。




