7話 大魔女の占い
リエラティが4枚目のクッキーをたいらげたで二人の話は落ち着く。
「あらごめんなさいね。久しぶりに会ったもんだからついつい話し込んじゃったわね。退屈だったでしょう?」
エンネアは優しく僕の頭を撫でてくれる。
僕は頭を左右に振って否定する。
〝二人の話は凄く面白かったです!〟
「あらそ~お? 可愛いのねぇ。私もこんな素直で可愛い弟子が欲しいわ~。本当に私の所に来ない?」
妖しげな目で僕を見つめる。
「これっ!!」
アストーは一括して杖で床を小突く。
「冗談よ。待たせたお詫びとしてあなたを占ってあげる」
「やってもらうと良い。こやつの占いは一度もハズレたことがないからのう」
エンネアは僕の耳のあたりに両手を置いて目を瞑る。物凄い魔力が僕を包み込む。
その瞬間、体がフワッと浮遊するような不思議な感覚に包まれた。
「ふふふふ……あははははは!! 面白い! この子凄く面白いわ! ジーナス、あなたはね近い将来物凄いことをやり遂げるわ。誰もが認める唯一無二となって注目を集めるわね。それまで精神力を鍛えなさい。必ずあなたの助けになるから」
突然笑いだして驚いた。
そして、何言ってるのかよくわからなかった。
僕が何かを成し遂げて唯一無二になるらしい。
「ほう。おぬしが興奮するのは珍しいのう。何が見えたんじゃ?」
「それを言ったら面白くないじゃない。でもあなたも驚くことよ。それもとびっきりね」
「一人だけ知ってずるいのう。まぁよい。ゆっくりとその時を待つとしよう。悪いことは無いんじゃろう?」
「そうねぇ~。悪いことは無いわね。それと多くの人と知り合って友達も出来るわね」
〝友達! 僕友達が出来るの!?〟
僕はスケルトンだから友達が出来るか正直自身は無かった。
だけど友達が出来ると聞いて凄く心が躍った。
「私が一番の友達でしょっ!」
リエラティはぷくーっと頬を膨らませて怒る。
〝もちろんリエラティは凄く大事な友達だよ! でももっと友達が出来るのが嬉しいんだ! どんな人なのかな~〟
どんな友達が出来て楽しく遊ぶんだろうと夢想する。
そんな僕の様子にふふふと微笑むエンネアとアストー。
「またいらっしゃい。ジーナス、リエラティあなたたちならいつでも大歓迎よ」
〝はい! また色々お話聞かせてください!〟
「えぇもちろん」
「クッキー凄く美味しかったわ! また食べに来るわ!」
「たくさん用意しておかないといけないわね。これ持っていくと良いわ」
テーブルに残っているクッキーを数枚包んでリエラティに差し出すエンネア。
自分の体以上あるそれを魔法で浮かせる受け取る。
「それじゃあ行くとしようか」
よっこらせと椅子から立ち上がるアストー。
エンネアは扉の所まで見送りしてくれる。
「アストー、少しだけ良いかしら」
「なんじゃ? 二人は先に外に出て待っててくれ」
〝はい!〟
「は~い」
僕とリエラティは一緒に外を出る。外はもうすっかり暗くなっていて、入り組んだ路地裏ということもあり月明かりも差し込まない暗闇。僕の目はそんな暗闇を見通し、森には居なかった人間の彷徨う魂が見える。
やせ細っいたり体が傷だらけだったりのなにか訳ありそうな魂ばかりだ。
5分もしないうちにアストーもお店の外に出てきた。
「待たせてすまないのう。買い物は明日にして宿に行こう」
「そうね! ところで何を話してたの?」
リエラティは率直に聞く。
「ちょっとした情報交換じゃよ。わしは塔に籠もってばかりじゃから外の世界で暮らしているあやつの方が知っていることもあるのじゃ」
「ふ~ん」
直ぐに興味をなくすリエラティ。
アストーもこの暗闇の中でもよく見えているのかしっかりとした足取りで路地裏を進み大通りに出る。
大通りは酒場の明かりがまばらにあってまだ明るい。
僕達はアストーの知り合いが営んでいるとい宿に向かった。
結構古そうな宿で中に入ると老夫婦が居た。
老夫婦はアストーを見ると一瞬驚いた顔をする。
「久しぶりじゃな。壮健で何よりじゃ」
「アストー様!! まあまあまあまあ!! いつぶりでしょうか!! どうぞ中へ!! お連れ様もご一緒にどうぞ!!」
嬉しそうに奥へと案内してくれる。
老夫婦はたいそう張り切り饗してくれる。
他にお客さんは居ないようで、一番いい部屋を用意してくれた。
アストーと老夫婦は思い出話しに花を咲かせる。
リエラティは用意されたご馳走を美味しそうに食べ、僕はリエラティを少し羨ましく思いながらも思い出話しに耳を傾けた。