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5話 お出かけ


 魔石を集めるためにリエラティと塔を出て森の中を探索中だ。

 死霊魔法の魂魄探知を使い危険な存在には遭遇しないように慎重に進む。


〝あっちに倒せそうなの居るよ〟


「行ってみましょう」


 音を立てないように目星をつけた魂の後を追う。

 十分ほどで姿が見えてきた。あれはバグベアだ。全身が毛むくじゃらで筋骨隆々のゴブリンの亜種だ。


「やれそう?」


 リエラティは僕の耳元でヒソヒソと聞く。

 僕はコクンと頷いてバグベアに手を向けた。


〝呪縛霊鎖〟


 死霊魔法が発動すると霊体出できた見えない鎖がバグベアを縛り付ける。

 まるで金縛りにあったかのように動けなくなっていた。

 さらに霊体の鎖はバグベアの生命力を少しずつ奪う。


「流石ねぇ~! 並の相手なら気付かれずに倒せちゃうわね! さっさと倒して魔石を頂いちゃいましょう!」


〝うん! でもやってみたい事があるんだ〟


「やってみたい事?」


 僕は動けないバグベアの眼の前に立つ。

 バグベアは得体のしれない不可思議な事態とスケルトンである僕を見て恐怖の眼差しを僕に向ける。

 そんなバグベアの胸に手を添える。


〝魂抜き〟


 僕の手から魔力が放たれバグベアの胸に侵食していく。

 そして直接魂を掴む感覚がする。

 僕はその魂を掴むように魔力で包み込み引き抜くように胸から手を離す。

 その瞬間、バグベアは酷く苦しそうに顔を歪ませて大きく痙攣するとぐったりと動かなくなった。

 僕の手に大きなバグベアの魂が握られている。


「それがやりたかった事?」


〝ううん! もうちょっと〟


 手に握られているバグベアの魂に僕の魔力を侵食させようとするが、拒絶されているような感じで全く交わらない。

 塔に居た魂は長い年月を経て自我が無になっていたら容易に魔力が交わったけど、新鮮な魂はそうはいかないと学びを得た。


〝命魂律令〟


 【死叙伝 地獄】に書かれていた強制的に魂を従わせる死霊魔法。

 使用者の力量によって魂に刻める命令の数が変わる。

 今の僕では一つの命令を刻むのかやっとだ。

 僕に従えという命令を刻み込む。

 そして魂を手放すともとの肉体に戻った。

 一度死んだ体は蘇るはずもなく死んだままのアンデッドになる。

 縛り付けていた霊体の鎖を解いても暴れたりする様子はなく、微動だにしない。


「どうなってるの?」


〝僕に従うように魂に命令してみたんだ〟


 飛び跳ねてと命令するぴょんぴょんと飛ぶバグベア。

 他にもいろんな命令をしたけど、僕の死霊魔法がまだ未熟だから至極単純な命令しか従わない。

 やりたい事は終わったから再び魂を取り出して刻んだ命令を取り消して冥界に送る死霊魔法を発動する。


〝冥魂送〟


 バグベアの魂は天へと登り消える。


〝それじゃあ魔石取り出しちゃおう〟


「そうね!」


 アストーから貰ったナイフでバグベアの胸を切り裂き、本来の目的だった魔石を取り出す。


「ねぇ、この死体はどうするの?」


〝どうするってどういう事?〟


「持って帰ったりしないの?」


〝うん。欲しいのは魔石だけだし、僕じゃこんなおっきな死体持って帰れないよ〟


「アンデッドにして連れ帰っちゃえば?」


〝魂はもう冥界に送っちゃったから出来ないよ。魂無くても魔力だけで操れたりするみたいだけど、今の僕の魔力じゃこの大きさの死体を操るのは難しいかなぁ……〟


「そうなのね~!」


〝うん! もっと魔石欲しいから向こうの方行ってみよ!〟


 リエラティと一緒に森の中を歩き回り十数個の魔石が集まった。

 塔の周りは動物や魔物の魂がたくさん彷徨っていたけど人間の魂は一柱も居なかった。

 夢中になって魔石を集めてたら塔の場所が分からなくて凄く焦ったけど、リエラティが場所は分かるということで無事帰ることが出来た。

 直ぐに自分の部屋に戻って集めた魔石を吸収する。


「だいぶ魔力が増えたんじゃない?」


〝うん! でもまだアンデッドを一体操るのがやっとくらいかなぁ〟


「それならもっと魔石を集めないとね! 頑張ろー!」


〝おー!!〟


 右手を上げて元気よく返事をした所でアストーが部屋に入ってきた。


「気合入ってるところ申し訳ないが、明日は二人ともわしと一緒に街に行くのじゃ」


「街に行くの!? やったー!!」


 街に行けると聞いて嬉しそうにはしゃぐリエラティ。


〝……僕も行くの?〟


 街に行くと聞いてリエラティと一緒にはしゃぎたい気持ちは強くあるけど、今の僕には街行っても大丈夫なのか不安のほうが大きい。

 なんてったって僕はスケルトンなんだから。

 人間に不気味がられるに決まっている。


「大丈夫じゃ。心配せずともよい。わしが何とかしてやろう」


 僕の頭を撫でて優しそうにニコッと笑うアストー。


「そうよ! アストーなら何でも解決してくれるんだから! だから明日は一緒に楽しみましょう!」


〝う、うん……〟


 アストーは凄い人だから何とかしてくれると言ってくれて安心できるし、リエラティも一緒に楽しもうと言ってくれて凄く嬉しい。

 それでもやっぱり不安は拭えなかった。

 少し憂鬱な気分で翌朝を迎える。

 アストーは僕の部屋に来る。


「ジーナス、これをおぬしにやろう」


 そう言って虚空から目も鼻も口もないのっぺりとした白い仮面を取り出す。


〝これは?〟


「偽装の仮面じゃ。姿を偽り認識しずらくする魔法がかけられておる。着けてみよ」


 言われた通りにを着けてみる。


「おぉ~!! すごーい!! 可愛い~!!」


 リエラティは僕の顔の前を飛び驚きつつ感心する。


「うむ。問題なさそうじゃな。自分でも見てみるといい」


 そう言って虚空から鏡を取り出すアストー。

 僕は鏡を覗き込む。


〝ッ!!〟


 仮面をしているはずなのに普通の男の子の顔になっている。

 金髪の外跳ねの癖っ毛で目が大きく瞳が赤い。

 髪色とかは違うけど生前、水面を覗き込んで見た僕の顔に似ている気がする。


〝凄い……〟


「どこからどう見ても普通の男の子じゃろう。全身ローブに包み込み、フードを被ればバレることはあるまい。それとこれをやろう」


 虚空から僕の身長位の杖を取り出す。


「これからは街に出ることもあるじゃろうて、出かける時はそれを持っていくと良い。わしの弟子たる証じゃ。よいな?」


〝はいっ!!〟


 色んなものを与えてくれて凄く嬉しい。

 僕は凄い魔法使いの弟子だ。


「わしの弟子になったからにはこれまで以上に魔法の研鑽を積むのじゃぞ」


〝はいっ!! 僕頑張ります!! 師匠!!〟


「うむ。では出発するとしよう」


「お~!!」


〝お~!!〟





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