『私のルームメイトは変わり者の人間』 【なろうラジオ大賞6】
私は妖怪がたくさん暮らしているこの町に、生まれた時から住んでいる。
私は姿を変えることができる妖怪だ。そして、そんな私をみんなは気味悪がった。
ある日、猫の姿で雨に打たれていると、一人の人間がそっと傘を置いてきた。人間はそのまま走り去ってしまう。
カリカリカリ。
私は玄関前で音を立てる。
人間はすぐに出てきた。
「君は…??」
猫の姿になる。
「えっ!!?」
本当は見せたくなかった。
元の姿に戻り、お礼だけ伝えて立ち去ろうとする。
「姿を変えれる妖怪なんて初めて見たよ!…ねぇ、お腹空いてる?」
…変な人間。
カリカリカリ。
その日から人間の家を訪ねるようになった。
一緒にご飯を食べて、一緒にアニメを見て、一緒にゴロゴロして。
毎日行くわけではないけれど、とても居心地が良かった。
カリカリカリ。
「…古くさいかな?」
ある日、人間の家を訪ねるとコタツが置いてあった。その昔、多くの人間を堕落させた魔の道具と聞いたことがある。私は恐る恐るコタツに…。
!!?
「猫って、本当にコタツで丸くなるんだね」
…。
気が抜けた私は、ふと胸の内を吐露してしまう。
「…??確かに驚いたけど、気味が悪いなんて思わないよ。むしろ羨ましい。細い道とか通る時に凄く便利そうだし」
???
本当に変な人間だ。思わず笑うと、人間も一緒になって笑った。
次の日も家を訪ねた。
…ッ!!
風が強くて、冷たい。ふと紙きれが飛んでくのが見えた。
カリカリカリ。
…??
いつもならすぐにドアが開くのに…。
カリカリカリ。
次の日も訪ねた。
きっと、昨日は家にいなかっただけ。今日は大丈夫。
…。
カリカリカリ。
毎日、人間の家を訪ねた。
…。
本当はわかっていた。こんな私を受け入れてくれる人間などどこにもいない。
涙が出てくる。一人は寂しい、一人は嫌だ。
寒い、このドアを開けて。
私は玄関前で泣き続けた。
…???
気がつくと私はベッドの上にいた。
「あっ!起きた!大丈夫!?…ごめん!僕がちゃんと出張のことを伝えてれば…本当にごめん!」
謝り続ける人間。
戸惑った。私が勝手に家を訪ねているだけで、何も悪くないのに…本当に凄く変な人間だ。
…ふと涙がこぼれる。
「…本当にごめんね。もう一人にしないから」
泣き続ける私を人間は優しく抱きしめてくれた。
私が泣き止むと…。
「一緒に暮らそう」
!!
こんな私でもいいのか?
「君と一緒にいたいんだ。だから、よろしく」
私は頷いた。
この日から、変わり者の人間が私のルームメイトになった。
【なろうラジオ大賞6】
読んでくれてありがとうございます。
『変わり者の人間』視点の作品も書いてるので、そちらもぜひ読んでくれると凄く嬉しいです。
…それにしても、千文字以内に収めるのちょー難しー!!