5-㉕ 兎の妹は奮闘する
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
「はぁ〜、はぁ〜、ビックリした・・・」
「が、がう・・・」
突然肉壁から飛び出して来た沢山のウネウネを、ギリギリ蹴り飛ばした僕。
今更ながらここは魔獣の腹の中なのだと、改めて思った。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
「商人さん、ありがとう。事前に教えて貰ってなきゃ噛まれてたかも!」
「がう!」
「ミミちゃんも、ありがとうって言ってるよ」
「お役に立てて何よりです。俺も少し前に馬車が襲われて、飲まれてからずっとアレから逃げていたんです」
どうやら表で大破していた馬車は、彼の物の様だ。
襲われる事自体は回避出来なかったけど、無傷で腹に収まって、寄生虫(?)から逃げおおせ、更に僕達が救助にやってきた。
幸運のオンパレードだ。
「幸運のミサンガ、すげぇ・・・」
アーティファクトの効果に感心しつつ、僕は足元で息絶えている寄生虫に目を向ける。
中型犬程の大きさで、全体は肌色で血管が脈打っており、毛等は生えておらず寸胴。
頭らしき方向は口があり丸い三角形、後部には鞭毛が伸びていた。
「こんな事言いたくないけど・・・アレにしか見えない」
『アレ?』
「がう?」
「君達は知らなくて良いし、一生関わっちゃ駄目だよ〜」
ピアちゃんが居なくてマジで良かったと思う。
卑猥生物でミミちゃんとセレナの目を汚したくないので、僕は寄生虫を隅の方へ思い切り蹴飛ばした。
蹴飛ばす前に寄生虫鑑定をかけたのだが、そこであることが分かった。それは沼竜と寄生虫が共存関係にあるということだ。
寄生虫の鑑定結果は次の様な感じ。
【ピーカードラゴン】
種族:寄生竜
スキル:万物消化、エネルギーリダクション
つまりこういうことだ、寄生竜は万物消化を使って沼竜が飲み込んだあらゆるものを消化、エネルギーリダクションで変換し、沼竜がそれをエナジードレインで吸い取っているのだ。
一見寄生竜が損をしている様に見えるが、寄生竜は非常に弱い。本来なら自分で餌を取るのも難しいが、ここに居ればいくらでもご飯がやってくる。
そして沼竜は寄生竜がいなければ生きていけない、居ないと巨体が維持できないだろう。
何がどうすれば竜の腹の中で竜が生きるという現象が起きるのか不明だが、魔獣は魔物と違い生物だ。きっと進化の過程で最適化を行っていった結果なのだろう。
「まぁ知ったからといって何かが変わる訳じゃないけど、こういうのってロマンがあるよね!」
「分かりますっ! いやぁ、女神様とは旨い酒が飲めそうですっ!」
「がぅ?」
『よく、分からない』
残念ながら、商人さんからしか同意が得られなかった。ママ寂しい。
さて、色々トリビアも得たところでそろそろ行動しなければならない。僕がやるべき事はたった1つ、商人さんを守りながら皆で脱出だ。
「そういえばピアちゃん抜きでミミちゃんと居るのって、小デブ貴族の時以来だね! 一緒に頑張ろうねっ!」
「がぅがぅ♪」
『セレナ、がんばる』
「セレナも宜しく!」
◇
ユウ達が沼竜の中で奮闘していた頃、外ではユウが食われたことを知り大騒ぎになっていた。
「ユウが食われたぁっっっ!?!?!?」
「め、面目ねぇ・・・」
ガルドに責任は全く無いのだが、彼は非常に申し訳なさそうにアルバート達に報告する。
現在沼竜の姿は見えない。だがピア曰く、姉との繋がりが離れていないので沼竜は移動していないとのこと。
「姫ぇえええええぇぇっっっ!?!?!? にゃーーーーーーっっっ!!!!!!」
「お姫様ぁぁあああああぁっ!! 今、拙者が参りまするぅぅぅうううぅぅっっっ!!!!!!」
「どこだぁあっっ!?!?!? 姫さんごと内臓全部吐き出すまで殴りまくってやるっっっ!!!!!!」
「姫様っ、姫様っ、hめsmaaaaa!!!!!!」
一応ユウが無事であること周知しているのだが、その程度で止まらないのがアニマル’s。
泣き出し、狼狽え、牙を剥いたりと、動物なのに非常に表情豊かに騒いでいる。
その傍では、今にも自害しそうな表情で佇むアンサスも居た。
ぺちっぺちっ!
下手クソな手を打つ音がする、皆は狼狽えつつも音のした方──ピアに注目した。
「みんなしっかりするの! さっきも言ったけど、おねーちゃんは無事なの。というか、何でか凄く元気なの。意味が分からないのっ! とりあえずピア達がしなきゃいけないのはケガしないようにする事と、おねーちゃんが出てきやすいようにお手伝いする事なの」
大好きな姉を竜に食われ、本当ならば泣きたいであろう、叫びたいであろう。
しかし少女は気丈にも、皆の為ここに居ない姉の役割を代わりに果たそうとしている──様に見えた。
「まずジー君のパパはアンサス君を連れて馬車を守るのっ! 森からゴブリンとかの声が聞こえるの、他にも音が聞こえるから気を付けるの。他みんなは竜退治なの、おねーちゃんは放っといても出てくると思うの」
「放っといても出てくるって・・・ピアちゃん、流石にユウちゃんが可哀想じゃないかなーって、お姉さん思うんだー・・・」
しかし実際のところピアは全くユウの心配などしておらず、また一年も共に過ごしていれば流石のピアも少し姉と離れた程度では狼狽えなくなっていた。だが勝手な判断をしたことはまた別の問題であり、自分だけを助けた事に少し機嫌が悪そうだ。
しかしそれはそれとテキパキ指示を出すピアの姿を見て、また指示の内容に問題は無いと判断し各自行動に移す。
そんな中アンサスだけは、異議ありとピアに役割変更を願い出ていた。
「あ、あの、ピアお嬢様・・・私も何か・・・」
「アンサス君はまだガルドおじさんと一緒に戦えないの、あと騎士さん達は魔物と戦い慣れてないからアッチで皆に協力してあげて欲しいの!」
「お、おじさん・・・俺ぁまだ30代なんだが・・・」
アンサスは確かに並みより強い、だが戦い始めてまだ一週間であり他と足並み揃えるには役不足であった。
ピアの言葉に悔しさを滲ませるアンサス。しかしピアの言葉に間違いは無く、下手をすると足を引っ張り命の危険がある。
アンサスとて他者の命と我儘を天秤にかけるようなことはしない、粛々と指示に従うのであった。
「・・・私はまた、守れないのか・・・・・・」
足取り重く馬車へ移動するアンサスは、ユウに誰かを重ね後悔を滲ませるのだった。
「さて、ピアの嬢ちゃん。一応指示には従ったが何か良い案があんのか?」
「分かんないの! さっき念話のミサンガを使ったらおねーちゃんに繋がり難かったの、たぶん竜さんのお腹の中は別空間か何かになってるの」
「ってこったぁ、殴って吐かせるのは無理か」
違う空間であるならば、外部からの衝撃が影響を与える事は無いだろうとガルドは結論付ける。
「そうなの、しかも空間が壊れた時何が起こるか分からないの! だからおねーちゃんが出てくるまで、竜さんを大人しくさせないと駄目なの」
「あのデカブツを大人しくねぇ・・・」
「エサでも与えてみるとか? お姉さん今回役に立たなさそうだから、出来る事があるなら言ってね」
地面からの奇襲に気をつけながら、ユウ救出チームは意見を出し合う。
鎖で繋げる、毒を盛る、思い切り殴る等様々出たが、実はピアには一つ秘策があった。
それは今日に至るまで、大好きな姉から授けられた沢山の知識の中の一つであり、龍にも効果があるのでは? と前にユウが言っていた事であった。
「今回はアトス、それとマルクス君に頑張って貰うの!」
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