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異世界編み師の布教活動  作者: 草食丸
第五章 王都への道は一日にして成らず
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5‐④ 兎はお客様アンケートの大切さを知る

作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!

どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m

 カテーニョ(仮)は衣類だけでなくちょっとした雑貨類も売っている店で、僕達の服だけでなくミミちゃんのアクセサリーも購入することが出来た。


 ベルトの部分で揺れるキーホルダー、兎のデザインを選んだところが彼女の可愛い所である。

 恐らくちょっとでも僕達と一緒になりたいのだろう。僕はミミちゃんの頭らしい部分を優しく撫でてあげた。


 カテーニョ(仮)は店舗が崩れた時に商品も結構な量が埋まってしまったらしく、在庫として別室に保管していた物だけを売っていた。それでもまぁ結構な量なのだが。

 流石にその状態でピアちゃんと同じデザインの服を探すのは難しく、以前買った服と似たようなデザインを購入して疑似姉妹コーデとした。

 王都に本店があるとのことだったので、姉妹コーデの服はその時に改めて探すとしよう。


 ちなみに残っていた在庫が、下着八割・服二割だったのは・・・偶然だと信じたい。

 下着もいっぱい買わせていただきました(ピアちゃんチョイス)。


 服をミミちゃんの中に仕舞い込み屋台通りを散策。肉串を食べ歩きしていると、それはそれは沢山の人に声を掛けられる。


「嬢ちゃん、街を守ってくれてありがとうなっ!」

「でっかい鬼を倒してくれてありがとうっ! ウサギさん強いねっ!」

「兎のお嬢さん、ワシ等を守ってくれてありがとうな。これはオゴリだ、持ってておくれ!」


 街の人は僕がスクナと戦っていたことを知っているらしい、たぶんアルバートさんが皆に伝えたんだろう。

 まぁ最初は多少恐る恐るではあったが、少し話している内にいつも通りになった。

 この街の人達メンタル強すぎ。


 子供を助けるための行動が結果的にみんなを守ることに繋がった。お礼を言って貰えるのはすごく嬉しい。

 そして話題は当然僕達の正体についても触れられる。


「お嬢さん達は神様だったんだってね、私達今まで失礼じゃなかったかい?」

「全然そんな事無いですよ、むしろ今まで通り気軽に接して下さい。妹達もそんな皆さんの事を気に入っていますので!」

「ふふふ、そうかい? じゃあそうさせて貰おうかねぇ。それにしてもこんな小さくて可愛い子も神様だなんてねぇ、こんな神様ならいくら居てくれても良いねぇ!」

「自慢の妹達ですっ!!」


 街の皆の言葉が嬉しくて、僕はピアちゃん達を抱き締めていっぱい頬擦りする。

 そんな僕の様子を見てみんなが笑うのだった。


「ウサギの姉ちゃん達は何の神様なの?」

「ピア達は糸の神様なの!」

「ピアちゃんは平和と愛を司る糸の神なんです」

「あっ、だから布のお店やってるの?」


 むむっ、やはり編み物の知名度は高くないか。作り方を知らないと布とかに見えるらしい、以前に比べると知ってくれている人はかなり増えたが、それでも少ない。


(何か良い方法がないもんかなぁ・・・)


 何においても、物事を浸透させるというのは中々難しいのである。

 僕が頭を捻っていると、ある質問をされた。


「ところで嬢ちゃん、あの店はもっと俺たち向けのもんは売らないのか?」


 そう声を掛けてきてくれたのは、頭にタオルを巻いたタンクトップのムキムキ男子というかオッチャン。


「嬢ちゃんへのお礼と御利益を兼ねて、店で何か買いてぇんだが、俺が使えそうな(もん)が無くてなぁ・・・」

「確かに。デートに行くときゃ良いんだが、依頼中は付らんねぇ。常に付けてられる物の方が嬉しいな」


 その後も近くの男性陣から似たような要望が上がり、僕はそれを聞けば聞くほど「なる程な」と納得した。


 詰まる所、これは僕達が「特別な日に使う物」しか想定していなかった事がいけなかった。

 僕らの想定と使う側の要求がマッチしていなかったのだ、お客様アンケートの重要性を思い知った。


「分かりました、任せて下さいっ! 男性が普段使い出来る、いい感じのを急ぎ準備しますねっ!」

「ホントかいっ? それはありがたい!」

「絶対に買いにいくからなっ!」


 それから僕は屋台通りを後にし、急いで宿に戻って新商品の編み図作成に着手した。


 ◇


「マルセナさん、王都出発前に編み物のラインナップって増やせますか?」

「簡単なものなら増やせると思うけど、何かするのぉ?」


 僕は街で聞いた話を伝えた。

 年齢性別を問わない商品だとしても、相手も同じことを思ってくれているとは限らない。なので、万人向けの商品の他ターゲットを絞った商品が必要なのだ。


「というわけで、主婦と大人の男性に向けた商品を作る必要があると思うんです」

「なるほどねぇ、実際に聞いてみないと分からない事ってあるのねぇ。男性の客も来ているって聞いていたから問題ないと思っていたわぁ」


 お店のラインナップは、編みアクセサリーと編みぐるみをメインに販売している。

 女性向けにと編みミトンや編みたわしも売っていたが、家事以外にも家族に向けたアプローチも必要だと考えた。だって、お母さんは家族の事をいつも考えてるからね!


 そしてアクセサリーもブローチやイヤリング、イヤーカフを男性向けのデザインで売っている。だがシルクマリアの男性は、土木作業や冒険者といった普段肉体労働に従事している人が大半だ。

 もっと使って貰おうと考えるならば、普段使いし易いワンポイントや縁起を担いだものにした方が正解だったのだ。


「冒険者が縁起を担いだものを好むなんて考えもしなかった、ガルドさん達にも聞くべきでしたね」

「まぁ冒険者じゃない人にはピンとこないわよねぇ・・・あれ? ユウちゃん、冒険者じゃなかった?」


 真面目に冒険者やってませんから知りません!


 土木作業員は事故に、冒険者は戦いにと常に危険と隣り合わせなのだ。特に土木作業は地球の工事現場を想像してはいけない、空いた穴を埋めるのに人が中に入って作業とか平気でやるのだ。

 日本なら労基が殴りこみに来るレベルである。


 そういった仕事の背景がある為、健康成就のお守りというか神の護符みたいなものを持っている人はかなり多いらしい。

 ならば今の神様ブームに乗ろう! そして更に欲を言うならば、丈夫で邪魔にならず汚れても気にならないようなものが良い。

 ちなみにゴンズは最近まで持っていなかったが、結婚して奥さんから持たされるようになったらしい。

 ふーん、仲が良い事で。爆発すればいいのに!


 そんなワケで、僕が考えているのは、渋い色合いの「根付」。まず邪魔にならないだろうし、男性が付けていても変じゃない。

 武器に飾りをつけている人は多いから相性も良いだろう。先っぽに、少し恥ずかしいが僕達を模したデザインのチャーム(木彫りの兎っぽいやつ)を付ければ、ほら兎の神様がいつでも一緒!


 そしてもう一つは、根付以上に日本人に馴染みのある「お守り」。

 こちらは小さな巾着風にして首や腰に下げられるようにする、そして中にミスリルの兎さんを入れておく。

 リアムテラにおいて、ミスリルは神様の力が宿っていると信じられている。その為護身用にミスリルのナイフを持っている人が多いらしい。


 ちなみに普通のお守り風にしない理由は、編んで作ると不格好だからだ。こればかりはどうしようもない。


 以上二点を様々なカラーバリエーションで販売する。

 そしてついでに、その色のデザインをした子のメッセージを添えておくのだ。何故その色にしたのか、使っている人にどうなって欲しいのか。そうすれば自分の望みに沿ったデザインを買っていくだろう。


 僕のプレゼンを聞いたマルセナさんは息を荒くして、「絶対いけるわっ、流石ユウちゃんっ!」と大興奮だった。

 数日後実験的に、とは言っても大量に店舗に並べたところ、凄まじい反響で生産が追い付かないほど売れた。やはり「本物の神様が作ったお守り」というパワーワードが効いたのだろう。


 僕としては街の皆を不幸から守るための物なので、できればタダでも良いから配ってあげたい。

 でもそれをすると一生生産が追い付かなくなってしまうので、泣く泣く少しお高めに売らざるを得なかった。

 もっと皆を守る方法があったら良いのに・・・。せめてもの気持ちをと思い、売っている根付とお守りに祝福を掛けた。全ての人に幸あれ!


 後日、僕は力を使いすぎて体調を崩したのは笑い話。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後まで読んで下さり、ありがとう御座いました!

また次の更新も宜しくお願い致しますm(_ _)m


☆隔日 7∶00頃更新です☆

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