【Side Story④】アニマルデイズ
作品に興味を持って下さり、ありがとう御座います!
どうぞ最後までお楽しみ下さいm(_ _)m
我が家の四兄弟、アニマル’sは非常に仲良しである。
そして自分で言うのも何だが、あいつ等は僕のことがむっちゃ好きである。いやホント、マジでいつもくっ付いてくる。
じゃあいつも4匹一緒に居るのかと言えば、意外とそうでもない。必ず1匹は僕に着いているが、わりと各々好きな事をやっている。
今日はそんな4匹のシルクマリアでの日常を観察してみたいと思う。
◇
長男のアトスは冷静沈着で物知り。
よく皆のストッパーに回ったり、ヘルプに入ったりとすごく頼りになる。流石お兄ちゃんだ!
見た目は茶毛の柴犬、本物よりは少しモフ感強め。
まん丸お目々だがキリッとしていてハンサムなんだけど、やっぱり柴犬。可愛いが強めだ。
そして語尾が何故か『御座る』。
丸みのある銀色の軽鎧に深紫色のローブを纏っていて、杖剣という変わった武器を使っている。
これは魔法杖にもなる細身の長剣で、アトスは魔法をメインに戦うが剣もそれなりに強いので、これを使っているらしい。
そんな彼のクラスは《魔導騎士》。
単一魔法、範囲魔法、幻覚魔法、拘束魔法などありとあらゆる魔法を駆使して戦場を支配する存在だ。
朝ご飯を食べたらアトスは4匹の中で一番最初に僕から離れて行動する、やはり僕以外にも彼を頼る人が多いのか引っ張りだこで結構忙しいのだ。
兄弟を信頼しているからこそ僕から離れるんだろうけど、その時はいつも尻尾に元気がないのを僕は知ってる。
僕って愛されてるなぁ。
彼が最初に向かうのは、大抵魔術ギルドか冒険者ギルドだ。
場所は違えど目的は同じ、新人指導だ。
「魔法を強くするには、幾つか手段が御座る。魔力を高める、効率を良くする、詠唱を短縮する、原理を理解する、などに御座る」
「なるほど、漠然と考えては駄目なのですね」
「確かに優先順位を付けたほうが効率的だ」
「それぞれ利点が異なるからして、己に合った方法。もしくは目的に合った方法から取捨選択するので御座る。一番愚かなのは何も考えずに鍛錬すること。肝に命ずるので御座る」
「「はいっ、先生!」」
今日は魔術ギルドらしいので、こそっと覗いてみる。
ギルドでは僕と同じ様な年頃の、恐らく魔法職だろう子供達がアトスの講習を受けていた。
シルクマリアでは冒険者の教育に力を入れていて、力だけでなくある程度の学力と人望がないとランクアップ出来ない仕組みになっている。
このアトスの授業はそういったものの一貫らしい。
アトスの授業は分かり易く、また親身になって教えてくれるので大人気だ。こういう面倒見の良いところも、お兄ちゃんらしさなんだろう。
そんな彼の授業は確実に成果を出している為、ギルド職員達からの印象も良い。
「本日も講義ありがとう御座いました。いやはや、毎回非常に分かり易くて我々職員もとても勉強になっております」
「うむ、それは僥倖。お姫様も喜ばれる」
「しかし、ユウ様の警護も御座いますでしょう? これ程頻繁に来て戴いて大丈夫なのですか?」
恐縮して尋ねる職員に、アトスは誇らしげに胸を張って答えている。
「拙者には頼りになる兄弟が居る故問題無い。それにお姫様も皆の無事を願っておられる故、快く送り出して下さっている」
「それは良かった、ユウ様にはお礼のしようもありません」
「その気持ちだけで、お姫様は満足されている。気にする必要はないので御座る」
彼は何時何時も僕の宣伝を忘れない。でも僕はそんな立派な事は考えて無いから、ヨイショされると恥ずかしい。
正直彼が進んでやっている事なので、僕のことは気にしなくて良いと伝えてあるのだが・・・すごく嬉しそうだし、彼なりに僕の役に立ちたいと思ってのことなので、ありがたく感謝を受け止めている。
その後ギルドを去った後、スクナ戦で被害を受けた地域を回って修復や瓦礫撤去の補助等して夕刻に帰ってくる。
4匹の中で一番僕と居る時間が少ない子なので、帰ってきた時は心ゆくまでもふもふして労ってあげている。
その時のアトスは本当に幸せそうで、ピアちゃんも譲ってあげているほどだ。
お兄ちゃんは大変だろう、だからお姉ちゃんである僕だけはそんな彼をいっぱい甘やかしてあげるのだ。
次は次男坊はポルトスを覗いてみる。
4匹の中で唯一粗暴な話し方をする子で、ただ庶民の感性があるので僕と一番感覚が近い子である。
そんな彼のクラスは《守護騎士》、身の丈もある大盾を持ち、巧みな盾術と豪腕を駆使して戦うアライグマだ。
まぁ身の丈の盾と言っても、彼の身長が120cm程なので人間からしたら少し大きい盾程度なのだが、その真価はスキルを使った時に現れる。
ポルトスの盾は『概念金属』という物質で出来ているらしく、使用者のイメージを反映する金属らしい。
通常、《ラージ・シールド》は盾の周りに魔力盾が発生するスキルなのだが、ポルトスがその盾を持ち使用すると、なんと盾が巨大化する。それも、建物を覆い隠しほどにまで巨大化するのだからビックリ金属だ。
他にも防御に特化した様々なスキルを使って、いつも誰よりも前に立ってくれている、すごく勇気のある子なのだ。
ちなみにこの世界にアライグマはいないらしく、いつもタヌキと間違えられる。
彼は護衛騎士ということもあり、滅多に僕から離れない。だがその怪力を頼りにしている人達も多く、お昼過ぎには専らアトスと復興作業をしている。
他3匹に比べ話し方が気安いからだろう、平民の人達と一番仲が良いのもポルトスで、よく色々貰って帰って来るし一緒にご飯を食べたりもしているらしい。
時間は夕刻、今日も作業終わりに沢山の人に声を掛けられている。
労働者レストランに行くらしいので、僕もこそっとついていく。
「ポルトス、今日もありがとな!」
「ホント、おめえが居ると助かるぜ! そのちっせぇ体でよくあんな大岩を持ち上げられるもんだ」
「本当にねぇ、あたしゃアンタが怪我しないか心配で仕方ないよぉっ」
「ははははっ、俺がンな事で怪我なんかすっかよ! 皆の家を早く直さねぇといけねぇからな、また姫さんの護衛の合間に手伝いに来るぜ!」
作業終わりに一杯奢ってもらってるみたいだ、笑いながら肩を叩きあってる。
ホント仲良さそうで、見ている僕も嬉しくなってくる。
「アンタみたいな頼りになる子が近くに居てくれて、女神様もさぞかしお喜びだろう?」
「かあちゃん、あったりめぇだろ! ポルトスほどすげぇ奴ぁほかにいねぇって!」
お酒を片手にポルトスを褒めてくれるおじさん。
ポルトスはそれに対して嬉しそうに、でもちょっと悔しそうに答える。
「そうでもねぇよ? アトスは頭良いし魔法も上手ぇ、アラミスは傷治せる上に飛べるし、ダンタルニャンは素早くて強ぇ。俺ぁ盾振り回すか暴れるしか出来ねぇからなぁ。もっと姫さんの為に頑張んねぇと!」
そう言うポルトスに、周りのおじさん、おばさんは彼の背中をバシンッと叩く。
「なぁーに言ってんだ! お前さんと居る時の嬢ちゃん、すげぇ楽しそうじゃねーか!」
「そうだよぉ、女神様と一緒にイタズラしに来るのなんてアンタだけだろ? あの時の女神様は、こう自然体であたしゃ好きだよ」
「まさか女神がつまみ食いしに来るなんて予想もしなかったけどな! がははははっ!」
「お前のお姫様は、お前が居て幸せだと思うぞ!」
「そっか、そうかもな!」
・・・つまみ食い、バレてたのか。
しかし、おっちゃん達はよく分かってんじゃん。
僕と悪さして回ってくれるのなんて、ポルトスしか居ない。僕にとって彼は、家族で友達なのだ。
嬉しそうに笑う彼を見届けて、僕は宿に帰る。
そして戻ってきた彼が今日あったことを楽しそうに報告してくれるのを、僕は一緒に笑って聞いてあげるのだ。
続いて、三男アラミス。
彼は治癒魔法、支援魔法、聖魔法のスペシャリストであり、《聖騎士》のクラスを持つ神鳥様だ。
モデルがシマエナガで、しかも若干デフォルメが入っているので全体的にずんぐりむっくりモッフリしている。
大きさは80cm程、いつも羽を畳んで首を竦めているので巨大な雪玉、大福、白い毛玉にしか見えない。
しかしそんな見た目に反して、素早く、強い。
部位欠損すら治す治癒能力に、建物一つをカバーする効果範囲、そしてアンデットや死霊に対して圧倒的な戦闘力を誇る。
彼は飛行する都合上最低限の防具しか着けられず胸当てと脚甲のみだが、折り畳み式の十字槍を持っており、足で巧みに操る。
それでガルドさんと対等に切り合うのだから大したものだ。
そんな彼はアトスの次に忙しい。
朝ご飯を食べて少しした頃から治療院へ行って、患者を見て回っているのだ。
シルクマリア周辺は魔物が強く、怪我人が絶えない。その上、先日のスクナ戦による怪我人もかなり多かったらしく、未だ治療院は大忙しだ。
アラミスは今日もそんな治療院へ手助けに行くらしいので、こそっと覗いてみることにした。
シルクマリアには東西南北に治療院があるので、そこを日毎に回っている。
ここの治療院は今日初めてだったらしく、到着してすぐトリアージを始めているようだ。
「神鳥様、こちらの患者ですが・・・」
「派手に出血しているが、血管や神経に問題はない。そちらで治療を頼む」
「新人ですが支援に参りました!」
「治癒に慣れておらぬ者は、《クリーン》と《ピュリフィケイション》を使い衛生度を保て。それも立派な医療行為だ」
「あちらの患者さん治療は終わっているのですが、調子が悪いと言っていて・・・診断して頂けませんか?」
「タダ飯が食いたいだけだ、追い出せ」
重症患者を診つつ、あちらこちらから飛ぶ質問や相談に対応していく。
あの子は聖徳太子か何かかな?
実のところ、アラミスにかかれば患者全員を一気に治療する事ができる。だがそれでは後進が育たず、かえって医療スタッフの実力が下がってしまうので、アラミスは重症患者以外全て他の人に任せているらしい。
色々考えてるんだなぁ、と僕は感心する。
そんな彼も体力気力が無尽蔵というわけではなく、夕刻を少し過ぎた頃にヘロヘロと飛びながら帰ってくる。そして僕はそれを抱き留めて迎え入れるのだ。
アラミスは胸の中で目を閉じ少しじっとした後、飛び上がって定位置である僕の頭の上に留まると、無言のまま動かなくなる。
「疲れてるでしょ、ご飯まで抱っこしてあげるよ?」
「い、いえ。お見苦しいところを、お見せしました・・・」
実は彼は甘えるのが下手なのだ。よく見ると、もちもちホッペが少し赤い。
それを知っている僕は、もう一度頭から胸に抱き直して羽を撫でてあげる。アラミスはそれを少し恥ずかしそうにしながらも、目を閉じて受入れてくれるのだった。
最後に四男のダンタルニャンだが、実は彼について観察できるような事がない。
何故なら、彼は他の兄弟とは違い、僕から全く離れないからだ。
夜に少し離れる時はあるが、その時以外常に側にいる。
というのも、それは彼の職業が《近衛騎士》だからだ。
近衛騎士は文字通り主を側で守るのが仕事、主とは僕とピアちゃんのことである。だからベットの上でピアちゃんと戯れて遊んでいるように見えるが、しっかり仕事をしている最中なのだろう・・・たぶん。
「ダルニャン、わしわしわしわし〜なの!」
「にゃはははははははっ! 止めてほしいのでありますっ、息がっ、息がっ!」
兄弟の中で決して1匹だけ遊んでるなんて事は、ない・・・はず。
アニマル’sは僕とピアちゃんを凄く大切にしてくれる。
だがそんな彼等が僕達を置いて外出するのに幾つか理由がある。
まず兎装備の僕達の察知能力がアニマル’sよりも高いこと、そして僕達がそこそこ戦えること。
次に常にミミちゃんが居ること、初見でミミちゃんに気付ける者はそう居ないからだ。
そして最大の理由が──ダンタルニャンが強い事だ。
今は着込んでいないが、普段は肉球マークの付いた丸い軽鎧に大剣とバックラーを装備した。白銀の猫騎士である。
そんなダンタルニャンはアトスと同じく身長は100cm程度で、獣人の子供よりも小柄。正直強そうには見えない。
確かに、防御力、魔法、支援等の能力に注目すると他の兄弟の方が抜きん出ている。だがダンタルニャンは総合力でダントツに高い。
Aランクの魔物を斬り伏せる剣技に加え、猫騎士剣術によって繰り出される多彩な技。
使える種類は少ないが、一流の攻撃魔法。
単騎相手ならば、見上げる様な相手の攻撃を捌き切る高い防御力。
戦闘を継続しつつ、同時に展開される支援魔法や治癒魔法。
ダンタルニャン一匹居れば、何があっても即座に対応出来るのだ。その信頼があるから、兄弟達は安心して街の支援に繰り出すことが出来る。
本当に普段の姿からは、強さが全く想像出来ない。
可愛くて、もふもふで、強い、無敵の猫騎士さんなのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・死ぬかと、思ったのであり・・・ます・・・」
うん、本当に想像出来ないな。この猫、だらけ過ぎじゃね?
だがまぁ、この子が居て僕も助かっている。
僕だって1日中妹達とイチャイチャして遊んでいるわけじゃない。結構な時間編み物してるし、孤児院に領主邸に貧民街にと移動して仕事している事が多いので、妹達の相手をしてあげられないことが多いのだ。
みんなまだ子供なので、作業時間等の時間は暇になってしまう。その時、護衛兼遊び相手になってくれている。
正直、羨ましい。
僕もイチャイチャしたい、ぐぬぬぬぬ。
夜になり僕がご飯の準備をする間、兄弟は全員揃うとベットの上で1日の報告と情報交換といったミニ会議を行う。
動物の集会にしか見えないのは僕だけだろうか?
「ギルドに探りを入れたが、不埒者の姿や情報は得られなかったので御座る」
「街の皆も、態度が急変したような奴は居ねぇつってたぞ」
「治療院にもその様な気配は無かった、一旦街からは退けたと見るべきだな」
「姫の周囲にも不穏な気配は無かったのであります! しかし、姫に不埒な視線を向ける男共が数人居たのであります」
「「「よし、殺そう!」」」
「既に天誅は下したのであります」
「「「よくやった!」」」
何の話をしてるんだろう・・・ってか不埒って、僕は男だよ? そりゃピアちゃんの顔だから可愛いかもしれないけど性格は女っぽくないし、こんな男女に興味持つ特異な人なんて居ないだろうに・・・過保護だなぁ。
「おねーちゃんは、自分のこと全然分かってないの。みんな、エッチな目を向けてくる人は遠慮せずやっちゃっていいの!」
「「「「御意に」」」」
「ちなみに不埒な視線を向ける者の中に、クレア殿が居たのでありますが・・・」
「・・・そこは、見逃してあげるの」
ほんと何の話をしてるんだか。
僕はみんなが真剣な顔でお馬鹿な話をしている様子に苦笑いしながら、ご飯を机に並べていく。
「ほら、みんなご飯だよー。席に座って!」
「やったーっ、ご飯でありますー!」
「よっしゃっ、今日は何だ! 腹減ったぜぇ!」
「手伝いもせず、面目ないので御座る」
「姫様、申し訳御座いません。戴きます」
元気いっぱい食卓に集まってくる弟達。
うん、うちの子は今日も可愛いです!
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