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9話 幼馴染2人は冒険者ギルドに登録する

 暫くして先程使いに出ていた部下が荷物を抱えた20代後半の男性を伴って帰ってきた。

 彼はキャロメルの冒険者ギルドでサブマスターを務めるタクワと名乗った。

 黄色の髪に黄色の瞳、名前がタクワと来たら2人の脳裏に前世で好んで食べていた漬物が思い出されて込み上げる笑いを懸命に堪える。


 「そいつが嬢ちゃんと契約してぇって魔獣か?見たことねぇ色のスライムだな」

 『オイラ、レアなんッスよ!』

 「自称レアだそうです」

 『自称じゃないッス!嘘じゃないッスよ!』

 

 バタバタと動いているスライムの行動にタクワは眼を見張る。


 「本当にもう意思疎通できてんのか」

 「はい。ガナッシュで買ったこの飴をあげたら話せるようになりました」

 「随分と気に入られたんだな」


 机に置いてあった小瓶を前に出すとタクワが小さく唸る。

 その飴は特別な効能もなければキャベッシュ王国の北部ポルコネを首都とするレイシ地方であれば子供のお小遣い程度でどこでも買えるものだ。

 本来低級の魔獣は契約してからでなければ意思の疎通はできないし、中には契約しても片言でしか話せないものも多い。

 魔獣の中でも最弱と言われるスライムなんて最たる例だ。

 そのスライムが契約アイテムを貰ったというだけで完璧に意思の疎通をしているというのだからレアだというのも嘘ではないとタクワと憲兵は理解していた。

 この場で魔獣についての知識が乏しいのはマシュとトリーの2人だけ。

 特にトリーは薬草などの知識はそれなりにあるが、魔獣に関していうならマシュよりも少ない。

 とは言ってもマシュが詳しいのもポター村の近郊に出現する魔獣のみで、それも正しい捌き方や素材の種類といったものばかりだが。


 手に持っていた荷物を机にセットしながらタクワが契約について説明しようとしたところでマシュがふと疑問を投げかける。


 「あの、従魔士ってそもそもどうやってなるんですか?」

 「……そこからか」

 「なんか、すみません」

 「いや、いい。憲兵さんらは仕事に戻った方がいいんじゃねぇか?長くなるぜ」

 「そうだな……1人だけ残していく」

 

 憲兵たちが退室するのを待ってから改めてタクワが口を開く。

 

 「じゃあ、従魔士について……そっちの嬢ちゃんは杖からして白魔法士か?もし必要ならまとめて説明するぜ?」

 「はい、お願いします」

 「まず従魔士になるには冒険者ギルドで冒険者登録をしなきゃならねぇ。それは自分で魔獣を捕獲しに行く必要があるからだ。今回みたく魔獣が自分から寄ってくるなんてケースは滅多にねえ」

 「なるほど」

 「んで、従魔士と白魔法士だけは特例措置ってのがあってな。本来冒険者ってのは最初の1年でひとつはランクをあげなきゃならねぇんだが、従魔士と白魔法士は冒険者以外の仕事に就くケースも多い。例えば従魔士は護衛や騎士が乗る騎獣の調教師だったり、馭者なんてのもそうだな。白魔法士の場合は薬師や治療師、中には料理人になるやつもいたな。そういった奴らは書類を出せば特例として冒険者ギルドからの除籍を免れるんだ」

 「料理……」

 「魔法士は冒険者ギルドに登録する以外にもなり方はあるな。回復に特化した白魔法士なら教会に入信したり、魔法研究学院に入学すれば魔法師の称号は得られるが……あの2つは将来の選択肢がねえ。上からの命令で全てが決まるし、かかる金が尋常じゃねえな。お貴族様の坊っちゃん嬢ちゃんが入るところだ」

 「おぉ……」

 「全然入りたいと思わないねぇ……」

 「そんでもって冒険者ギルドへの登録ってのはこの魔法具を使ってやる」


 コンっと音を立てて置かれた魔法具は水晶玉に台座がついたものだ。


 「これの上に手を置いて個体登録をするんだ。個人レベルだったり、現在の魔力量、スキルや契約魔獣、他にも詳細なステータスを冒険者カードに登録するのに使う。白魔法士の嬢ちゃんも登録してえってんならあとでギルドに来な」

 「冒険者カードって検問所で身分証として提示するやつですよね?」

 「そうだ。カードはギルドに来てもらった時に渡すが特殊な魔法がかかっていて個人情報を全部見られるようになる。親が冒険者ギルドか商業ギルドに登録してたら親の名前まで載るぜ。生きていればの話だが」

 「……親、ね」

 「まあ、個人情報がほぼ全部載るから紛失したときはすぐに最寄りのギルドに行って再発行してもらえ。そうしたら前のカードはただの板になる」

 「わかりました」

 「町や村に着いたらまずはギルドに寄って更新することをオススメするぜ。身体のサイズも登録されるんだが、身体のサイズの変更と冒険者ランクは自動更新されねぇんだ。防具屋で提示すりゃサイズを測る時間が短縮されるし、都市によっちゃ冒険者割引なんかもある。キャロメルだと宿屋がそうだ」

 「はぇ〜めっちゃ便利〜あって損は無い感じですね」

 「まぁ、発行に金はかかんねぇが1年置きに更新する時には金がかかる場合もある。1年間冒険者ランクが上がってない時や特例を受けてる奴らはランクが変わらない代わりに金を払って更新してんだ」

 「なるほど」

 「最低ランクのFからCまでは期間内にひとつでもランクが上がっていれば無料で更新可能だが、Bより上は更新時に金がかかる。上に行けば行くほど高くなるが、そもそもそのランクに行ける奴なら問題なく払える額だ」

 「Cまで上げたらランク上げ辞めるのも選択のひとつってことですかね?」

 「そうとも限らねぇぞ。場所によってはだが、ランクが高ければ高いほど割引率が高くなる店もある。ポルコネの防具屋はBランク以上だとだいぶ安くなるはずだ」

 「はー、本気で冒険者として成り上がりたいなら絶対あげた方が得多いやつですね」

 「飲み込みがはえぇのは助かるな。んじゃ、次は魔獣契約の説明といこうか」

 「はい!お願いします!」


 抱えていたスライムが待ってましたと言わんばかりに机に飛び移り置かれた水色の輝く石の隣に移動した。

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