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38話 幼馴染2人は自分の武器を学ぶ1

 食後、テントの中で寛いでいたトリーは魔獣図鑑を眺めていた。

 レオスニードの魔獣種族名がキマイラということを知ったついでに他の従魔のことも調べてみようとページを捲っていると隣で大の字になっていたマシュが独り言のように呟いた。


「私らさぁ……あんな風に戦えるのかね。実際ヤバくない?」

「それは、確かにそう。経験の差があるとはいえ全く何の役にも立ってなかったよね」

「色々学びたいとは思うんだけど、わからないことがありすぎて何を聞いたらいいのかもわからないのが実状というか……」

「私、補助魔法についてメロンさんに聞いてみようかな!」

「あー、それはいいかもね」

「じゃあ……マシュも一緒に行く?一人で行くの気不味いんだけど……どう?」


 トリーの語尾が弱々しくなっているところを思うと一人で行くのは不安ということだろうとマシュも同意してテントを出ると、焚き火の前に座り譜面を書き起こしているメロンと従魔たちと対話を楽しむアップルの姿があった。

 

「あの、メロンさん、少しいいですか」

「あらァ、何かしらァ」

「その……補助魔法を教えてもらいたくて……」

「奇遇ねェ、アタシもそう思って用意してたのよォ」

 

 そう話すメロンの横には可愛らしい装飾が施された鮮やかな緑色のハンドベルが置かれている。

 それが何なのか聞く前にメロンは補助魔法について話し始めた。


「トリーちゃん、補助魔法というのはねェ……祈りなのよォ」

「祈り……」

「そうなのォ。純粋な想いを魔力に込めて魔法を発動するのよォ」


 なるほど……と、口にしながら実はよくわかっていないのが本音のトリーが隣で一緒に聞いているマシュの脇腹をつつき、視線で理解したか尋ねるがマシュはマシュで全く理解が及んでおらず、ポカンと口を開いた状態でメロンを見上げている。


「うふふ、よくわからないって顔ねェ」

「すみません!わかりません!」

「補助魔法は、こうなってほしいっていう願いを魔力に込めて白魔法を発動すれば補助魔法として発動だけはできるのよォ。ただ、それだと自分か触れられる距離にいる者にしか掛からないのォ。発動自体は難しくないけどォ、任意の人物に渡すのが難しい魔法なのよォ」

「へぇ……」

「願いを込めた魔力を相手に渡すことによって相手のステータスを増幅できるんだけどォ、それを補助してくれるのがアタシの使ってるような楽器だったり、声……まあ、音が出るものねェ。他には香を使う魔法士もいるわねェ」

「なるほど」

「アタシはトリーちゃんと違ってェ攻撃魔法は一切使わない白魔法士だから竪琴ひとつだけどォ、高ランクの攻防両方扱う白魔法士は杖に音がなる装飾を組み合わせてる人が多いわよォ」


 小さく頷いてはメモを取り、真剣に耳を傾けるトリーの横で相変わらずマシュが「はぇ~魔法ってよくわからんけど凄いな」などと言っている。


「そこでトリーちゃんには使いやすいハンドベルを用意したわァ」

「えぇ!?いつの間に!?」

「うふふ、実はァ~グレープちゃんって武器作製スキルがあるのよォ」

「え、今作ってもらったんですか!?」

「そうよォ。裁縫のスキルを持ってる人は布製や革製の防具を作れるようになるし、工作や細工のスキルを持ってる人は武器や鉱石を使った防具なんかを作れるようにもなるわねェ。どちらも、きちんと学べばの話だけどォ」

「グレープの故郷は鉱石の加工で栄えてた村らしいのよ。幼い頃から武器や防具の作り方を習うんですって。2人もそういったスキルを持っていれば後々自分の手で望む防具や武器を作れるようになるわ。……キティちゃん、貴女には従魔士としての鞭の使い方を教えてあげるわ。さあ、キティちゃんは私と一緒にこっちに来てくれるかしら」

「はい、お願いします」

 

 アップルの補足を受け、該当するスキルを持っている2人は冒険が終わったあとのことを考てそのスキルを研いてもいいかもしれないとぼんやり思いつつ、トリーはハンドベルを、マシュは鞭を手に持って立ち上がる。

 少し離れた位置では様々な太さの丸太を遠近バラバラな位置にアンドリューが配置しており、マシュの練習はそれを使うと言った。

 その間にトリーは声や音に魔力を込める練習を行うらしく、各々が指定された場所に立つ。


「まず、鞭に魔力を流してみてくれるかしら」


 そう言われ、普段通りに魔力を流し込むと魔力の膜に覆われた鞭を見て頬に手を当てたアップルに一言「ダメね」と言われた。


「いい?キティちゃんの使う一本鞭は中長距離両用とは言われているけれど、そのままの長さでは中距離もしくは短距離でしかないわ。では、なぜ中長距離両用と言われるかというと魔力を流すことで鞭自体を長くできるからなの」

「え、長くなるんですか!?」

「えぇ、鞭という武器の中でも一本鞭や蛇腹剣は特殊な素材を使って特殊な方法で作られていて、魔力の加減によって長さを変えられるものが多いの。だから、他の鞭よりも少しだけ高価なの」

「確かに武器屋で見たとき、他のより少しだけ高かった気がします」

「フルーティーのように武器作製に長けたメンバーがいるなら、その子に作ってもらうことが多いのよ。何せ高ランクの冒険者は高ランクの魔獣と戦うために自分に合う一点物を持つようになるから莫大な金額と貴重な素材を要するし、尚且その貴重な素材を扱えるような手練の鍛冶師を見付けなきゃいけないの。これは鞭以外でも同じだけれどね」

「作ってもらうなら鍛冶師を探し、作るなら学べってことですね」

「その通りよ。では、改めて鞭の勉強をしましょう」


 小さく頷いたマシュは止めていた魔力を再び鞭に流し、長尺を変えようと持ち手を掴む手に力を入れる。


「ただ魔力を流し込めばいいというものではないわ」

「流せば鞭全体に均一に流れるわけでは……」

「ないわね。今、キティちゃんの魔力は鞭の先端と手元に集中しているのはわかる?」

「なんとなく」

「ということは、先端は強度が高く通常時より幾分か殺傷能力も高い状態よ。そして、手元に溜まった魔力は無駄に力が入っている証拠でもあるわね。手元の魔力は無駄と言っていいわ」


 鞭を握った手を適度に緩めつつ魔力を流し込むが上手く行かず何度も繰り返し魔力を流す。

 均一にしようと思えば思うほど魔力の膜が分厚くなり、このままでは魔力が足りなくなると注意を受けてまずは薄く引き伸ばすよう言われた。


「鞭の長尺を変えるには持ち手以外の全体に魔力を流す必要があり、更に鞭での魔獣討伐をする際は魔獣に触れる部分に最も大きな魔力を溜める必要があるの。これは魔獣を捕らえるときも同じよ。魔獣に触れる部分の魔力が低いと魔獣に鞭を裂かれ逃げられる可能性もあるし、かと言って全体に全力で魔力を流してしまうと魔力が尽きてしまって戦闘どころじゃなくなってしまうわ」

「め、めちゃくちゃ難しい……」

「これは繰り返し練習あるのみね。でも、先端に最も魔力を溜めるというのを説明もなく出来ているのはセンスがあるからよ。普通の子は手元にばかり魔力が溜まるものだから。……さあ、まずはこの位置から動かず疎らに置かれたあの丸太を掴み上げる練習をするわ」

「はい!」

「ベビーちゃんの補助魔法の特訓が終わったら不意打ちで後ろからキティちゃんに補助魔法をかけてもらうから、それにも冷静に対応しましょうね」

「りょ、了解です」


 最初は一番手前にある丸太を狙う。

 太さは最も細く魔力で鞭を伸ばす必要はない位置に配置されており、それは問題なく掴み上げることができたものの次の丸太で早くもつまずく。

 絶妙に長さが足りないのだ。

 持ち上げるには、せめて丸太をひと回りする長さも必要で、それを考えるとマシュが立つ位置からではどう頑張っても足りない。

 魔力を流し、鞭を伸ばさなくてはいけないことはわかっているが、全体に薄く均一に流すというのが難しく何度目かの挑戦で漸くコツを掴み始める。

 確かにこれは教えを説かれて理解するよりも繰り返し練習してコツを掴むほうが近道かもしれないと思い始めたところで鞭が予想外の伸びを見せ成功した喜びと同時に扱いにくさが増し、不可思議な動きをみせる鞭に振り回される。


「う、うわあぁああぁ!ど、どうしたらあぁ」

「魔力を流すのをやめたらいいのよ」

「……あ、はい」


 グネグネと動いていた鞭が力無く地面に落ち、それを無表情のマシュが眺め、深く溜息を吐いたアップルが「冷静に」と念を押すように言い、遠巻きに見守っていたアンドリューが叩き倒された丸太を定位置に並べ直す。


「さあ、もう一度」


 この訓練を繰り返し、問題なく全ての丸太を持ち上げられる頃には月が真上に昇っていた。

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