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33話 幼馴染2人は美しさへの1歩を踏み出す2

 「はぁ……はぁ……も、もう無理……」

 「し、死ぬ……」


 魔獣から隠れるように木にもたれかかり肩で呼吸をする。

 足はガクガクと震えているし、目の前で繰り広げられる凄惨な光景に恐怖しか無い。

 メロンに掛けられた言葉でどんな状況に陥るかは察していたものの想像の倍は怖い。

 何せ良い香りを漂わせる2人のもとに集まる魔獣に対し、腕を岩に変化させ拳で魔獣を殴り潰しては千切って投げるストロベリーの豪快さ、器用に鞭を振るい高笑いを上げながら従魔に魔獣を襲わせていくアップルの苛烈さ、曲線を描く剣を手に魔獣を魅了する舞を披露しながら切り刻むグレープの狂人地味た振る舞い、持ち前のテノールの歌声と魔獣を狂わせる竪琴の音で共食いや自滅に向かわせるメロンの狡猾さは、逃げ回る2人から語彙を失わせるには十分だった。

 

 洞窟を抜けると密林に到達し、すぐに魔獣が襲ってきた。

 目的の魔獣だけではなく、あらゆる魔獣が次々にだ。

 すでにフルーティーの面々が戦い始めてから1時間は経っているだろう。

 今や2人のもたれかかる木の横には目的の魔獣の骸が積み重なっていて2人の出る幕など無いのだろうが、呼吸を整えた2人は果敢に取り零した魔獣をチマチマと狩っていた。

 漸く魔獣の波が止み、静けさが訪れる。

 暑苦しいような爽やかなような汗を拭うストロベリーは刃物の扱いに長けていないらしく、魔獣を捌くのはグレープとアップルの従魔が担当すると話した。

 積み重なった魔獣を丁寧に、だが素早く捌いていく。

 見事としか言いようがない手捌きに感心しながらマシュもケローダを捌く手伝いをし始める。

 ケローダに限定したのは虫が嫌いだからなのだが、いい感じに上手く言い訳をして特にスパイルから逃げたのだ。

 捌いていたケローダの中から青色の石が転がり落ち、それに気付いたトリーが不思議そうにそれを手に持った。


 「これって魔力石?」

 「ん?そうよぉ?」

 「魔獣って魔力石も食べるんですか!?」

 「……いや、食べないわよぉ?」

 「え、じゃあ何で……」

 「そもそも魔獣は体内に魔力石を持ってるのよぉ。ただ、加工してない魔力石ってダンジョン外だと空気に触れると気化しちゃうのよぉ」

 「へぇ~、だから見たことなかったのか」

 「え、でも人工ダンジョンでコッコとかフォクシーを捌いたときは何も出てこなかったような……」

 「個体によっては魔力石が小さくて見落とすこともあるわよぉ」

 「はぇ~、大きさも違うんだね~」

 「魔力石採取とかのクエストって無いんですかね?気化しちゃうなら外に持って出られないですよね?」

 「専用の袋や箱があるのよぉ」


 そう言ってグレープが取り出したのはカラフルな糸で刺繍が施された袋だ。

 内側にも刺繍が施されていて、この刺繍が魔力石を保つのに役立っているのだとか。

 この袋に入れておけばダンジョン外に持っていけるらしく、必要であれば雑貨屋にあるので購入も検討してはどうかと言われた。

 捌き終えた6人は、その後も襲いかかってくる魔獣と戦いつつ深部へと向かっていく。

 徐々に森の深さが増していく中で開けた場所を見つけ、そこで1日目を終える事になり、翌日も同じような1日を過ごした。


 「あの……ダンジョンって、どんだけ広いんですか?」


 トリーが思わずそう聞くのも無理はない。既に3日はダンジョン内で過ごしているのだ。

 ダンジョンが普通の森や洞窟とは違って異空間的な場所に存在していることは何となくだが理解している。

 しかし、こんなに長い時間を踏破に費やすとは思っていなかった。

 テントを片付けながらストロベリーに尋ねると彼女は自身の頬に手を当てた。


 「そうね、ダンジョンの広さだけで言えば、ここは狭い方よ。もっと広いところだと踏破に1ヶ月かかるところもあるわね」

 「そんなに!?」

 「まあ、広いダンジョンは高ランクに設定されているから2人はまだ入れないわね。アタシたちみたいな高ランクパーティーが踏破を目的として低ランクのダンジョンに挑むなら数時間でクリアすることもザラにあるけどね」

 「強くなったらなったで大変なんですね……」

 「前にルァーメンで入ったダンジョンなんて最悪だったわよぉ?広大な砂漠エリアを乗り切ったと思ったら次はハリケーンが止まないエリアだったりとかぁ……」

 「あそこは踏破しきれなかったのよねェ」

 「フルーティーでも踏破できないダンジョンがあるんですか!?」

 「食用になる魔獣が出てこなくて食料が尽きちゃったのよ。Sランク挑戦の為に入ったダンジョンだったんだけど途中で諦めて脱出したのよね」

 「あ、そういえばアナタ達、脱出用の魔道具を出してみてくれるかしら」

 

 言われた通り魔道具を出すと背後から覗いていたメロンが「やっぱりねェ」と零す。


 「石は、このサイズのものしか持ってないの?」

 「え?あ、はい。持ってないです」

 「なるほどねェ。この石のサイズだとギリギリDランクのダンジョンなら脱出できるかしらねェ」

 「サイズによって脱出できるダンジョンが違うんですか!?」

 「そうよォ。アナタ達が持ってる小石サイズは良くてD。AやSになると大体が大男の拳サイズは最低でも必要ねェ」

 「ちなみにこのダンジョンだとアナタ達の手のひらサイズかしら」

 「そんなに色々サイズがあるんですね」

 「説明が雑なのは冒険者ギルドの悪いところよねぇ」

 「ちなみに脱出できるかどうかの基準ってランクですか?」

 「ランクとは一概に言えないのよね。どちらかと言うと特性が関係してくるわね」

 「特性って……なんかダンジョンには属性があるとかですか?」

 「確かに属性が固定されてるダンジョンもあるけど、今回の場合は魔力石のある量だったり、ランダムエリアや特殊エリアの有無かしらね」

 「Sランクダンジョンの一部には脱出不可エリアなんてのもあるらしいのよねぇ……。アタシの姉さんがSランクパーティーに入ってるんだけどぉ、メインメンバーを欠いた状態で挑んで大変な目に遭ったって言ってたわぁ」


 世の中にはSランク冒険者でも苦戦を強いられるダンジョンがあるのかと驚愕する。

 自分たちにはまだ早いというのは解っているが、いずれそういった過酷なダンジョンに挑む可能性を考えると知っていたほうが良い知識だろうとトリーは熱心に耳を傾けながら図鑑の空いているページにメモをとり、マシュは意外に覚えることが多いなとぼんやり思いながらトリーの分も片付けに勤しんだ。

 

 「さあ、今日もせっせと狩るわよ!」

 「はァい、2人はこれを持つのよォ」


 ストロベリーの掛け声に合わせて歩を進めようとした矢先にメロンから渡されたのは香り袋である。

 嗅いだことのある匂いは間違いなくボディーマッサージのときに使われていたオイルの匂いだ。


 「……今日もこの役割か」

 「ふふっ、一生懸命走りなさい」

 「今日でボスエリアの前まで行く予定だから頑張るわよぉ」

 「はいぃ……」

 「落ち込んでるところ悪いけど、今日は二手に分かれるわ」

 「キティちゃんは私とリーダーと一緒に地上ルートを行くわよ」

 「トリーちゃんはぁ、アタシとぉメロンちゃんと一緒に地底ルートよぉ」

 「……その、分かれる理由は……」

 「美しさを手に入れるための武者修行よ!」

 「ひぇぇ……」


 トリーの情けない声を聞いたメロンがガシッと強く肩を掴んで成長のためだと鼓舞し、ストロベリーとグレープが各々が進む道を指差した。


 「さあ!行くわよ!」

 「行くわよぉ!」

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