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31話 幼馴染2人は教えを請う2

 ストロベリーに連れられて入った宿は奇妙な仮面がいくつも飾ってあったり、見たことのない魔獣の模型が飾ってあったりと、かなり珍妙で落ち着きがない。

 どういう魔法がかかっているかはわからないが仮面がひとりでに話だし、一度ストロベリーに2人分のギルドカードを預ける。

 今後のため、彼女の行動を見ていると仮面の口にギルドカードを入れ、どこかに転送されてから戻ってきた。


 『冒険者パーティー、フルーティー及ビポラリウス、同室デノ宿泊ヲ承リマシタ。部屋ハ引キ続キ3階ノ大部屋ヲゴ利用下サイ』


 2人は驚いて一歩後退ったものの、どうやらストロベリー達の反応を見るにこの宿では主人などは居らず仮面の魔法具が客対応するのが通常通りらしい。

 階段を上がり、指定された部屋に入れば入り口に黄金の彫像が鎮座していた。


 「うおっ」

 「びっくりしたぁ」

 「てゆか、部屋広くない?」

 「これ、金額大丈夫なんか?」

 

 部屋の広さに気圧されたトリーに耳打ちすると、確かにと青褪めて恐る恐るストロベリーに確認する。


 「ふふっ、新人に払わせるわけないじゃな~い!」

 「そもそも部屋は変わってないし、人数が増えたところで金額は変わらないから気にしなくていいわ」

 「そうよォ?アタシが使ってた部屋を使うといいわァ。グレープちゃん、アナタとアタシが同室になりましょう」

 「はぁ~い」


 メロンが使っていた部屋を2人に与えてくれ、荷物を置いてリビングに移動する。

 この宿は2階が単身用、3階と4階がフロアごとを貸し切れる設定になっているらしく、フルーティーが借りていた3階の大部屋はリビングの他に寝室が4部屋、整備された台所や風呂、トイレも備えられている。

 金額は教えてもらえなかったが、その設備だけで目が飛び出るような金額であろうことは察しが付くものだ。

 リビングに全員が揃うとメロンが飲み物を用意してくれて、2人の前にはフルーツジュースが置かれる。

 それを飲んでいるとストロベリーからギルドカードを出すように言われ、2人は言われるがまま差し出した。


 「このギルドカードって、すっごく便利なのよ?相互で協力者登録や友好パーティー登録をしておくと遠方にいても連絡が取れるの!」

 「え、手紙を出す必要がないってことですか?」

 「そうよ!文字数に限りはあるけどね。協力者登録は互いのギルドカードを重ね合わせることで登録できて、友好パーティー登録は全員のギルドカードを重ね合わせればいいの。明日、改めてダンジョンに潜ることになるから、逸れたときの保険に登録しておきましょう」

 「はい!ありがとうございます!あ、これってパーティーメンバー間でのやり取りは出来ないんですか?」

 「できるわよ?冒険者になった時に教えてもらわなかった?」

 「いえ、そういう機能があること自体聞いてませんでした」


 首を傾げたストロベリーに肘を付いていたグレープが「田舎だからじゃなぁい?」と言い出す。


 「バカにしてるわけじゃないのよぉ。アタシもド辺境の出身だからわかるんだけどぉ、うちの村のギルドも最新機能についての説明とかって無かったのよぉ。アタシが冒険者になる直前に身体のサイズが記録される機能が付いてたらしいんだけどぉ、ドンギスの首都に行くまでその説明は無かったのよねぇ。このメッセージ機能って付いたの最近じゃなぁい?だから、冒険者登録したのがキャベッシュの田舎なら説明が無かったのも普通だと思ったのよねぇ」


 なるほどと納得しつつもキャロメルは田舎だという認識に驚愕しかなかった。

 ポター村やガナッシュであれば確かに田舎と言われてもしょうがない気はするが、2人にしてみればキャロメルも都会だったし、栄えすぎてるポルコネは大都会だ。

 この認識のままいくと王都ロマーネは最早異世界なんじゃないかとさえ思う。

 ギルドカードを重ね、ぼんやりと光を帯びたカードから光が消えるのを待ってからそれを手に取ってステータスを開く。

 自分の個体値やスキルなど多くのものの一番下にメッセージという欄がある。

 そこに触れると友好パーティーの欄があった。

 フルーティーの名前に触れると個人の名前が出てきてメッセージを入力する画面が手元に浮かんだ。


 「長くて20文字までよ。各自で別の場所に行くときなんかに重宝するわね」

 「あれ買ってきて~とか言いやすいわよォ」

 「パーティーを組んでるとは言え常に一緒に動くわけじゃないんですね」

 「そりゃそうよぉ!特にアップルお姉様はダーリンたちとのデートもあるじゃなぁい?アタシ達に比べて1人で動くことが多いのよぉ」

 「キティちゃんは、まだ単独行動するのは早いわよ?今はまだベビーちゃんと2人で行動しなくちゃダメ」

 「はい。わかりました……」

 「勿論ベビーちゃんもダメよ?もっと魔法士として成長してからね」

 「あの~、実は魔法士としての成長方法というのがよくわからなくて……魔法って想像力とか発想次第でどうとでもなるかと思えば、そうでもないじゃないですか。魔力量によっては発動しないこともあるし。かといって魔力量の増やし方も知らないから何をどうしていけばいいのかも謎なんですよね」


 神妙な面持ちで小さく頷いたストロベリーは、真っ直ぐとした視線をトリーに向ける。

 

 「魔法の力は精神力。つまり心を美しく鍛え上げることで魔力値を上昇させ、魔法を強化できるのよ。心・技・体・頭脳、その全てが揃ってこそ完璧な美しさに辿り着くわ」

 「ウ、ウツクシサ……」

 「そうよ。何事にも動じない精錬でいて純真な心、多くの経験と鍛錬、強靭な肉体、必要不可欠な知識。どれも欠かしてはいけないものなの」


 なるほどと感銘を受け頷くトリーをマシュは真顔で眺めながら、確かにトリーは純真といっていいと思っているが自分はどうだろうかと自問し、猜疑心しかねーわと自答していた。

 そもそも純真さとやらが必要だとするなら自分は強くなれないということだろうかと考えもしたが、きっとそうではないと考える。

 動じない心は臨機応変さ。経験と鍛錬は魔法の発動回数、マシュで言うなら魔力操作を伴う武器の使用回数。強靭な肉体と知識に関しては、そのままの意味だ。

 ムキムキになる必要はないが鍛錬を積むことに得しかないならやる以外に選択肢はない。

 そう無言のまま思考しているとアップルから声がかかる。


 「キティちゃんは、魔力操作で武器を扱うのも必要だけれど、何より自分が主人であるという自覚も必要よ。それと従魔は数ではなく質。従魔士というのは、強い従魔や稀少性の高い従魔を得ることでも魔力値が増えるの」

 「稀少性……」


 マシュの視線の先には、じゃれ合うシロとイナリがいる。

 スライム種は最弱で稀少性の低い魔獣ではあるが、シロの持つスキルは稀少性の高いスキルだと言っていたし、属性を持たないスライムも珍しいとのことだった。

 イナリもフォクシー自体はどこにでもいる魔獣だが、従魔契約後に進化すれば稀少性の高い魔獣になると言われている。

 自身の魔力値を確認していなかったせいで2匹を従魔にしてから魔力値が増えたのかは判断できないが、次に何か従魔を得られたときには確認してみてもいいかもしれない。

 そう思いステータスを改めて確認するマシュの隣でマシュとアップルを除く面々の美しさを身に付けるための談義が白熱していた。

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