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29話 幼馴染2人はインパクト強めの冒険者と出会う

 グラグラと激しく揺られる感覚が気持ち悪い。

 夢の中で船に揺られ、頬に痛みを感じて現実のトリーが勢いよく目を開く。


 「あらァ、起き」

 「うぎゃあああっ!ばけも、んぎゅ」

 「誰がばけもんだってのかしらァ、ねえおチビちゃん?助けてあげたアタシたちに失礼じゃなァい?」


 緑髪のふくよかな濃いめの人物の柔らかな手に顔面を鷲掴みにされ「ひゅみまひぇん」と謝罪している横でマシュもまた目を覚まして「怪物がぁ!」と叫び、その瞬間に金髪の女王様風赤ボンテージを着た特徴盛々な性別不明の人物に鞭で口元をグルグル巻きにされていた。


 「キティちゃん、そのくだりはもう終わったわ。それに声を張り上げるだなんてはしたないわよ」

 「むぐぐんぐ……ぐぐっ……ふんぐ……(キティって誰……痛ッ……助けて……)」

 「えぇ、そうね。女の子はいつだって品が大事よ。わかってくれて嬉しいわ」

 「んっぐんーんんぐむぐ……(キャッチボールしてくれ……)」

 「ねえキティちゃん、大人しくお姉様の言うことを聞いてくれるのなら放してあげてもいいわ」

 「ふむ!(はい!)」

 「良いお返事ね」


 解放されたマシュがゼェゼェと呼吸を整えていると同じく解放されたトリーが掴まれていた頬をほぐすように揉んでいる。

 よく見ると赤ボンテージの人物は白い鬣に蛇の頭がついた尾を持った羽が生えた獅子の背に乗っており、獅子はマシュとトリーが危険な人間でないか注視しているようだ。

 寝かせられているベッドはガナッシュ子爵邸のベッドと同じくらいふかふかだし、部屋は整っていて快適だ。

 視界にハイレグ具合が不安になる情熱的なエナメル素材っぽい赤ボンテージの人物さえ目に入らなければ。

 間違いなくスタイルは抜群で、適度に筋肉のついたカモシカのような美脚を見せつけるかのように組み替える姿は扇情的と言っていいかもしれない。

 胸筋なんだか自然な肉厚なんだかわからない胸は、寄せて集めてギュッとして盛り上がっているし、首には獅子と揃いのトゲトゲがついたチョーカーが巻かれていて目のやり場に困る。

 徐々に視線を上げていくと発色の良い黒の唇が目に留まるし、頬に濃く塗られているのは頬骨を隠すためのシャドウだと思う。

 ノーズシャドウもハイライトもドギツい赤のアイシャドウも効いていて素晴らしく立体的だ。

 勿論と言って良いのかわからないが、緑髪のふくよかな濃いめの人物もインパクトでは負けていない。

 真緑のアイシャドウに抜群の艶を見せるおちょぼ口な赤の唇、トリーがボソッと「平安……」と呟くくらいには似ているし、身に纏う白の服はどう見てもギリシャ神話から出てきたとしか思えない。

 柔らかそうなふとましい腕に竪琴を抱えていることもあって尚更だ。

 

 「キティちゃん、ベビーちゃん。これからお姉様たちの美しいリーダーがくるわ。失礼のないように」


 これ以上のインパクト強者が来るのか、はたまた絶世の美女レベルの美人が来るのかと2人が息を呑むと時を置かずして扉が壊れんばかりの激しい音を立てて開かれ、ピンクの怪獣もとい筋骨隆々の美しいリーダーが衝撃的な装いで入ってきた。

 艶が凄いショッキングピンクの髪にアイシャドウと女性拳闘士に多いチャイナ風の服は真ピンクだし、どんな役割があるのかはわからないが胸筋を主張する胸元にはハート型の穴が開いているし、中に履いている短いスパッツは彼女の彼の部分を無駄に主張してしまっているようにも思う。

 割れた顎や隠しきれていない青ひげに雄々しい黒々とした眉、ツッコミどころが過多ではあるが確かに筋骨隆々なその肉体は美しいの一言に尽きる。

 いや、尽きるか?とマシュが内心でツッコミを入れているとトリーが思わずといった具合に「うつく……しい?」と疑問符を浮かべて零した。


 「トリー!美しいだろ!美しいんだよ!見ろあの素晴らしい筋肉を!抱きしめられたいだろ!知らんけど!」

 「はっ!あっ、ウツクシイ!」


 今2人は猛獣だらけの檻に入れられた鴨だ。

 逃げられないのだからこの檻の中のルールに則って動くのが流儀なのだ。

 いや、あれだけ鍛え上げられた肉体を持つということは精神性が美しいのかもしれない。


 「ふっ、元気なレディたちね。あまりに起きないものだから心配したけれど、それだけ元気があるなら大丈夫そうね」

 「へあっ、はい!ご心配をお掛けしました!」

 「ところで、あなた達は冒険者でいいのよね?」

 「はい。なりたての新人です」

 「ダンジョンに入るためには申請が必要だと教えられなかったのかしら?」

 「それが……私の従魔の餌を探してたら穴に落ちまして……」

 「落ちた先がダンジョンだった感じだよね」

 「うん。なんか途中で膜みたいなのに引っ掛かったと思ったらダンジョンの中に落ちた感じだった」

 「あら、それはいけないわね。メロン、すぐにマスターに知らせて頂戴」

 「わかったわァ」


 メロンと呼ばれた緑髪の人物が部屋から出て行き、かなり濃い目の2人と向かい合う。


 「今からマスターが来ると思うから穴が開いていた場所を教えてくれるかしら?」

 「正確な位置はわからないんですけど大丈夫ですかね」

 「えぇ、大丈夫よ。探すのはギルド員の仕事だわ」

 

 そう話しているとマシュの頭の中に聞き慣れた声が響く。

 シロとイナリのものだ。

 

 「あ、従魔を2匹ほど出してもいいですか?うちの子たち、石の中に入るの嫌いみたいで……」

 「それはいけないわ!私達は命ある限りダーリンたちを何より愛し、慈しみ続けなくてはならないのだから些細な願いのひとつも聞き逃してはいけないわ!」


 ダーリンって何だ、その決意重すぎないか、という思いを抱きつつシロとイナリを呼び出す。

 流石にモミジとジビエまで出すのは憚られるし、カルディア夫妻は石の中でも居心地良いのか出たいとは言わなかった。

 マシュの左右を陣取るように現れた2匹は、思い思いに身体を伸ばしてそこに居座る。


 「キティちゃんのダーリンは可愛らしい子たちが多いのね」


 確かに赤ボンテージの人物が契約しているであろう獅子よりはサイズ感も可愛いのは間違いない。

 そういえば、ここは一体どこの町なのだろうかとトリーが疑問に思い始めた時にリーダーから紹介とこの町に連れてこられた経緯の説明がされた。


 「アタシは冒険者パーティー【フルーティー】のリーダー、ストロベリーよ。こっちは従魔士のアップル。さっきここに居た緑髪の淑女はメロン。それと、後でギルドマスターと一緒にくる予定の踊り子はグレープよ。よろしくね」

 「はい。私達は10日ほど前に冒険に出始めたばかりの冒険者で、ポラリウスというパーティーを組んでるマシュとトリーです。よろしくお願いします」

 「じゃあ、あなた達をこのポルコネに運んだ経緯について説明するわね」

 「あ、はい」

 「あなた達はアタシ達に遭遇してすぐに気を失ったわ。あのダンジョンは最低でもCランクは無いと立ち入りが許されていない場所にも関わらず、あなた達の装備はどう見ても初心者のものでしかなかった。そこで申し訳無いんだけどアップルのスキルで鑑定を行わせてもらったの。案の定Fランクの冒険者であることが判明して、ダンジョン攻略を中断してレイシ地方の冒険者ギルドを統括しているマスターがいるこのポルコネに連れてきたのよ」

 「故意にダンジョンに侵入したのであれば冒険者ギルドからの除名処分だったでしょうけど、聞いた感じでは事故だから注意程度で終わるでしょうね」

 「良かった……」

 

 安堵の声を零すとストロベリーは「全くだわ」と言って椅子に腰掛けた。


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