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20話 幼馴染2人はダンジョンに挑む3

 4階の最後の部屋の中を入口の前から確認すると、そこにいたのは3本の尾を持つフォクシーという小狐型の魔獣だった。

 ゆらゆらと先の赤い尾を揺らし、丸まって寝ている姿は愛くるしいがフォクシーは比較的に好戦的な魔獣だと説明された。


 「ここにフォクシーが居るということは、今回の6階のボスはフォクシーの成体だな。フォクシーは火属性の魔獣で、動きを抑えたあとに特定のアイテムをやると契約できることが確認されている。最初に拾った巾着の中に鈴があるはずだ、確認してみろ」


 ゼンに言われるがまま最初に入手した巾着を開け逆さにすると音が鳴らない金色の鈴が手の平に転がる。

 

 「あれ?鈴なのに音鳴らない?」

 「この鈴は中にある玉が火の魔力石でできていて魔獣が使う火属性の攻撃に反応して鳴るんだ。危機察知機能だと考えていい」

 「なるほど」

 「今回は魔獣との従魔契約を目的として戦う。トリーの魔法攻撃で弱らせ、マシュの鞭で捕えるのが理想だな。トリー、基本の魔法の使い方はわかるんだよな?」

 「はい。魔法はイメージが大事だと教えられました」

 「その通りだ。イメージが思い浮かびやすいように詠唱する奴もいれば技名のようなものを唱える奴もいるからトリーも試してみるといい。フォクシーはコッコと違い属性攻撃もしてくるから俺も盾役として控えているからな」

 「了解しました」

 「まずは2人で作戦を立てて思うように動いてみろ」

 「はい!」


 そう言われた2人は話し合い、まずはこそこそと部屋に入り寝ている状態のフォクシーに気付かれない距離から後衛にいるトリーの水魔法で弱体化させ、それから前衛にいるマシュの一本鞭でフォクシーを捕らえようと話し合う。

 

 「いくよ?」

 「りょ」


 じわじわと近付き、今だと狙いすましたトリーが杖に魔力を込めた。


 「あ~~~~……みずでっぽうッ!」


 ぴゅっ ぴゅっ


 「つめっ……は?」

 「あれ?」


 杖から放たれた水魔法は直線的に飛び、すべて前衛に立っているマシュの背中に当たって消えた。

 前世にあった子供の玩具の水鉄砲のほうが威力が強いんじゃないかと思えるささやかな水圧にキョトンとしたマシュが振り返る。

 

 「水鉄砲マ~?全部、私にあたったのマ~?」

 「……いや、ごめん」

 

 真顔で応えたトリーに「まあまあまあ、いいでしょう」と返して正面を向くと可愛い顔をして寝ていたはずのフォクシーがチベットスナギツネのような虚無の表情で2人を眺めていた。


 「おい、起きたって」

 「やっばいな」

 「一旦スイッチしてトリーが前衛から水鉄砲乱射してくれんか?できればフォクシーを右側に誘導してほしい。あそこにある瓦礫の方」

 「了解!」


 マシュの作戦通り、先程より水圧を高めた水魔法を何度も撃って徐々に右側にある瓦礫の方に誘導していき、マシュが狙いを定めて魔力を流した一本鞭を大きく振る。


 「おらぁっ!……あっ」

 「痛ッ!」

 

 淡い無色の光を纏った鞭は大きく撓り、フォクシーに向って伸びるかと思われたが勢いを失ってトリーの後頭部にペチッと音を立てて直撃し、力なく地面に落ちた。

 なんとも言えない複雑そうな表情で見つめ合う2人と若干引き気味に見えなくもないフォクシー、そして天井を仰いだゼン。

 沈黙の中、マシュが小さく「ごめん」と呟いた。

 それにため息をついたのは他でもないフォクシーだ。

 威嚇するでもなければ敵意を持つわけでもない小さな魔獣がトコトコとマシュに近寄り、左手に持たれたままの鈴を見上げる。


 「これが欲しいの?」

 『クゥ』

 「あ、はい……えっと、どうやってあげたらいいんだろ」

 「髪紐使ったら?」

 「首輪的な?」

 「そうそう」


 自分のホワイトアッシュの髪を結んでいた青の髪紐を取り、鈴にそれを通してフォクシーの首に巻くと幼い女児の声が耳に届く。


 『見てられないのじゃ!わっちが手を貸してやるのじゃ』

 「え、のじゃロリ可愛いんだけど……」

 『さっさと名前と石をよこすのじゃ!』

 「はい」


 バングルをつけている左手をフォクシーの足が届く位置まで差し出し、足が触れたのを見て呟く。


 「イナリ」

 『よろしく頼むのじゃ、主様』

 「こちらこそよろしくね」


 シロと契約したときと同じ光景が広がり、イナリが契約の石に吸い込まれるように消えていき、再び呼び出すとイナリが正座していたマシュの膝に両前足を乗せた。


 『雑魚すぎるのじゃ!』

 「辛辣すぎん!?」

 『わっちが出す火の玉に向って武器を当てる練習をするのじゃ!主様のお供もじゃ!』

 「あ、彼女はトリーね。お供じゃなくて友達だし、仲間ね?」

 『わかったのじゃ。トリー様も水を当てる練習をするのじゃ!』

 「え?あ、はい!」


 それから行われた訓練は思った以上にスパルタだったが有意義なものだった。

 今のままでは進むのを危険と判断したゼンも協力し、イナリが出した火の玉にどう狙いを定めるかをアドバイスしていく。

 最初は動かない火の玉に当てる訓練をし、次は動く火の玉に当てる訓練に移る。

 初手が微妙だっただけで2人の飲み込みは早く、特にマシュはコツを掴んでからは的を外すことはなくなったし、トリーも10個中7個はスムーズに当てられるようになったが終わる頃には魔力切れを起こす寸前になっており、ゼンに与えられた回復薬を飲みつつ5階のスタート地点で少しの休憩を与えられた。

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