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ガチャを引け、そして未来を拓け

「な、なに!?何が起きたんです!?」


「おおっと、どうやら厄介な客が来たみたいだね〜、ちょっと隠れててくれ」


「わ、分かりました……ほらミビュー戻って」


「うにゃ!」


アトーナは端末にミビューを戻すとすぐさま台の後ろに隠れ、隙間から様子を伺う。


「よおウコメ、邪魔するぜ」


「自覚があるなら帰ってくれ」


入って来たのは2mはある大男だった、全身を機械の鎧で包み、小さく駆動音の鳴る厳つい右手を見せつけるように胸の前に出していた。


「何言ってんだ、お客様が来てやったんだぜ、さっさと俺のミンチフレイルの射出装置を修理しろって依頼のな」


「バラした分は元に戻したし、これ以上修繕できない状態だ。それは前にも言っただろ?他の用事なら受け付けるけどそれは他所に頼んでくれ」


ウコメと呼ばれた店主は素っ気なく対応するが、それを聞いても男は態度も立ち位置も変えることはなく、ニタァと笑ってウコメの前に立ちはだかる。


「なんだ?まだ何かあるのか?」


男は屈み、ウコメに視線を合わせながら薄気味悪い作り笑いを浮かべる。


「それがよぉ、俺はどうやらコロニーガードに仕事がバレちまったみたいなんだよ、だからここのコロニーを抜けようと思ってんだ」


「そうか、それは良かったな。じゃあさっさと消えな」


なおも塩っ気の強い対応をするウコメに対し、男は両肩を掴んで押さえつけた。


「ちょっ!なにすんだ!」


「まあ聞けよ、そうなると俺の身体のメンテナンスが必要になるだろぉ?そのためにひょこひょこ後ろをついてきて身体を直すやつが必要なんだよ」


「知るかよ……テメェの身体くらいテメェで直せって話だ……なんで臭えブ男と心中しなけりゃならねえんだよ……!」


「このクソガキ……!つけあがんじゃねぇ!!」


ウコメの態度に痺れを切らした男が彼女を殴り飛ばす。


「ごをぉっ!?」


「ッ!?店主さん!!」


壁に衝突するウコメを見て。思わずアトーナが二人の前に飛び出してしまう。


「んー?なんだこのチビは」


「な、なにやってんだ……こいつはおれっちが適当に流せば帰ったのに、なんで出てきちまうんだよ……」


「なに言ってるんですか!この人は多分強引にでもあなたを連れていきますよ!」


男はアトーナに向き直り、ニタァ〜と卑下た笑みを浮かべる。


「勘がいいなぁ、その通りだぜクソガキ、そして見られた以上どうにかしてえなぁ……お前が馬の獣人かなんかだったら高く売れそうだったのに、ただのヒューマンかよ」


(高く売れる……?人身売買とかやってるのか?なら……)


「僕はシュトラルだ!両性の種族で珍しいんだぞ!ほら捕まえてみろよ!」


それを聞いた男は、驚いたように目を見開いてから少し考える素振りを見せる。


「ふむぅ〜……そうか、両性の種族がどんな味か知りてえ物好きもいるかもなぁ〜……」


そして何か結論を導き出すと、またあの下卑た笑みを浮かべてアトーナを見下ろす。


「え……味って……」


「馬の獣人って……くうっ!こいつが言い出した時点で気になったけど……はぁ……こいつは人肉加工業者と繋がりがあるみたいだ……くそっ痛え……逃げろアトーナ、バラされるぞ……」


「え、ええ〜!!」


ウコメの懇切丁寧な説明でアトーナが自分の危機的状況に理解した時、不意に殺気を感じてアトーナは思わず体を数十センチ動かす、すると元いた場所に男の鋼鉄製の腕が振り下ろされ、アトーナの真横の床が小さなクレーターを作っていた。


「え……うえぇぇぇぇ!!?」


明らかに殺意を纏った一撃に恐れ慄いたアトーナが逃げ出し奥の作業場へと走り出す。


「くそっ、運良く避けやがってぇ……ウググッ!待ちやがれぇ!!」


「なんでなんでなんで!!?あれ殺す気だったよね!?捕まえるんじゃなかったのか!?」


「コマンダー!早く私を出して!二人で戦おうよ!」


殺意を放つ男の一撃に怯えてどうすることも出来ず走り続けるアトーナに、ミビューが自身を使うことを催促する。それを聞いてハッとなったのか、アトーナはすぐに端末を取り出してミビューのアイコンをタッチした。


「よっと!コマンダーあいつやっつければいいんだよね!?」


「うん!でも殺しちゃダメだよ!」


端末から飛び出し、華麗に着地したミビューはアトーナの指示を聞くと、彼女らすぐに追ってくる男に向き直り爪を剥き出して突進する。


「ほらほら〜!そんな黒鉄の鎧なんて切り裂いちゃうよ〜?って、あれ?」


しかし、ミビューの爪の斬撃は男の身体の一部が砕けるだけで受け止められてしまい、ミビューのその刀のような爪がへし折られ、そのまま男に捕まってしまう。


「なんだぁ、どこから現れたんだこの小娘はぁ?」


「うにゃあぁぁ!!離せぇ!!」


子猫のように首根っこを掴まれて持ち上げられるミビュー、暴れる彼女を嘲笑いながら男はミビューが断ち切れなかった腕を見せつける。


「ふはははは!!こいつぁこのストレンジフィールドでも硬え鉱石で有名な『ユマカシム鉱』を使った合金YKS2271、通称『アダマンシリウス』を使った義体だ!そんな爪じゃ切れる訳ねぇ!」


男が見せた腕をよく見ると、傷や変色が目立つ装甲の下から青白く光る傷一つない金属の塊が覗いている。


「あいつ身体が金属で出来ているのか……?まさかミビューが……」


アトーナは困惑し、そして戦慄した。ササン街道のバンジョシュをも瞬殺して見せたミビューの攻撃が通用せず、逆にこうもあっさりと捕まってしまうのはアトーナにとっても予想外の事であった。


「ふしゃあぁ!!は〜な〜せ〜!!」


男に吊られる中で暴れるミビュー、するとその爪がたまたま男の頬を掠める。どうやらそこは生身だったようで、微かに血が滲み少し溢れる。


「ちっ!このガキャア!!」


激昂した男がミビューを見てその顔を盛大に叩く。


「きゃふっ!?」


「……ッ!?ミビュー!!」


その一撃でミビューは気絶してしまったようで、そのままグッタリと目を閉じて大人しくなってしまう。


「まあいい、あいつもお前も一緒に捕まえて売り飛ばしてやる」


(売り飛ばす……!?本当に、僕は食肉にされるのか……!?)


男の言葉に動揺したアトーナの脳裏に、あのグロブスタに致命傷を負わされた時の光景が蘇る。両脚首を切り落とされ、怪物の前で無防備を晒して切り裂かれそうになったあの瞬間を。


「う、うわあぁぁぁぁ!!」


その時の苦しみを思い出したアトーナの足首に激痛が走る、実際にダメージがあった訳ではなく単なるイメージなのだが、それは彼の中に恐怖を思い起こさせるには十分だった。アトーナは恐怖に慄き叫びながら、全力で店の奥へと逃げ込む。


「どこだクソガキ、どこに隠れやがった……」


店の最奥、地下のアングラな店とは思えない広さの部屋の中に逃げ込んだアトーナは、身を隠すに十分なガラクタの後ろに潜んでいた。


ガラクタが積まれた山の後ろで両手を口で塞ぐその姿は、年相応の子供らしく震えていた。


「はぁ……はぁ……」


思わず息が荒くなり、塞いだ手の間から熱のこもった吐息が漏れる。


(ど、どうしようどうしよう……!怖いっ……!震えが止まらない……!)


体は素直に恐怖に反応し、見つかったとしてもすぐには反応できないほど強張り、アトーナは止まらない震えを抑えるのがやっとだった。


(殺される……!見つかったら殺されるんだ……!)


死の恐怖がアトーナを支配し目に涙が滲む、そんな彼の耳に男が近づく足音が響く。


「隠れてたって無駄だ、一つ一つじっくり見ていこうかぁ」


ニヤニヤとした口調で男が積まれたガラクタを調べていく。


最初はアトーナから離れた所を漁っているようで、それは少しずつ近づいてきている。


(ダメだ見つかる……僕はもう……助けて、プレシア……)


危機が迫るアトーナの脳裏によぎったのは、この世界に来てからずっと一緒だったプレシアだった。



“なに腰抜かしてんの〜?私が来なかったら危なかったじゃん”



“スペルマスターなんて、マスターってつくけど守りは弱いんだよ〜?誰かに守ってもらわなきゃ”



(プレシア……)


彼の脳裏に浮かぶ彼女は先を行っており、ふと振り返りアトーナに優しい笑顔を向けた。



“危なくなったら、素直に『助けて』って言いなさいよ。そしたらいつでも駆けつけてあげる”



その言葉で思い出したのは、自分を庇って杯の剣に貫かれたプレシアの姿だった……



(……ッ!!僕は、僕はなにをやってるんだ!!)


アトーナの目が見開かれ、端末を持つ右手に力が入る。


(僕は、僕は戦わないといけないんだ!!助けるために!!



ミビューを



プレシアを



そして、みんなを助けるために!!あいつと!!)


アトーナは自分を見下ろし無機質に剣を振うあの杯のグロブスタを想像する。次に映る景色は、炎に包まれたロビーの中で瓦礫に脚を潰された元の世界の幼馴染の姿だった。


(もう誰も取りこぼしたくない……!もう、誰も……!)


アトーナは端末の画面を睨む。


(杯のグロブスタ(あいつ)を倒すにはこんな所であんなやつにビビってる場合じゃない!!だから……)


端末を起動してガチャアプリを開く、手持ちは一回分のガチャができる状態だ。


(少しでいい、あいつと戦うために、少しでいいから力を貸してくれ……!もう二度と誰も失わないために……!)


アトーナがplayのボタンに指を添えたその時、


「み〜〜つぅけたぁ〜〜〜〜!!」


ガラクタの山とは違う影がアトーナを覆う、それと同時に降りかかった声に彼は思わず顔をあげるとそこにはニヤついた醜悪な男の顔があった。


「くっ!!」(しまった!早くガチャを……)


「遊びは終わりだぁ!大人しくしなぁ!!」


すぐにアトーナはガチャボタンを押そうとしたが、それよりも早く首を掴まれて持ち上げられてしまい、端末が床に落ちてしまう。


「がっ……ぐっ……くるしっ……」


首を掴まれて吊り上げられたアトーナは、息苦しさに体をばたつかせて首を拘束する手を振り解こうとする。


(もう少し……もう少しだったのに……!)


アトーナはガチャを起動出来なかった……そう本人は思っていた。


しかし実際には、端末では高速で回転した十二角形が停止し、全体を金色に輝かせながら中心を徐々に開いていた。

本当はゴールデンウィーク中に出すつもりが書いてる途中でヤン〇ガWebで彼〇島が無料で読めるキャンペーンを知ったので夢中で読んでました(反省)

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