降って湧いた挽回のチャンス
「プレシアはなんでいつも僕を馬鹿にするんだ、そんなに下を見て気持ちよくなりたいのかよ」
コロニー東部にある商業地区、そこにある酒場群の中でも一際大きい店で食事をとりながら、アトーナはプレシアへの文句を垂れ流していた。
「でもコマンダー、実力に関しては未熟なことは事実なんだし、下手に見栄を張っても仕方ないと思うよー?」
そんな独り言に反応して、端末の中からミビューが率直に思った事を口にする。
「ミビューまで……もう!そんなに言うなら、君にも僕が強くなったってことをすぐに見せてあげるよ」
ミビューにまで低い評価をされた事が気に入らなかったのか、アトーナは食事をかき込むと立ち上がる。
「ショーンさんからはグロブスタや原生生物との戦い方についても色々教えてもらったんだ、今の僕なら君と並んで強敵と戦える」
『隠遁するベルバ』の襲撃者を撃退した経験もあってか、そう信じて疑わないアトーナは所持品を確認すると、いそいそとレジへと向かった。
「なあ知ってるか?『霹靂の天空域』で魔物の動きが活発なんだと」
「お前いい加減慣れろよ、魔物じゃなくて原生生物とグロブスタだろ?その話なら俺も聞いたさ、討伐数を稼げるって事で盛り上がってるらしいな」
レジへと向かう途中、興味深い話が耳に入り、アトーナは思わず立ち止まってそちらを向いた。
「なんか未知のグロブスタも発見されてめちゃくちゃ金になったって自慢してた奴もいたが、俺は行けと言われても御免被るね」
「全くだ、そんな不安定な状況じゃ何が出てくるか分からんからな、倒せば金になるかもしれねえが……」
そこまで聞いたアトーナが大急ぎでレジへと行き、担当している顔のパーツのバランスが悪いアンドロイドに端末を見せる。
「代金、いただき。毎度の……お越しを!」
アンドロイドが奇怪な対応をしながら支払いを完了させ、アトーナはそれを確認してから店を出ると、すぐさまポータルの位置を端末で確認する。
「グッドタイミングだよ、あんな良い話が聞けるなんて!早速『霹靂の天空域』へ向かおう!」
セリナから聞いた「善は急げ」という言葉を胸に、アトーナは北部にあるダンジョンへのポータルへと駆け出して行った。