その男の呟き
男は自室で
「魔人達は助けたかったのか。」
下界を眺めながら、今度は紅茶を飲む。
「魔人に渡しても良いが、エルフ共と本当の争いになるな。」
「あの里のエルフ共が死に絶えても、他にも里があるから、エルフ共の滅亡はないが、さて。」
顎に手を当て少し考えてる様子。
「ご主人様。
あの森が焼かれるのは、あの森で暮らす生き物や、精霊達がお気の毒です。」
執事が新しい紅茶を注ぎながら言う。
「確かにな。
せっかく拾った子供を、今渡すと小さすぎて今度こそ死ぬかもしれんな。
それはつまらん。」
「そうですとも。
せめて自分の身を守れるぐらいには大きくならないと、あっという間に死んでしまいます。」
「我は生き返らすのも容易ではあるが、下界の者を簡単に生き返らせては、下界の秩序を壊してしまうから、易々とはいかぬな。」
「そうでありますとも。
ご主人様のお力は簡単に御使いになってはいけません。
下界には過ぎるお力なのですから。」
「わかっている。」
そう答え、下界を眺める。
「魔人が戦闘訓練しておる。魔法も威力がある。」
「ハイエルフ共はまだ墓の事で揉めておるのか。
くだらぬ。
弱いくせにプライドばかり高く、他種族を見下すのは何故だ。」
男は記憶を辿る。
「ああっ。
五千年前、我が助けた数が一番多かったからか。
それを神が認めた種族と勘違いしたのか。
たまたまエルフが多かっただけの事なのに、くだらぬわ。」
不機嫌な様子になった男に執事は
「エルフは長寿とはいえ、弱い種族。今では数を減らしております。
繁殖力も弱い。
後千年もたつと更に数を減らすでしょう。」
それを聞き
「それもそうだな。」
と頷く。