魔人
男の気配を感じた魔人の名はファラダ。
魔人の王の二番目の息子だ。
子供の父は魔人の王の五番目の息子で名をラリューといった。
実は魔人達は殺す為に追いかけていたのではなく、魔人領に親子を保護しようとしていた。
そこへハイエルフ達の追手と重なり、二人に意図を伝える事も出来ぬまま、ただ追いかける事態になっていた。
魔人達は特にハイエルフを嫌ってはおらず、自分達を穢らわしいような目で見て、すぐに攻撃してくるので防御も含めて相手をしていただけだった。
本気で戦えば、力も魔力も上な魔人達が勝利するのも分かっていた。
森での戦闘は森がハイエルフやエルフ達に味方するので不利だが、焼いてしまえば、なんて事がないと思っていた。
ただ、森を焼くのはしのびないし、弱い者いじめのようで、本気を出すのを躊躇っていた。
それは精霊達も理解しており、ハイエルフやエルフをあまり森の外に行かないよう、さりげなく促していた。
そんなハイエルフと魔人が愛し合い、子供が出来るとは、誰も思いもつかなかった。
だが、二人は出逢い、種族を捨て、逃避行する事となる。
「何故、相談してくれなかったんだ。
相談さえしてくれていれば、守る事も出来た。
お前達を死なせる事もなかったのに。」
ファラダは酒を煽り、うなだれる。
ファラダの妻はそっと夫を後ろから抱きしめた。