昔々
この星が生まれたのは一万五千年前。
神々は五千年を掛けて、自然を豊かにし、動物や魚達を創った。
魔人、獣人、人間、ドワーフ、エルフ、精霊なども創り、ゆったりと平和な世界が出来上がった。
そしてまた五千年がたった頃、平和に飽きた多くの神々が、100体の強力な龍を創り世に放った。
安定した世界だが、娯楽が少なく、多くの神々はお気に入りの龍に、力を注いだ。
巨大な龍達は互いに喰い合い、喰らう事で相手の力や能力、記憶を己の力に出来た。
一万年を掛け慈しんで育ててきた世界が、薙ぎ倒され、焼かれ、生き物が死んでいく。
その光景に耐えられない龍を創るのに協力しなかった5体の神がいた。
なんとかしようと、思いつく限りの手を尽くしたが、数でも負けている神々になす術がなかった。
その神は、慈悲、鍛治、農業と林業と漁業、自然、生物を司る神だった。
5体の神は己達の力の無さを嘆き、100体の中でも抜き出ている能力の黄金の龍の元へ行き、願いを託すと、龍の口の中に飛び込んだ。
黄金の龍は5体の神の記憶から、龍達を喰らいながらも神々を探し出し、次々と神らをも喰らっていった。
全ての龍と神を食らった黄金の龍は、勝手に願いを託し、口の中に飛び込んだ5体の神を吐き出し
「お主らの願いは知らん。自分達でなんとかせよ。」
と言うと何処かへ飛び去って行った。
5体の神は黄金の龍に感謝し飛び去った方向へ、深々と頭を下げた。
以前の豊かな大地の面影はなく、地面はえぐれ、焼け焦げて黒々とし、生き物の血で赤く染まっていた。
生き物の骸は腐り悪臭を放っている。
5体の神は悲惨な世界に涙し、力を合わせて豊かだった大地に戻した。
骸は大地に還す。
すると何処かに隠れていた生き物達が恐る恐る姿を現した。
「あの龍が生き物を力が及ぶ範囲、護ってくれていたんだ。」
「ああ。
そうでなければ龍達の闘いで全て死に絶えていただろう。」
「なんて慈悲深い。」
「私達はあの龍を選んだ事に間違いはなかった。」
「感謝します。」
「ありがとうございます。」
5体の神は黄金の龍の飛び去った方向に向かい、涙を流して再び頭を下げた。