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子供が起きた

「まぁまっ。」


子供が目覚め母親を呼ぶ。


男は子供の扱いは多くを喰らって理解しているが、子育ての経験はない。


次第にぐずりだし、泣いてしまった。


「腹が減ったか。

面倒だな。」


騒がしくなると、途端に面倒くさくなった。


「仕方ない。城へ戻るか。」


結界ごと自分の城へ転移する。


「お帰りなさいませ。ご主人様。」


執事やメイドが出迎える。


「これを世話せい。」


猫の子を掴むように首元を摘んで、執事に渡す。


「この子はどうなさったのでしょう?」


受け取りながら尋ねる。


「面白いかと拾った。」


「さようでございますか。

この子供は魔人とハイエルフのハーフでしょうか?

随分と秘めた力を感じます。」


「そうだ。行き倒れていた。

両親も亡くなっているから、拾ってやった。

子育て経験があるメイドに育てさせろ。」


「かしこまりましたが、いつまでお育てされますか?」


「そこだ。

ある程度で下界に返す。

ここでは色々な経験は出来ぬからな。

こいつはこいつの好きなように生きると良い。

長寿とはいえ、不死ではないのだから。」


「かしこまりました。

そのようにお育ていたします。」


執事はさっそく子育て経験のあるメイドから、子供担当を数体決めた。


「くれぐれも大切にお育てするのですよ。

ご主人様が下界に返すまで。」


「心得ております。

ご主人様の為だけに私共が存在しているのですから。」


執務室で男は、下界を眺める。


「ハイエルフ達は森へ着いたか。

ほぉっ。

揉めておるな。

多くはあの子の母親の死を嘆いているが、数人激怒しているな。

墓を建てるか立てないかか。

くだらぬ。」


「魔人は人目のつかない場所から転移石を使ったな。

いくつか我の僕に作らせ世界にばら撒いた物だ。

こちらは静かに追悼して墓に入れたか。」


「おやっ。

我に気が付いたあやつ、子供に呪をかけ吸い取らせたのも見抜いたか。

子供が生きている可能性もあると魔人の王に告げているな。

魔人の王も理解し、捜索隊を派遣したか。

仕事が早い。」


男は事態が動いている事を面白がる。


「長い間、面白みがなかったが、良い拾い物をしたようだ。」


満足げに微笑む。


「ほうっ。

ハイエルフの方も呪に気が付いた者がいるな。

ハイエルフの長か。

ハイエルフの方も捜索隊を出すようだ。」


「我の城は下界の者どもには見つけ出せぬし、子供の痕跡も残していない。

それではつまらぬな。」


いつの間にか側に控えていた執事が


「畏れながらご主人様。

小さな子供が行き倒れていたが、親切な人に拾われたとの、噂を人間達に流してはどうでしょうか?」


「なるほど。 

特徴などは小出しにしていけば、少しの間は楽しめるか。」


「はい、ご主人様。

何年もかけ、少しづつ噂を流していけば、子供が大きくなり、下界へ降りるまでの繋ぎになるかと。」


「では早速、近くの大きな街に噂を流せ。」


「かしこまりました。」


執事はスッとその場から消えた。


男は別の場所を眺める。


「干ばつか。 

随分と干あがっている。

残してやった神は何しておる。

我の手を煩わせるな。」


とぼやきながらも、その地に雨を降らせる。


「半日も降ればよいだろう。 

降らせすぎると水害が起こる。

厄介なものだ。」


そこへコンコンとノックがある。


「入れ。」


ガチャっとドアを開けたのは、子供の担当のメイドで腕にはあの子供を抱いている。


「何故、子供を連れて来た?」


不機嫌そうな主人に、困った表情のメイドは


「この子は乳を飲みません。

お腹は空いているようですが、何を与えると良いのか、ご主人様のお力でお教え頂きたくて。」


と嘆願する。


「そうか。呪のせいで身体が変化したのか。」


男は子供に近寄り胸に手を置く。


「こいつは食事を摂れるようになっている。

しかも主に肉だな。

肉を小さくして食べさせると良い。」


「肉ですか?

歯が無いのに?」


「肉だな。

歯は小さなのが生えてきている。

野菜も食べさせろ。

こいつにはどちらも必要だ。」


驚いた表情のメイドは


「おおせのままに。」


と言うと部屋を後にした。


「あいつは色々規格外だな。

何から教えようか。

教えるのは我ではないが。」


男は楽しそうにまた下界を眺めた。








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