名前って大事だけど
オークを依頼分十体とゴブリンの右耳と更にオーク十体倒してギルドに戻った。
ギルドの受付に依頼完了報告をし、依頼料と換金を用意してもらっている間に、パーティ名を朝の用紙に書き込む。
「『不屈の蒼天』にしたよ。」
受付のお姉さんに記入した用紙を渡すサイラス。
「ふくつのそうてんと読むのかしら?」
「そう。カッコいいよね。」
ゼストがサイラスの隣から顔を出す。
「どんな意味ですか?」
「折れる事なく明るい未来を目指すって意味なの。」
リアーナもゼストの反対側のサイラスの隣から顔を出した。
「いいですね。
これでパーティを承認致しました。
ちょうどお渡しするお金も用意出来ました。」
三人は均等に分ける。
ゼストの力による討伐といえるが、これからメンバーも増えるのを見越して均等割と決めた。
翌日三人は昨日の襲ってきた六人の持ち物をギルド職員から渡される。
六人は裁判を受ける。
「それは慰謝料の代わりになります。
今回の六人は初心者冒険者を主に襲って、金品を巻き上げていたようです。
捕まってから、何人もの証言が上がってきました。
六人は持ち金を持っておらず、初心者冒険者から巻き上げた金品は換金して豪遊していたようです。」
ゼストに六人の持ち物の扱いを狐族の二人は一任した。
「これギルドに寄付するよ。
売って金にして被害者に分けてあげて。」
ゼストはギルド職員に六人の持ち物を渡す。
「分かりました。今回の件はギルドの手落ですが、有り難く受け取り、被害者に分けさせて頂きます。」
「うん。やられたらすぐにギルドに言わなかった、その人達も悪いから。
気にしなくていいんじゃない?」
そう言うゼストにリアーナは首を横に振る。
「みんながゼストのように強ければいいのだけど、私達のように冒険者といえども弱い人もいるわ。
ギルドにちくったから仕返しに、更にやられると思うと怖くて言えない人もいると分かって。」
ゼストは少し不満そうな顔をしたが
「悪かった。」
と素直に言った。
三人は討伐に出かける事にする。
ギルドを出ようとドアを開けると雨が降っていた。
「雨だね。」
「今日は休もうか。」
「そうだな。
一日ぐらい休んでもいいか。」
「んー。昼まではここにいようよ。
昼から雨止むかもしれないし。」
「リアーナやる気だね。」
サイラスに茶化され、リアーナはサイラスを両手で押す。
「それもいいな。
昼まで今後のパーティの話でもしようか。」
三人はギルドの食堂で紅茶を注文する。
「昼食もここで食べよう。」
「そうだね。食べながら話そう。」
三人はお弁当を広げた。
「俺はいずれドラゴラに行ってみたいんだ。」
「ネシリさんの拠点あるから?」
「そうそう。三人で押しかけようよ。ネシリの家に。」
「私達もいいの?」
「いいよ。ネシリの家だもん。」
「いいのかなぁ。」
「いいって。」
ゼストとリアーナが話しているとサイラスは
「ドラゴラには行くとして、俺はドアーフの国のチルスに行ってみたいんだ。」
「いいね。俺も行ってみたい。」
そうこう話が弾んでいると突然大きな人影が現れた。
「話し中失礼する。
このパーティはタンクを探してるそうだね。」
「そうそう。まずは座って。」
リアーナの隣をすすめる。
彼女は熊族の獣人で盾が得意のEランクとの事。
熊族としては小柄だが背は2Mはある。
剣も使えるそうだ。
「名はケイリーと言う。
知っていると思うが、獣人族を蔑む奴はそれなりにいて、なかなかパーティに入れないんだ。
かといって一人討伐は無理があって。
この街に来たものの途方に暮れていた。」
「分かるよ。俺達もそうだった。
獣人族ってだけで、酷い話さ。」
狐族の兄妹もしんみりする。
「ちょうどタンク欲しかったんだ。よろしくね。」
ゼストは言ってから
「リーダーが決めるんだったな。」
サイラスをすまなそうに見た。
「いやいいよ。
人間族のゼストがいいなら、俺らはありがたい。」
「そうか。良かった。
昨日募集出して次の日決まるなんて、ついてるな。」
「確かに。」
盛り上がるゼスト達に、また人影が近づく。
「弓使い、もう決まった?」
今度はダークエルフの男性だ。
椅子を隣から持って来て座ってもらう。
「まだ決まってないんだ。」
サイラスが答えた。
彼はDランクの弓使いで攻撃魔術が得意との事。
彼はエルフではなくダークエルフという事で、なかなかパーティに入れないらしい。
「名前はデニス。
ダークエルフの里のストダイから先週来たのだが、なかなか受け入れてもらえなくてね。
単独でオーク等を狩っていた。」
ケイリーもデニスも人種を問わずというパーティの募集はほとんど無いと言う。
夕方まで五人で色々話、明日の早朝門で待ち合わせ、森へ行ってみる事になった。
ケイリーとデニスもパーティに登録を済ます。