仲良し?
街外れ、人の気配がないのを確認して、ネシリは神聖帝国ドラゴラの帝都ラゴーラの神殿、最上階へ転移する。
「ちょっとっ。
いきなり転移して来ないで。
敵かと思って、殺すところだったわ。」
両手にナイフを構えたニーシャが怒っている。
「あーっ悪いね。
連絡忘れてたわ。」
悪びれもせずネシリが歩き出す。
「ねえっ。なんの用?
ここには神様しか居られないわ。」
怒り口調でニーシャはネシリを追い越す。
「えっ? フィリ天使長いないの?」
「いないわ。
聖騎士の朝の朝礼に行ったもの。」
ガッカリしたネシリを見て、少し怒りが収まるニーシャ。
「で、お城でなく神殿に悪魔族のあなたは何の用ですか?」
薄ら笑いをしながら聞く。
「エクストラポーション使い切ったんだよ。」
「あーあっ。
悪魔族は回復魔術不得意だものね。
エクストラポーションやエリクサー程の回復薬は、余程の高位な錬金術師か、私のような高位の天使族か神々しか作れないものね。」
得意げなニーシャにムカつき、デコピンをするネシリ。
「痛ぁっ。何するのよ。」
おでこを押さえながら、ネシリの脛を蹴る。
「うるさいわ。
得手不得手があるだろうに。」
「得手ねぇ。
悪魔族の得意って呪いとかじゃない。」
「回復魔術と聖魔術以外は得意よ。
逆にお前らは回復魔術と聖魔術以外からっきしダメダメ。」
「ふん。
馬鹿にするなら、これあげないわよ。」
五本のエクストラポーションを出して見せびらかす。
「悪かったよっ。」
と言うとエクストラポーションはネシリの手にあり、サッと収納バックに吸い込まれた。
「チッ。やられた。」
悔しがるニーシャに
「ありがとね。」
言いながら転移する。
「まあいいわ。
腐ってもS級冒険者やってる奴に敵わなくても。
どうせ渡すつもりだったし。」
その割には悔しそうだった。
五体の神々はその様子を眺めていた。
「仲が良いのか悪いのか。ねぇ。」
「天使族には悪魔族がエクストラポーションやエリクサーを取りに来たら、いつでもすぐに渡すように、通達があるのにね。」
「ニーシャもネシリも分かっているさ。」
「あれは戯れてるんだよ。」
「微笑ましいわね。」
「ネシリ、フィリ天使長にって言ってたけど、いつもニーシャのいる場所へ転移する。」
「そういう事だな。」
「そういう事よ。」
ネシリがいなくなって、ニーシャは五体の神々に見られていたのを感じる。
ティータイムの用意をして訪れると、生暖かい視線を向けられる。
平静を装っていたが、内心
(神々って暇なんだろ。暇だな。ご主人様に干ばつや水害を助けてもらわず、キチンと仕事しろや。)
と思っていたがおくびにも表情に出さなかった。