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冒険者になる

冒険者が多く集まる国ミボシュ。


ゼストは15歳の誕生日の翌日、村のみんなに見送られ、ネシリの転移術でこの国のワローという街へ来た。


男に拾われるまでの記憶はほとんどなく、ゼストにしては初めて街だった。


「珍しいのも分かるが、キョロキョロするな。舐められるぞ。」


ネシリに嗜められる。


屋敷の者達に用意してもらったロングソードや防具に身を固めて、見た目は一人前の冒険者に見えるゼスト。


「だって見た事ない建物や人達なんだよ。」


冒険者向けの武器や防具の店が立ち並び、携帯出来る品々等の店もズラッと並んでいる通り。


別な通りにはレストラン等の飲食店が並んでいる。


「ネシリ、いい匂いする。」


出店の串焼き店からの匂いに惹かれる。


「さっき朝食吐きそうなぐらい食べただろ。」


「だって食べ盛りだもん。」


「可愛く言ってもダメだ。

先に今夜の宿を決めて、冒険者ギルドに行ってからだ。」


冒険者ギルドと聞いて


「うん。それがあった。」


嬉しそうに頷く。


宿はネシリの常宿に行った。


「ふた部屋空いてる?」


奥から宿の主人が出て来て


「毎度ありがとうございます。

ネシリさん。

空いてますよ。」


部屋の番号の入った鍵を二つ渡される。


「取り敢えず五泊。

二人分。」


ネシリが宿代を宿の主人に渡す。


「俺、自分の分払います。」


慌てて財布用の袋からお金を出そうとするが、ネシリに止められる。


「今回は払ってやる。

次は自分で払え。」


と言われ


「ありがとう。」


笑顔をかえす。


2階の奥の二つの部屋だった。


角部屋をネシリ、その隣をゼスト。


「大きな荷物を置いたらすぐにギルドへ行って登録するぞ。」


慌てて荷物を置くと部屋からゼストが出て来た。


「そこまで急がなくても。

大きくなったと思ったが、まだまだ子供だな。」


ネシリに笑われ、ゼストは不貞腐れたように口を尖らせた。


冒険者ギルドは宿から少し歩いた所にあった。


「近いね。」


「まぁな。 

遠いと面倒だろ。」


「ネシリ、面倒臭さがりだもんね。」


「うるさいわ。」


ネシリに頭をゴリゴリされるゼストを見た、ギルドの職員や冒険者は驚き、ざわめく。


それを感じたゼストは不思議そうに周りを見てから、ネシリを見た。


ネシリは周りに冷ややかな眼差しを向けると、シーンと静まり返った。


ネシリが進む方向がサッと開ける。


何が起こってるか理解出来ず、ゼストは黙ってネシリについて行く。


カウンターに着くと


「こいつ登録してやって。」


窓口のお姉さんにネシリが言う。


「かしこまりました。

ネシリさんがお連れになったという事は、スキップするだけの能力があると考えてよろしいですか?」


「ああっ。

俺が育てたから、それなりにはなるでしょ。」


冷ややかなままネシリは答える。


空気読める子と自負しているゼストは聞かれるまで、何も話さない。


「ちょうどギルド副長がランクアップの試験を、他の方にしております。

その方の後に、ゼストさんの試験を行うのでも、よろしいですか?」


「了解した。」


「では、試験まで応接室でお待ち下さい。」


二人は応接室に案内される。


「お呼びするまで、こちらでお茶でも召し上がっていて下さい。」


受付のお姉さんはそう言うと出て行った。


お茶を飲み終わる頃


「お待たせ致しました。

どうぞこちらへ。」


試験会場は魔法を使っても余程ではないと破壊しないシールドが張られている。


筋肉質な背の高い男が、待っていた。


お互い挨拶を交わす。


「ネシリさんの教え子かぁ。

楽しみだ。剣でいいかい?

魔法は今は使わないでやるよ。」


ゼストは頷く。


三メートル程離れ、向かい合い剣を構える。


「先に仕掛けてくれていいよ。」


「では遠慮なく。」


副長は低めの体制をとる。


ゼストは一瞬で間を詰め、剣を振りかざす。


「速っ。」


剣で受けた副長は、ゼストの腹を蹴る。


それをスッと避け、体制を崩す副長を押し倒し、喉元に剣を突き立てる。


「参った。マジかぁ。無いわ。」


剣を収め、立ちあがろうとする副長に手を貸すゼスト。


「何、この子。

俺の油断もあったとはいえ、流石はネシリさんの教え子って事かぁ。」


「俺が小さい頃から教えてるんだ。

これくらいはしてもらわないとな。」


ネシリも満足げ。


「魔法もいける感じだな。

剣で充分だけど、一応見せてもらうかな。

あそこの的に向かって、得意な魔法を撃ってみて。」


言われるがままゼストは氷の矢を放つ。


ボォンっ。


大きな音がして的が壊れて霧散する。


「魔力も平均よりかなりあるね。

あの的、普通壊れないから。」


呆れた仕草をする副長。


「悪いんだけどさ。

最初はどんなに能力あってもDランクからなんだわ。

初心者だから冒険者としての経験が必要って事でね。」


「初心者でD級スタートは最高ランクってのは理解してる。


こいつならすぐにランクアップするだろうし。」


「そうだろうとは思うけど、まずは冒険者としての経験を積ませてくれ。

そうでないと何が起こるか分からない。

油断すると早死にしてしまう。」


「大丈夫だ。

子供の頃から、そうならないように、しっかり教えてる。」


「分かった。

ネシリさんに任せる。」


ゼストは二人の後を会話を聞きながら二人の後ろを歩いていた。


心の中は褒められたのとDランクスタートの喜びで、いっぱいいっぱいだった。


窓口でギルドカードをもらい、説明を受ける。


ニヤニヤしないように、顔に力を入れながら。


説明の内容はネシリから聞いていたまんまだった。




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