何故生かされたのか
「こんな事になるなら、育てないで殺しときゃよかったか。」
「それはいけません。ご主人様のご意向に反します。」
「とは言っても酷いなこれは。」
「酷いわね。」
「ここまでの魔力があるなんて、正気の時は分からなかった。」
「ご主人様は何とおっしゃっている?」
「またどちらかへお出掛けです。」
「執事なら何処へ行かれるのか把握しといてくれ。」
「それは無理でございます。」
「だよな。誰もご主人様の行動を把握なんて出来やしない。」
「俺らで殺していいかだけでも分かればなぁ。」
「私達で彼を殺すのですか? 大切にお育てしたのに。」
「仕方ないだろ。なあ。泣かないでくれ。」
荒れ狂う吹雪の中、空中に大きな結界を張り、優雅に珈琲を飲みながら、舞い踊る雪を眺めている男。
ふわふわと強風に逆らいながら、ゆっくりと移動している。
「おやっ。小さな生き物が倒れている。」
男は雪に埋もれていくそれを見ると、顔をしかめた。
「あれは強い呪がかけられてるな。」
少し考え込む仕草をしたが
「放っておくと死ぬか。」
と呟き指を鳴らす。
結界の中に入れると、指を振る。
ベットが現れ、その小さな生き物を温めのお湯でゆっくり暖め、乾かし、ベットに寝かす。
男は記憶を見る。
「これは上級魔人とハイエルフの子供か。
どちらも仲が悪いから、常に争っている。
それゆえに追われていたのか。
この呪は両親がかけたのだな。
この子供が生き残る為に。
生命力、魔力、能力を吸収する呪か。
この子の為と言えど惨いことをする。」