第11話 最強になって帰ってきました
ヒミコは意地悪そうな笑みを浮かべて腕を組む。
〈さて、英霊たちのほとんどがお前について行くことになったのう?〉
「あはは……ど、どうしてこんなことに……」
結局、最強の英霊たちを身も心も小さなその体に宿してしまうことになったロクサス。
もともと、この場所を出たいと思っていた英雄たちが多かったが、後は主に漫画家さんの力のせいである。
困惑し続けていても仕方がないので、ロクサスも現実を受け入れた。
〈ほれ、ちょうどミーナも目を覚ましたぞ? 眠っている隣でお主が色んな者と身体を重ね合わせたことも知らずにな〉
「だから、変な言い方はやめてくださいって……!」
「ううん……ロクサス……様?」
ミーナは目を覚ますと、まぶたをこする。
そして、ロクサスを見ると大慌てで立ち上がり頭を下げた。
「す、すみません! 私ったらいつの間にか眠ってしまっていたのですね!? た、大変ご迷惑をおかけいたしましたっ!」
元気そうなミーナの様子とその言葉にロクサスは安心してため息を吐いた。
マーリンに身体を乗っ取られていたとはいえ、ミーナに突然抱き着いてしまったことはどうやら気絶して覚えていないようだ。
あれは完全にセクハラだったので、ロクサスとしては誤解されてミーナに嫌われてしまうのではと肝を冷やしていた。
「大丈夫、もう少し寝ててもいいよ。ミーナも頑張って疲れてるだろうし、俺が見張りをしてるから」
「いいえ! もう大丈夫です! ミーナは幸せな夢を見れましたので、元気満タンです!」
「そ、そう? じゃあ、王国に向けて出発しようか」
「はい!」
ロクサスはミーナが寝ている間の事情を説明しながら、王国へ向かって真っすぐと伸びる馬車の轍を辿っていった。
◇◇◇
「――ギャオオオ!!」
「うわぁ!? だ、誰かっ! 英雄のどなたか助けてください!」
「――ぐぉぉぉおおお!」
「ひぃぃい!? こ、今度は滅茶苦茶デカいです! 英雄のどなたか、お願いします!」
道中に出てくる凶悪な魔獣たち。
ロクサスは様々な英雄たちを憑依してビビり散らかしながら討伐していった。
憑依についてはとりあえず、"挙手制"とした。
つまり、ロクサスが心の中でお願いして、「自分の力を使え」と言っていただいている英霊の能力を選んで憑依して使っている。
俊敏なオオカミの魔獣はミーナの持ってきていたステーキナイフで英霊の"ジャック"が一瞬のうちに喉を切り裂いて倒す。
3メートルはあろうかという筋肉ムキムキな牛の魔獣は"マーリン"の魔法で丸焼きのステーキにして食べたら意外と美味しかった。
ちなみに毎度、「魔獣さん! 食べるならロクサス様ではなくミーナを!」と言ってミーナが飛び出すのでロクサスが大慌てで憑依して魔獣を倒している。
そうして、がむしゃらに戦っていくうちに能力の扱い方も分かってきた。
――そして、
「……これはヤバい」
ロクサスは腹に大穴を空けて横たえる体長10メートル級のベヒーモスを呆然と見つめる。
英霊の一人、"レオニダス"。
20万人の軍勢にたった300人の兵隊で戦いを挑み、戦死したスパルタの王である。
武器がステーキナイフしかないロクサスだったが、憑依したレオニダスの助言はたったの一言。
〈腰を入れて殴れ〉
その結果がこれである。
ロクサスの貧弱な身体からは想像もつかないような破壊力の塊が獰猛な捕食者の腹を貫いた。
ちなみに、腰は入れられていない。
襲われた瞬間、咄嗟にミーナを左腕に抱きかかえたまま、それはもう見事なへっぴり腰でロクサスが放った正拳突きであるが、これほどの威力だったのだ。
「あ、ありがとうございます。もうダメかと思いました……ミーナなんて怖がってまた気絶しちゃいましたし……」
〈ふん、情けない拳ではあったが……まぁ、良くやった。我が力が必要な時はまた呼び出すが良い〉
レオニダスはそう言ってまたロクサスの中に戻る。
「ロクサスしゃま……すて……き」
ミーナは気絶したまま呟く。
(ミーナったらまださっき食べた魔獣のステーキの夢でも見てるのかな……)
ロクサスは再び眠りについてしまったミーナを背負った。
その後は王国が近づくにつれて魔獣も弱くなっていき、マーリンの魔法で簡単に蹴散らしながら進む。
そうしてついに――
「よ、ようやく着いた……」
「……スヤスヤ」
幸せそうに眠ったままのミーナを背負って、ロクサスは自分が追放されたクー・フーリン家がある王国『ヒストリア』に帰ってきた。
投稿が遅れ、すみませんでした!
体調も治りましたので、また明日から投稿していきます!
よろしくお願いいたします!
※追記
体調不良のため、本作はしばらく休止させていただきます。
本当にすみません、しばらくお待ちください。





