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『世界の再誕』

 ブルースフィアがサービス終了してから一年後、経営状態のよくなかった運営会社は破綻した。あっけないものでそれを残念がる人たちはもう居なかった。元『クローバー』のメンバーもほとんど全員がそれに注目をしなかった。しかしそこにはある一文が載っていた。


『我々はメタバース技術の発展のためブルースフィアのソースコードを公開します。自由に利用できるライセンスでの配布を行います。誰もが自由に使えますが、商標である『ブルースフィア』の使用は避けてください。それ以外であらゆる有料無料問わず使用する自由は我々が保証します』


 その分を一体どれだけの人間が見ただろうか。きっと誰も時代遅れの技術を気にしてなどいなかっただろう。しかし、ネットを検索するとブルースフィアのクローンソフトはそれなりに開発されており盛況ではあった。


 そのクローンソフトの一覧をアーカイブしているサイトに一つのサーバが掲載された。


「サーバ『プラネット』を公開しました。誰でも自由に参加可能です」


 それ自体は何の変哲もない有象無象の一つだったが、検索用のタグに「『クローバー』メンバー歓迎」とタグ付けされていた。


 それに気がついたのは白鐘吹雪、サッカリンの名で登録していたユーザーだ。これを何かの偶然だろうと思いながらも、希望を捨てきれずクライアントのダウンロードボタンを押していた。


 ゲージが進み、完了したところで吹雪はユーザー登録をした。HNとパスワードのみで入れる安易な設計だった。


 その空間は真っ白だった。真っ白な世界の真ん中に同じように真っ白な立方体が一つ存在し、そこから漏れる明かりと、ドアがかろうじてそれ建物であると理解させてくれた。


 そこに入ると見慣れた金髪の幼女アバターが一人だけでテーブルに座ってソリティアをプレイしていた。俺はその見慣れたはずの3Dモデルに対し、マイクをオンにして話しかけた。


「紅葉か?」


 クルリと振り向いた少女は俺に言った。


「サッカリン、久しぶりだね!」


「ああ……久しぶりだな」


 サッカリンは幼女キャラを思わず崩壊させてしまっていた。思わぬ再会、それに困惑をしながら紅葉に話しかけた。


「一人なの?」


 紅葉は明るく頷いて答えた。


「そうだよ! でももう一人じゃないけどね」


 サッカリンの方を指さしてそう言った。それに続けて笑いながら答えた。


「きっと皆見つけてくれるよ! サッカリンはちゃんと見つけてくれたじゃない、だから皆が集まるまで、二人だね!」


「そうだね……」


「でも大丈夫、きっと皆いずれは来るよ。私はそう信じてるもの」


 そう言って太陽のように笑う紅葉にサッカリンは確かな希望を感じて二人きりで皆を出迎える準備を始めたのだった。きっとそう遠くない日のために、粛々と二人は待ち続けるけれど、きっとそこには確かに希望が存在していた。

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