雪山
極寒山脈。名前の通り、一面が雪で覆われた山脈だ。アンデス山脈やアルプス山脈などを思い浮かべてもらえばそれが正解だ。いや、それよりは少しばかり勝手が違うか。
「やっぱ荒れてるなぁ、余ったお金で余分に防寒着と防寒具買ってきてよかった」
「でも顔が痛いぞ」
確かに、外界に晒されている顔面は吹雪が吹きつけて寒い通り越して痛い。見るとスラスケのまつ毛につららができていた。
「つらら……」
「寒い、魔王はどこだぁ」
「スルーかい。山脈だからこれまでのようにステージはないんだ。て言うかボス自体が不定地なんだよ。だからいきなり襲われる、なんてことがごくごく稀にあるから気をつけとかないとね」
にしても、ある程度通る道が決まっているからかこのエリアは冒険者とよく会うな。
極寒山脈は序盤の森や、非遮平原のように自由に移動できないのには危険だと言う理由もある。まぁ、実際現実の山でも自由に移動できるわけじゃないからこの設定はわりかし当然なのだが、気象設定がありえない。常に吹雪いているのだ、現実であれば晴れたりする日もあるだろうがここに入れば太陽を拝むことはできない。
「魔王が不定って、めちゃくちゃ危なくね?」
「お、早速グレイトウルフだ。確かに危ないけど、まぁ折り返し地点に入ったんだからこれくらいが妥当なところだろ? 魔王討伐もあと半分くらいだし」
のほほんと会話しながら目の前で倒されていくグレイトウルフを見つめる。
ここまでくるとやっぱり冒険者もそれなりに強い。
「連携もうまくとれてるな」
集団戦に長けたグレイトウルフを相手取る場合には前衛が横に広がってバリケードを作るイメージで牽制しつつ、後ろから魔法で攻撃すると言うのが定石と決まっている。この時に必ず意識しないといけないことは、仲間との距離感と絶対に横に回らせないことだ。そこもしっかりと意識している。
「魔法弱すぎだろ」
「おっきな声で言うんじゃないよ。人間はストックとかないしMPももってくる道具も限られてるからスラスケみたいにバコバコ打てないんだ。と言うか、あの人たちの魔法は普通にこのあたりの魔法使いの中だったらすごい方なんだぞ」
んー確かに魔法は圧倒的に弱いな。なんと言うか、スラスケの魔法を日頃から見てるとお遊びにしか見えなくなる。
スライムの性能がトンデモすぎるってのが一番の要因だけど……スラスケが1人いればあれくらい魔法一発だもんな。
「まぁだとしたら人間に負けることはないな」
「そうとも限らないのが人間なんだぞ」
冒険者がいるので戦いをできる限り避けて、高確率で魔王が出没するポイントを目指して山を登った。