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悪い子にはお灸を添えてあげましょう

「よし、吸収完了っと。スラオー次街行くんだろ?」

「行くけど、まずその前にスラスケが話せるようにならないとね。こんなふうに」


 言って、口を開いて声を出して見せる。

 興味深そうにその様子を凝視してくるスラスケ。顔が近い……!!


「……できるだろ?」

「やってみる。あ、あ、あ、うん、できるな」


 意外にあっさりクリアしてしまった。


「なんだ……できるのか。できるなら問題ないな! じゃ、お金が必要になってくるから、適当にその辺の魔物狩りながら街に向かおうか!」

「おう!!」


 それからしばらく歩きながら魔物を狩って行ったところ、街が見えてきた。巨大な壁に囲まれた立派な街だ。門のところにできた行列へと並ぶ。


「でっけ〜」

「そっか、スラスケは初めてだもんな、王都の時は外見えなかったし街の中も散策できなかったし」


 城壁を見て感嘆の声を上げるスラスケ………めちゃんこ可愛い。

 問題は身分証だけど……いや、突破すればいい話か。


「人間ってこんなの作るのかぁ」

「あんまり大きい声で話すな、怪しまれるから」

「すまん、あんまり凄かったもんだから声出しちまった」

「人間は弱いからな、冒険者であれば魔物に襲われようと対処できるが、それが一日中となると、疲労で死ぬ。それが普通の人間だったら尚更さ。魔物に森で見たビックアントですらヒト噛みで人を殺せる。それくらい弱いんだ、だからこうやって道具を作って抗おうとする」

「なるほどなぁ、人間も頭いいんだな」


 なかなか順番が回ってこないな……なんかあったのか? 


 そんなことを考えていたが杞憂だったようで、普通に回ってきた。身分証も必要なかったみたいだ。

 街に入った僕らはとりあえず宿を見つけ、それから必要なものを揃えるために街へと繰り出した。


 活気溢れる街を、いまだ南中している陽が照らす。


「すごいな! こんなにものがたくさんあるなんて!」

「あんまりはしゃぎすぎるなよー、よそ者だと思われて変な輩に絡まれるから」


 なんとなく予想はしていたが、街は僕の記憶とは異なるものになっていた。特に勝手は変わらないが、街並みそのものが少し進歩している。木造からレンガになってるくらいだが。


 はしゃいでキョロキョロするスラスケを引き連れ、とりあえず換金するために素材買取所まできた。蝶番の扉を押し広げ堂々と中に入る。


「すいません、素材の買取をお願いしたいんですが」

「ガキが冷やかしに来たのか?」


 初老の怪しげな店主の第一声がこれだ。


『こいつ、殺す』

『やめなさい』


 スラスケが手を上げようとしたので、すんででそれを止めた。カウンターを挟んでいるので相手には見えていない。

 僕も一瞬たじろいだが、ここで冷静さを失って2人して暴れたら大変なことになると思い、心を落ち着かせる。


「魔物の素材はちゃんと持っています、これだけあればある程度のお金にはなると思うんですが」


 言って宿屋の主に借りた麻袋をボンとカウンターに乗せた。


「へぇ、どこで盗んできたんだこんな危険な魔物」


 中を確認した店主が怪訝な顔でそう声を漏らす。


 素直に買い取りしろやオラ!! 

 なんていうつもりはないが……まさかここまで皮肉れた奴が店主だとは……人と話すの苦手なんだよな。

 スラスケの手に力が入るがそれをしっかりと掴んで抑える。


「盗んだわけではありませんが、買い取ってもらえないというのであれば他をあたります」


 別にこの中に入れている魔物は危険な魔物でもなんでもない。サーベルマウスと言って、ネズミに牙の生えた程度の害獣のようなものだ。確かに、僕らのような年はもいかない見た目の子供が狩るには少々危険だが。


「まぁまぁまぁ、待てや。正直に盗んだと言えば素材没収だけですませてやったんだがなぁ、そこまで強情はるってんなら、仕方ねぇか」


 店主がニヤニヤとしてそう言っている間に、店の奥から用心棒らしき戦士風の男が現れた。僕らから見ればかなりの長身で、いかにもな格好をしている。


「なるほど最初からそのつもりでしたか、汚いやり方ですね。しかも白昼堂々と」

「おいおい、そう言って盗んだことをはぐらかそうなんて、そうはいかねえぜ? 大人を甘く見んことやな。さっさとその盗品を置いていきな」

「ほう、あくまでしらを切るつもりですか。あと盗んでないと言ってますよね。そろそろ抑えるのも疲れてきたので最後に忠告します。相場の3倍の値段で買い取るか、幼気な女の子にぶっ飛ばされるか、あなたの選択肢は二つに一つです」


 ここまで言っても店主の顔色は変わらない。どうやらこのやり方に慣れているようで、それに後ろの用心棒にかなりの信頼を置いているらしい。


 ちょっとムカついたのでカマをかけてやった。


「そこの用心棒さん、ここで引いてくれればあなたには何もしませんよ。それと、あなたのそのステータスでは彼女のデコピンにすら敵わないので早く剣を納めて裏に帰りなさい。そして、僕ももう彼女を抑えるのは限界なので早めの選択を」


 10分後、スラスケが多少暴れた後、10倍の値段で叩き売ってやった。

 うん、子供を騙そうとするクズはこの世から消し去るべきだよね。うんうん。


 「でも流石にこれは………いや、大丈夫か。」

 「この人間超ムカつくな。もう一発殴っとくか?」

 「やめなさい。もう意識失っちゃってるから……」


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