ちょっと息抜き回
「魔王討伐もだんだん味気なくなってきたよな」
「まぁ……危険を犯さないに越したことはないけど……確かに味気ないと言えば味気ないな」
僕もこのストーリー自体2度目だし、確かに味気ない事というスラスケの感想もわかる。が、死んだら終わりなのだから、そうせざるおえないのも仕方ない。というか、危機があったらまず戦わないのが鉄則だ。
牛王を秒殺したあと、僕らはステージにたたずんでいた。
「死んだら終わりだから慎重になるのもわかるけどさ」
「てか、スライム自体が強すぎるんだよ、状態異常ほぼ無効、MPもHPもほぼ無限、これだけでもう勝てるやつ限られてくるし、いや、負けイコール死だからそうじゃないと困るんだけど」
「つまんねえ!! なんか面白いことないのかよー」
面白いこと……スラスケにさせたいことはいろいろあるけど……どうしよう。いや、させたいことってそんな邪な物じゃないけどさ。一応勘違いされないように……って何自分で説明してんだろ。
「僕としてはまずその体に慣れてもらいたいね。まだ完全に自分の意思で動かせるようになったわけじゃないだろ? 今どれくらい自分の意思で動かせる?」
「うーん、どれくらいって言われても、基準がわからんことにはなんとも」
「確かに……うーん、見た感じ表情を作るのはまだうまくできてないようだから、まずはそこから、って思ったけど。うーん。どうやって教えればいいのかわかんないな」
美少女ながらも、仏頂面のスラスケが首を傾げる。どうやらこう言った簡単な仕草はデフォルトでできるらしい。
「表情?」
「そ、例えば、これが主に喜びを表す表情ね」
わかりやすいように大袈裟に顔を微笑ませる。ちゃんと伝わってるかは自分でもわからないけど……鏡もないし。
「うんうん」
「で、これが困ったの表情」
次は次はと一通りの感情を表す表情を見せたあと、スラスケの表情筋トレーニングに入る。
「じゃあ、まずは喜びの表情、笑顔からしてみようか、じゃあ、1人でやってみて」
「おう……こう? か?」
スラスケが頑張って表情を作ろうとする。その仏頂面が、少しだけ微笑んだ。
やべ、かわうぃうぃ……待って、かわうぃうぃ……本当にカワウィウィ。
その劣情を顔に出さないように抑えつつ、練習を続ける。
「いい感じ! まだちょっと表情は硬いけど、そんな感じでだんだん慣れていくといいよ」
待って、今思えば表情よりも体を動かせるようになるべきじゃ……いや、可愛いからよしとしよう。僕がそんな敵に合わないようにすればいいだけだしね。20年の月日が経ったが、なぜかこの世界の地図と魔物分布図が頭に入っているのでそこは問題ない!
(ここ、一応ボスのステージなんですけどね。そこに2人で佇んで、側から見ればカップルのようにイチャコラする命知らずが、この2人以外にいるだろうか………? まぁそんなことは置いておいて、続きをみましょう。)
「人間って不思議な生き物だよな、コロコロその表情? って言うのか? が変わって、まさにスラオみたいに。なんでスラオはそんなに自然に動かせるんだ?」
確かに、骨格も、筋肉もないスライムからしたら、そう感じるんだろうな。
なんで動かせるかって聞かれても……引きこもってた僕は結構表情作るの下手な方なんだけど?
「わかんないけど、感覚?」
「なんだぁ? 天才アピールかぁ?」
「違うよ! スラスケも1週間くらいすればだんだんと表情も作れるようになるさ、それができるようになったら、次は体だね」
………いや。別に変な意味じゃありませんよ?
………………変な意味じゃ。