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 「だんだんレベルも上がんなくなってきたな〜」


「そうね、そろそろボスに行ってもいい頃じゃないかしら?」


「な、おいおい、みろよ、あそこに裸のガキがいるぞ」


 それは、非遮平原でレベルを上げていた悪人面の冒険者パーティーだった。3人組だ。その視線の先には、一糸纏わぬ姿の2人の少年少女。


「おい、女の方はいい感じじゃねえか、俺はあの体型すんげえタイプだぜ」


「珍しく気が合ったな、俺もそう考えていたところだ」


「いい感じに声かけて、保護してやるフリをして、ヤるか」


 2人の男達の不穏な会話を聞いても止めようとはしない魔法使いの女。


 これが後に、『非遮平原のアダムとイヴ』として、伝説的に冒険者の間で語り継がれる事になるとは、この時、誰も思っていなかった。






「ちょうどいいのがいたね、害意がビンビン伝わってくる。あいつらなら僕も殺せるな」

「害意? ん? まあ、よくわかんねえが、やればいいんだろ?」

「装備品が傷つかないように頼む」


 スラスケの顔の前に、小さめの水球が現れ、それを両手で包み込むようにして圧縮していく。

 人間の体にも慣れたようで、今ではしっかりとした足取りで歩いているが、まだ細かい操作は難しいようで、特に表情は硬いままだ。

 これはあとで教えてあげないとな。


 スラスケの手の中から超高圧の水鉄砲が発射された。それは一直線に、3人めがけ飛んでいく。


「あれ? 1人は水魔法耐性があるやつみたいだ。仕方ない。僕がいこう」


 そう言って地面を蹴ると、有無を言わさず、水魔法から逃れた冒険者の首を掻っ切った。


「うん、やっぱり害意を持った人間なら気兼ねなくやれるな……いや、ちょっとだけまだやっぱり思うところはあるけど……」

「スラオー、なんでこいつ俺の魔法効かなかったんだ?」

「人間がつけてる装備には特殊効果がついてるものがあるんだよ、多分水魔法無効の装備をしてたんだろうね」


 人間はステータスが低い分装備には様々な効果が付与されている。確か、非遮平原に来るレベルの冒険者になると、属性無効の装備の一つくらいはつけていた。それが今回たまたま水属性だったんだろうと思う。


「へぇ、人間って便利だな」

「僕たち魔物に比べればステータスが圧倒的に劣るからね〜そのうち魔法がほとんど効かない奴なんかも出てくるよ……と、その前に!! 服を!!」

「うわ、いきなりなんだ、何赤くなってんだよ?」


 仕方ないだろー!? こんな美少女が素っ裸で隣にいるんだから!! 僕まだ高校生ですよ!?


 冒険者が身に付けていた防具と服を急いではぎとり、スラスケには女がつけていた魔法使い装備を着せた。


「これが服をきるって感覚なのか」


 興味深そうに自分の体をまさぐっている。


「どうだ? なんか守られてる感じするだろ? あったかいだろ?」

「確かにあったかいけどよ、動きにくいし、いちいち着るのめんどくせえな」

「そう言わずに………」


 めちゃくちゃ似合ってるなぁ。それより装備の確認をしといたほうがいい。

 水無効に、粘液耐性か、もしかしたら、次の魔王の、ガマ王を倒そうとしてたのかもな。武器も一応貰っておこうか。

 こちらは普通の武器みたいだ。


「なんかMPの最大が増えたぞ? かなり」

「多分どれかの装備に最大MP増加の効果があるんだろ? んじゃ、とりあえず次の魔王でも倒しに行こうか」

「だな!」


 しばらく歩き、見えてきたのは巨大な牛を模した魔物。二足歩行で、手には棍棒を持っている。ミノタウロスといえば想像に難くない。

 ガマ王は遠かったのでこちらにきた。


「あれが次の魔王、牛王だ。まぁ、特に何かしてくるわけでもないし、気にせずいつも通り戦えば勝てる!」

「この格好のままやるのか?」

「戦闘は多分こっちに慣れといたほうがいいからね、特に非遮平原を超えた後のためにも」

「そうかーわかった」


 ステータスばかり気にして忘れていたけど、冒険者のいくどは魔王よりステータス低いまま挑んでるんだよなぁ。

 経験も知識もある僕が、ステータスが劣っているからと言って負けるわけがないと言うことを、先ほど思い出しました……いやぁ、すっかり忘れてた。ダメージ喰らうことを極端に避けすぎてたのも一つの原因だけど。

 正直ダメージ食らってもほぼ無限に回復できるんだから余裕だよな。


 ちょうど他の冒険者がいなかったのでステージに入った。擬人化を果たしたからもう他の冒険者を気にする必要もなくなったけど、癖でやっぱり避けてしまう。


 ステージに威厳漂う風貌でたたずんでいた牛王が口を開いた。


「随分と舐められたものだのう。2人で我に挑もうなど、死ににきたようなものだと言うことをわからせてやろう」

「そんな大口叩けるのも今のうちだよ。さぁ、スラスケ!! やってしまえ!!」

「スライムの力を見せてやるよ!!」


 今は人間っていう設定……なんだけどなぁ……。あとで教えとかないと。

 街でボロ出して冒険者に追われるなんてたまったもんじゃない!!


 大口を叩いていた牛王だったが、スラスケの魔法で、あっという間に見るも無残な姿に。

 おそらく風魔法を使ったんだろう。両手両足を切断され、地面に平伏している。


「で、何をわからせるって?」

「………殺せ………!!」


 苦肉の表情だ。僕も流石に残虐趣味はないのでスラスケにとどめをささせた。


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