弱みを握られたみたいだ。
第2の魔王討伐を終えた2匹は、ボスステージにたたずんでいた。
「スラスケ、魔王全部吸収していいよ」
「お、サンキュー!」
スラスケが走って…いや、なんて言えばいいんだろう…急いで? 蛾王だったものに近づいて吸収し始めた。
「スラスケってさ、なんだかんだいいやつだよな」
「なんだよいきなり」
「命の危機の時に自分を置いて逃げろだなんて普通言えないぞ?」
ドラマでカップルの男の方が怪我で動けなくなって自分を置いて逃げろって言うのは見たことあるけど、現実でそんなの見たことないしな……
「そうか? まぁ、お前がいるからなんとかなるだろうとは思ってたけどな!」
「相変わらず楽観的だな…」
そう言うところがいいんだけどね。
「じゃあ、吸収し終わったことだし、次はどうするんだ?」
この森にいる魔王は三体。今二体目を倒したが、もし次に行くならレベルを上げないといけない。三体目の魔王は他二体とは格が違う。しかし、今の僕たちのステータスでも勝てないことはない。スラスケの魔法もあるし、僕の冒険者時代に培った経験と知恵もある。
「レベル上げる? 三体目の魔王を倒すのもいいけど、僕たちよりステータス高いんだよなー、勝てないことはないんだしそれでも大丈夫なんだけど」
別にどの順番で倒そうと自分たちの自由だったがある程度は順番指定されてた。いや、指定されてたと言うより思い込んでた感じか。普通、同じエリアのボスから倒していくのが常識なのでほとんどの冒険者が三体目には僕らが次に倒そうとしている魔王を倒そうとするのだが、大体最初は全員しぬ。二体目までと同じテンションで行けば尚更。
なんで序盤の森なのにそんなに全員死ぬほど強いのかって思うじゃん? 蛾王のように、スキル対策対策しないと話にならないとか、猪王みたいにスキル対策してパーティもちゃんと整えれば勝てるとかそんな類のものではない。ただ単純にステータスが高すぎるのだ。なぜか非遮平原の平均的な魔物の強さよりもだいぶ高く設定されていて、先に非遮平原でレベルを上げないと勝てないと言うふうにされていた。
この件に関してもかなりクレームが集まっていたようだ。「序盤の森の序盤の意味は知ってるか? あんなもん序盤におくな!!」 だとか、「ふざけるな」だとか…まぁ、案の定、それに対し運営はシカト。この謎の答えは僕も知らない。もしかしたら、何かの伏線かもしれない、ネタバレの恐れがあるから運営も答えないんだ。っていう意見もあったけど多分違う。
そう言えば、初回プレイで一度も死なずにクリアできたら称号もらえるみたいなのがあったな。運営の策略で僕も三体目で死んだからもらえなかったけど…おそらくそれを阻止するための策だったんだな。
「じゃあいくか!」
「さっき死にかけたばっかなのによくそんなやる気になれるよなぁ」
「何かあったらまたスラスケが助けてくれるんだろ? なんだったけ? 僕が君を守る…? だろ?」
……冷静になった今……それを言われると猛烈に恥ずかしい…!!
「あの時行言ったことはもう忘れてくれよ…恥ずかしいから…」
結果として、僕たちの距離は縮まったが、弱みを握られてしまった。