退屈な旅路
騒ぎが少し静まった頃、僕は作戦を開始した。
触手を胃カメラのように細くして、被せてある布の間から外の様子を確認する。余談ではあるが、僕は中学生にして胃カメラをされたことがある。マジで辛い。口から突っ込まれたのだが、管が喉にあたり何度も嗚咽した。まぁ、そんなことは置いといて、
「見張りはいるが冒険者はほとんど寝てるみたいだ」
「どうやって回収するんだ?」
「触手から一旦吸収して本体の方で出す」
正直スライムから出たものを食いたいとは思わないだろう。スラスケが出したところを見れば人間ならばまず食べたいとは思わない。
少し周りを確認すると見張りは全員荷車を背にして森の方を見張っている。冒険者が寝ている近くに残った肉を見つけた。あれでいいか?
「肉あったよ」
「ありがとうございます!」
早速触手を伸ばして拳大の肉を覆う。行けるかな…吸収は成功した。あとはそれを出すだけだけど、中から吐き出す感じ…か。あ、できた。苦しくない嘔吐みたいだな。
初めて肉を回収することに成功した。
「ありがとうございます!」
出したものを嬉しそうに食べ始めた。本当に食えるのか…まぁ、犬だもんな…
そうして何も起きぬまま無事に朝を迎え、荷車は再びガタガタと動き出した。
「退屈だなー」
「今日も含めてあと4日で着くから我慢だ。」
昨日の夜荷物を確認してみたが、どうやらこれは王様に献上する品物らしい。綺麗に装飾された皿や、杯、宝石などが乗せられていた。
「退屈だ」
「だなー。ゲームでもするか?」
「ゲームってなんだ?」
魔物にゲームの概念は無いのかな?
「ゲームは、遊びだな」
「ふーん、何するんだ?」
「『しりとり』?かな」
「なんだそれ?」
「言葉を繋げて遊ぶゲームだ。例えば僕がスラスケって言ったら次の人がケから始まる言葉を言うんだよ」
「面白そうですね!」
「そうか? まぁ、暇だしやろうぜその『しりとり』ってやつ」
「じゃあ、スラスケからね、その次リズ、そして最後に僕でまた同じ周り。りから初めて」
「おう! り…わかんねぇ」
一発目から!? いやまぁ、バカなスラスケには不利なゲームだったかも。
「仕方ないから違うゲームしようか…」
「はは…」
「なんか俺バカにされてないか?」
何を言うんだ。正真正銘のバカだろ。
「安心しろ。お前はバカだ。」
「だよな!」
…やっぱり褒め言葉なのか…? あっ、スライムならではいいゲーム思いついた
「スライムならではのいいゲーム思いついたんだけど」
「なんだ?」
「リズがお題を出して僕らがそれを作る。そしてどっちがそれに1番近いか競うゲーム。どう? 面白そうじゃない?」
「確かに面白そうだな」
「面白そうですね!」
意外にも好評みたいだ。
「じゃあ、早速お題出して」
「えー、とじゃあ、『骨』でお願いします!」
骨…? 犬がくわえるようなやつでいいのか?
「できたぞ!」
はやっ!? まだ10秒もたってないだろ!? そう思いながらスラスケの方を向くと、目の前に本物の骨が置かれてあった。
「いや、お前、それは反則だろーー」
「スラスケさん! 凄いです!! これ貰ってもいいですか!?」
「おう! 俺の勝ちだな」
「はい!」
え、なんか思ってたのと違うんだけど…最初からこれ目的だったのでは…?
その後も色々とゲームをしたり話したりしながら無事4日間を乗り切り、王都の中へ入る事が出来た。