宰相の令息は肩車される
ふい―書けた。
俺は図書室でいろいろ思索にふけっていたわけだが・・・・
「よお!秀才ぼうず!」
ワイルドな声と共に背中をバシーンと叩かれた。ケホケホとせき込みながら見上げると山賊の様なヒゲ面の容姿の同級生(18歳珍獣もじゃ♂・・・・いや・・・もじゃもじゃのおっさんにしかみえん・・・あえて珍獣もじゃオスと表記しておこう・・・)のドゥカスが立っていた。
「もじゃさんと違ってボクは繊細なのでバンバン叩かないでください・・・」
俺はうんざりした顔で答えた。
「ガハハハよく食べて運動してたら、問題ないぞ!」
でかい声だ脳筋め・・・脳筋のこの男は、兵卒出身で才能を見出されて大学に来たという。そしてやたらと俺にかまってくる・・・たしかゲーム内でもいたなあ戦闘力バカで・・・
「あの・・・ボクにかまっても何も出ませんよ・・・」
「こんないい天気に、ムッツリ読書じゃモヤシになっちまうぜ!」
「モヤシでいいですから、そっとしておいてもらえませんか・・・」
「いや秀才ぼうず!今日は買い物に行く約束してただろ?」
「もじゃさんが勝手に・・・わっ!」
ドゥカスは俺をひょいっとかかえて肩の上に乗せ、そのまま強制的に図書室から連れ出されてしまった・・・周りの目が痛い・・・かなり恥ずかしい。
大学を出て王都の南地区にある商店街をドゥカスの肩に乗って移動する。親子にしか見えないのか通りすがる人々が微笑ましい表情で歩いていく。
「・・・・おろしてよ・・・・」
俺は恥ずかしいのでドゥカスに訴える。
「ぼうず!照れ隠しか!遠慮すんな!」
ドゥカスは二カッと笑いながら降ろしてくれない・・・アホかこいつと俺は心の中で悪態をつく。どうにもこうにも降ろしてくれないが、魔道具を扱う露天商の並べられた商品に気になるものを見つけた。
「もじゃさん降ろして・・・そこの露店に興味がわきました。」
「お!そうか。」
ドゥカスは、俺を肩から降ろしてくれたので俺は、その商品を手に取ってみた。その商品の見た目は、ただのモノクル(片目がね)なのだが、不思議な感覚を感じた。
並べられた商品の前に腰かけていた露天商の老婆が俺のほうを見上げて言った。
「お客さん、お目が高いね・・・これは魔力のこもった眼鏡だよ。」
「どんな効果なのですか?」
俺は、モノクルを手の取りながら老婆にたずねた。
「そうさねえ・・・・見えないものを見えるようにするとか・・・そういった効果があるそうだよ。」
「気に入りました。いくらですか?」
「金貨5枚だね・・・」
金貨5枚って・・・・ぼったくりか!思わずツッコミそうになった。それもそのはず金貨5枚って確か生前の貨幣価値で50万円くらいじゃなかったっけ?・・・いやいやいやぼり過ぎでしょう・・・ただ宰相の令息たる俺は毎月金貨3枚ずつお小遣いで貰っていたのだが、贅沢したいとか、無駄遣いしたいとかの感覚が前世の記憶が戻る前からあんまり無かったので100枚ほど銀行に貯金していたりするので余裕が無いわけじゃない。ただ今買わないともう手に入らないような気がした。
「買います・・・」
俺は老婆に金貨5枚を渡した。
「おいおい!無駄遣いだぞ!」
ドゥカスは、そう冷やかしてきたが無視して、そのモノクルをかけてみた。露店の鏡でかけた姿を眺めつつ、いつも被っている黒いベレー帽を鞄から出して被ってみた。
ショタ顔にベレーとモノクル・・・似合う似合わないじゃなくて前世の俺と違って・・・うん、かわいい・・・・前世の俺だったら・・・たぶんデブにベレー帽とモノクル・・・・変態にしか見えないな。たぶん、お巡りさんこちらですと通報される事案なんだが・・・・・ドゥカスもなんか俺の顔をみて赤い顔をしている気がするんだが・・・見なかったことにしておこう。
予期せぬ外出だったけど、思わぬ掘り出しものを手に入れることができてホクホク顔で、来た時と同様にドゥカスの肩の上にのって寮に帰ることにした。夕日が首都の街並みを照らし爽やかな風が吹いて心地よかった。
ごついおじさんは・・・