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ボールと額と新たな予感?

クラスマッチの開始からです。

ジャンプボールをするために、コート中央に向かった俺は先にいた1年生に目を向ける。試合前に真尋と話していたところから、この小っちゃいのが春樹とかいうやつなんだろう。思いのほか小さい。今からやるジャンプボールは普通高いほうが有利なのだが大丈夫なのだろうか。


そんなことを考えていると、バスケ部員がボールを構えた。優斗も跳ぶ準備に入る。その時、春樹が声をかけてきた。


「僕、負ける気はないんで。」


ハンデがあると燃えるタイプなのだろうか。相手が年下で身長差があったとしても手を抜くつもりは毛頭ない。


「生憎、俺も負けず嫌いなんでね。負けるつもりはないよ。」


そう言うと春樹は一瞬驚いた顔をしたがすぐにニヤリと笑った。


「どちらが手に入れるか勝負です!」


その言葉とほぼ同時にボールが上がった。急いで跳ぶが、春樹のほうが少し早く跳んだ。少しの差なら身長差で勝てるはずだった。


(こいつ、斜めに…!)


春樹が斜めに跳んだために、優斗の頭の上に春樹の手がある。体を反らし、当たらないようにするが、反らした距離だけ最高打点が低くなる。その分先に跳んだ春樹がボールに触れる。が、思いのほか身長差があったのかボールに触れることができた。ボールを自陣のコート側に弾く。


「しゃっ!」


軽くガッツポーズをとる。


「絶対負けませんから。」


お互いのコートに戻る際、春樹にそう言われた。確かにまだボールをとっただけで試合はしていない。それにしても負けず嫌いな子だ。そんなにクラスマッチが楽しみだったのだろうか。分からない。だけれど、そこまで敵対されると張り合いたくなる。クラスメイトに持っていたボールを渡してもらう。


審判の笛で試合が始まった。ドッジボールは1試合15分で行われる。15分が経過しなくても内野にいる人がいなくなれば試合は終了となる。男女混合のため、柔らかいボールを使用しているが暗黙の了解的に男子は男子、女子は女子を狙うようになっている。


とりあえず春樹に向かって投げた。が、しっかりととられてしまった。


「行きますよ!」


今度はこちらの番と言わんばかりに思い切り優斗へと投げてきた。バチッと大きな音を立てながらもキャッチする。いくら柔らかめのボールを使用していると言えど、速いスピードで当たれば痛い。痛む右手を振る。どうやら身体能力は高いようだ。


とりあえず、自分の投げたボールが取られてしまうということは分かった。


(取られるなら、取りにくい所に投げてみるか…)


優斗は春樹の足元を狙って投げた。勢いよく投げ出されたボールは横に弧を描きながら狙った箇所へと落ちていった。が、当然の如く避けられた。


その後も投げては投げ返されを繰り返し、残り時間も半分を切った。優斗側6人、春樹側3人となっていた。

春樹はこの不利な状況を打開しようと作戦を考える。


(何としてでも優斗先輩の上をいかなければ…)


試合も終盤になれば女子を狙わざるを得なくなる。優斗側に女子があと1人いるが、春樹側には女子がいなくなっていた。とりあえず優しく投げて、女子を当てにかかる。もちろん、足元を狙いつつ。しかし、これが仇となった。横から優斗が割り込み、ボールをキャッチした。

その瞬間、春樹にある案が閃いた。


(出来るかどうか分からない。でも、信じるしかない…!)


春樹は投げられてきたボールに飛びつく。尻もちをつきながらも何とかボールを捕ることができた。立ち上がり、ビシッと優斗を指差す。左足を踏み出し、思い切り振りかぶって投げた。


優斗は指差されてから、ボールを取ることができるよう身構えていた。が、春樹が放ったボールは優斗から大きく逸れた場所へと向かっていく。


(あいつ、何処狙って…)


ボールの行先はコート左隅にいる一人残っていた女子、姫川ひめかわ羽夢うゆだった。勢いよく投げ出されたボールはスピードを保ったまま進んでいく。このまま当たれば間違いなく痛いだろう。


「屈んで!」


優斗はボールに向かって走り出しながら、姫川に避けるよう指示する。今から屈んでも当たらないという保証はない。残り半歩ほどでボールに手が届く所まで到達し、優斗はボールに向かって左手を思い切り伸ばした。

バチっという手とボールがぶつかる音とは別に硬いもの同士がぶつかった様な鈍い音が響いた。驚いて振り向くと、そこには土下座の格好で額を床に打ち付けた、姫川の姿があった。

優斗はなんとかキャッチできていたボールを放り、姫川に駆け寄る。それに合わせて止まっていた時が動き出したように、真尋を含めた数人も駆け寄った。


「えっと…大丈夫?」


優斗が優しく声をかける。

姫川が顔を上げた。強く打ちすぎたのか、額が少し赤い。そして頬も赤く染まり、目は潤んでいる。しかし、その目はしっかりと優斗を捕らえていることに真尋は気がついた。


(えっ…もしかしなくてもこれって…)


真尋は頭の中に浮かんだ答えを振り払うように頭を振った。

お読み頂きありがとうございます。

とても間が空いてしまいましたね。これからは定期的に更新できるよう頑張ります。

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