後輩と私と帰り道
今日は春樹君と初めて一緒に帰る日だ。教室で帰り支度を整えていると、教室の外から元気な声が聞こえてきた。
「真尋先輩、一緒に帰りましょー!」
帰り支度を済ませ、教室の前にいる春樹君のもとへ行く。
「お待たせ。帰ろっか。」
春樹君と一緒に下校をしながら、春樹君に生徒会に入ったことと一緒に帰ることができない日ができることを伝える。
「生徒会に入られたんですね。一緒に帰ることができない日が突然あると困るので、連絡先を聞いてもいいですか?」
「いいよ。」
私はそう言って自分のスマホを取り出し、春樹君と連絡先の交換をした。嬉しそうにしている春樹君を見て、子犬のような可愛さを覚える。
「わわっ!やめてくださいよ。」
春樹君の声で無意識に頭を撫でていたことに気が付く。身長が私より高い優斗では可愛くても頭に触れることは難しいが、私と同じくらいの身長の春樹君なら手が届くので無意識に触っていた。春樹君の髪は驚くほどサラサラだった。
「ごめん。可愛くて、つい…。」
春樹君に謝る。が、手は止めずに撫で続ける。あまりにも気持ちいい。どんな手入れをしたらこんなにもサラサラになるのだろうか。私が撫で続けていると、春樹君に撫でている手首をつかまれた。
「お、男に可愛いは禁句ですからね…。許しませんよ…。」
照れながらそう言う春樹君に少しキュンとしてしまった。頭を軽く振り、気持ちを切り替える。
「ごめんってば。ほら、飴ちゃんあげるから。」
カバンから飴を取り出し、春樹君に渡す。春樹君は飴を受け取るとひょいと口に放り込んだ。
「飴で許されると思ったら間違いですからね。」
口の中で飴を転がしながら機嫌を良くしている春樹君に説得力はないのだけれど…。そんな風に楽しくお喋りしていると春樹君と別れる交差点までやってきた。
「じゃあ、私こっちだから。」
そう言って私が歩き始めると、春樹君に呼び止められた。
「待ってください。ちょっとお願いがあるんですけど…。」
「いやだ。」
「まだ何も言ってないんですけど!」
春樹君を見ているとからかいたくなるのは何故だろう。弟ができたらこんな感じなのかな。
「それで、お願いって?」
「クラスマッチのお仕事終わってからでもいいので一緒に出掛けませんか。」
「じゃあ、クラスマッチ終わった週の土曜日でどう?」
私がそう言うと、春樹君がガッツポーズをする勢いで喜んだ。
「いいんですか!言質とりましたからね。絶対ですよ。」
「うん。それじゃあ、また明日。」
私が帰り始めると、春樹君がブンブンと大きく手を振って見送ってくれた。しばらく行って振り返るとまだ手を振っていた。少し可愛いかもしれない。そう思いながら私は家に帰った。
それからは放課後に生徒会の仕事をし、生徒会の仕事が無い時は春樹君と一緒に帰る日々が続いた。
そしてクラスマッチ当日。
「以上で、クラスマッチ開会式を終わります。体育館競技以外の人は会場に移動してください。」
副会長の桜庭先輩のことばで開会式が終わった。運動場でやる競技の生徒たちが移動を始める。私と優斗、桜庭先輩、天宮先輩は体育館でドッジボールなので移動の必要はない。弥生学園のクラスマッチは、体育館で行うドッジボール、専用競技場で行うサッカー、ハンドボールの3種類がある。生徒会はメンバーを3等分してそれぞれ担当することになっている。私たちがするのは主に進行と得点計算し順位を出すことだ。審判はバスケ部のほうにお願いしてある。
私が進行のための準備をしていると優斗がやってきた。
「俺1試合目だから、進行とかお願いね。」
「うん。わかった。」
「1試合目は1年3組と2年2組です。準備をお願いします。」
私が声をかけるとぞろぞろと生徒が準備を始める。その中に春樹君を見つけた。春樹君も私に気が付いたのか、駆け足でこちらに来た。
「真尋先輩もドッジボールだったんですね。かっこいいところ見せるんで見ていてくださいね。」
そう言ってクラスのところに戻った。
両クラスの準備が整ったのを確認し、審判のバスケ部の人に始めてもらう。
ジャンプボールで始めるので中央に各クラス1人ずつ出てきてもらう。1年3組からは春樹君が、2年2組からは優斗が出てきた。私とあまり変わらない身長の春樹君では身長差がかなりあるが大丈夫だろうか。
そして試合が始まった。
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