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幼馴染と私と卵焼き

私はお弁当を持って急いで教室を出た。と言っても、目指す場所は隣のクラスなので時間は全くかからない。勢いよくドアを開け、幼馴染の五十嵐いがらし優斗ゆうとのもとへ行く。

優斗は幼馴染で、私の大好きな人。顔立ちは幼くて、笑った時の顔がめちゃくちゃ可愛い!それだけじゃなく、誰にでも優しいし、運動神経もいい。頭はちょっと悪いのだけど、それもまた可愛い!


「遅れてごめん、お弁当渡すの忘れてた!」


謝りながら優斗にお弁当を渡す。優斗は私が勢いよく入ってきたことにビックリして驚いていたが、すぐに笑顔になった。


「大丈夫だよ。まだ昼休み15分あるし、購買でパンも買ってるから。」


「そっか。ならよかった。」


優斗の笑顔で顔が綻びそうになるのを我慢し、平静を装う。


「お弁当はいつも通り帰る時に返してくれたんでいいから。じゃあ、放課後ね。」


そう言って私は優斗の教室を後にした。



教室に戻ると、亜紀がニヤニヤしながらこっちを見ていた。


「彼氏にお弁当は渡せた?」


「だから、彼氏じゃないってば。」


「わかってるって。でもさ、なんで毎日お弁当作ってんの?」


私が優斗にお弁当を作る理由は、優斗の親に提案されたからだ。なんでも小さい時、私が優斗のお嫁さんになると宣言したらしい。

学園に入学する前にそのことを聞かされ、今も気持ちが変わっていなければお弁当を作らないかと言われた。私は小さい頃から優斗を好きだという気持ちは変わっていない。だから引き受け、毎日お弁当を作っている。

そのことを亜紀に話すと、「一途だねぇ」と茶化された。


「でもなんでお弁当?」


「それは優斗のお母さんが掴むのは胃袋からでしょって。だから基本的に味付けとかは優斗好みにしてある。」


「じゃあ、五十嵐君の親は応援してくれているんだ。で、肝心の五十嵐君の反応は?」


「美味しいって言ってくれてるよ。多分、好みの味付けにしてるのは気付いてないと思う。良くも悪くも鈍感だからね。」


そう。優斗は鈍感なのだ。中学生の時に一度だけ、それとなく好意を伝えてみた。結果は全くダメ。

確かに私の伝え方もあまり良くなかったのかもしれない。それでも、私にとっては勇気を振り絞って伝えたことだったから反応が「俺も感謝している。これからも友達でいよう。」だなんて心が折れた。

私は優斗にとって幼馴染でしかない。そのことに気付いた私は優斗と恋人関係になるということは諦めた。ただ、優斗の幼馴染としてずっと隣にいることにした。別に付き合ったからと言って今の関係から変わることはないと思うから…。


「そうじゃない…。」


亜紀の声で物思いにふけっていたことに気が付く。


「ごめん、聞いてなかった。どうした?」


「ううん、何でもない。」


私が不思議がっていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。仕方なく私は自分の席に戻り、次の授業の準備をした。5限と6限はすぐに時間が過ぎ、放課後となった。私が帰る支度をしていると、優斗がやってきた。


「これ、お弁当。美味しかったよ。」


優斗からお弁当を受け取り、二人で教室を出た。

下校途中、告白されたことを優斗に話す。


「そうなんだ。よかったじゃん。」


私は軽く返答が返ってきたことにうなだれる。幼馴染の関係で嫉妬してほしいというのは我儘なのかもしれないけれど。


「で、返事はどうするの?」


「とりあえず保留にしてる。どういう人なのか分かった上で返事することになると思う。」


「そっか…。」


優斗は何か考え込んでいる。数十秒後、優斗はとんでもないことを口にした。


「じゃあ、明日からその子と一緒に帰ったら?」


「はい?」


あまりに唐突なことだったので素っ頓狂な声を上げた。


「ちょっと待って。どういうこと?」


「いや、どういう人なんか分かってから返事するならいっぱい関わったほうがいいでしょ?」


優斗はいい案でしょ?という感じでぐっと親指をあげた。いやいや、私の癒しの時間を無くすとかあり得ない。それに春樹君に出す答えは決まっている。もちろんお断りさせていただく。私は優斗と一緒にいたいのだ。


「俺は真尋に幸せになってほしい。今まで俺が彼氏だと思われてたせいで出会いがなかっただろうから…。だから、俺は応援しているよ。頑張って!それじゃ、また明日学校で。」


「う、うん。また明日。」


優斗の申し訳なさそうな言葉に戸惑いつつも返事を返し、私も家に帰った。

自分の部屋に入って今日の出来事を振り返る。よく考えてみれば色んな事があった気がする。春樹君に告白されたり、私と優斗が付き合ってると思われてたり、それと優斗の気持ちを聞けた。

私のことを思ってくれているのはとても嬉しかった。でも、私と春樹君が付き合うことが確定しているかのように話を進めていたことに対し徐々に腹が立ってくる。


私はしばらくの間お弁当に入れている優斗の好きな甘い卵焼きを甘くしないことに決めた。

お読み頂きありがとうございます。

第3話から物語が本格的に動き始める予定です。

それに合わせてもしかすると更新頻度が遅くなるかもしれませんが、2日から3日ペースで更新できればと思っております。

よろしくお願いします。

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