親友と後輩と私
「真尋さん、あなたのことが好きです!僕とお付き合いしてください!」
祖父が理事長をしている弥生学園高等学校に入学して2年目の春、私こと水無月真尋は生まれて初めて異性から告白を受けました。
遡ること数分前、お昼ご飯を食べようとしていると教室の外からクラスの女子に呼ばれた。
「水無月さん、なんか昼休み屋上に来て欲しいですって男子が言ってたよ。」
「そうなんだ。ありがとう。」
教えてくれた生徒にお礼を言う。自分の席に戻り、お昼ご飯を一緒に食べる予定だった親友の立花亜紀に声をかける。
「亜紀、ごめん。なんか誰かに呼ばれたみたい。先にご飯食べてて。」
そう告げて私は屋上へと向かい、今に至る。
「え…えぇと。お気持ちは大変嬉しいのですが、ごめんなさい。」
初めての告白に戸惑いつつも、言葉を絞り出す。
告白してきた男子生徒をちらと見る。慎重に言葉を選んだつもりではいるが、傷つけてしまっただろう。
俯いていた男子生徒が不意に顔を上げた。
「振られた理由を聞いてもいいですか?」
「そうですね…。まず私はあなたの名前も知りませんし、どういう人なのかも知りません。そんな状況で付き合ってと言われても戸惑いしかないです。」
思ったことを率直に口にする。
男子生徒は顔を曇らせたのち、明るい顔をした。
「1年3組、藤井春樹です!つまり、仲良くなってからなら告白を受けてくれるということですね?」
「いや、そういう訳でも…。」
「まずはお友達から宜しくお願いします!」
春樹くんからの圧に押され、私は「はい」というしかなかった…。
屋上から戻り、教室でご飯を食べながら亜紀に先ほどの出来事を話す。一通り話終えると亜紀が大きな溜息をつく。
「あんたねぇ…。なんでそんな逃げ道ガバガバなフリ方すんのよ。もっとハッキリ断りなさいよ。」
「でも、とりあえずは友達になっただけだよ?」
「なっただけじゃないでしょ!その春樹って子は真尋とその先の関係まで期待してるってこと。真尋に好きな人がいるとも知らずに。それって知った時に余計傷つくんじゃないかしら?」
確かに私には好きな人がいる。だから、仲良くなれば告白を受けてくれるのかと聞かれたときにそういう訳でもないと言おうとしたのだ。春樹くんは聞く耳を持ってくれなかったのだけれど。
「そうだね。次会った時にちゃんと説明するよ」
亜紀の言う通りかもしれない。
でも、春樹くんと友達になったと言っても、学年も違うから関わることは少ないだろうし、そんな関係になるとも思えない。
「それにしても真尋が告白されるなんてね。」
これからどうするかを考えていると亜紀が気になることを言った。
「私が告白されるのがそんなに珍しい?」
「珍しいも何も告白される事なんてないと思ってた。」
亜紀の言っていることが分からず首を傾げる。
すると、亜紀がまた大きな溜息をついた。
「理事長の孫で成績優秀、誰にでも優しくておまけに美人。だけど、彼氏持ちってなら誰も告白しないよね。」
「ちょっと待って。彼氏持ち?彼氏なんていないんだけど。」
「あんたからすればそうだろうけど…。周りからはそうは見えてないの。毎日お弁当渡して一緒に下校してってそういう関係にしか見えないでしょ?」
「そうかな?別に幼馴染ならそんな…」
そこまで言いかけて幼馴染にお弁当を渡していないことに気付く。
「やばっ!優斗にお弁当渡してない!」
私は自分の鞄からお弁当を取り出し、急いで教室を出た。
お読み頂きありがとうございます。
幼馴染が出ませんでした。次の話では出てくるはずです。
見切り発車ではありますが、最後までお付き合い頂けると幸いです。