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第一章 「テストの時間です」

1話2000〜3000文字で良いのかな?

 アメリアに通された応接間には、

綺麗な銀髪の少女とその従者らしき人物が座っていた。

少なくとも自分の師はハプスブルク家の人間では無いらしい。


「初めまして、ヴィルハルト君。

今日付でキミの魔術講師を担当することになった、クラウディアだ。宜しく頼む」


「差支え無ければヴィルと呼んで下さい。 ご指導ご鞭撻の程宜しくお願いします」


……師匠が来たと思ったらまさかの銀髪美少女だった。

アメリアより歳下だろうな。


なんとなくは予想していたんだ。

なんせこの国は身分制度がしっかりしていて、

貴族のメイドは貴族がやるのと同じ様に、貴族の指導は貴族がやる。

それを考えると、しがらみを比較的気にしなくて良い未成年同士で絡ませた方が

家同士都合が良いって事になるんだよな。


とは言っても僕は公爵家だ。

いくら側室の子だからといって適当なのは寄越さないと思いたい。

クラウディア先生も相当優秀なはずだ。

姓を言わなかったのがちょっと気になるけど。


「じゃあそうさせて貰うよ。キミのお母さん曰く、

ヴィルは稀代の天才らしいじゃないか。

私の指導について来れるかが楽しみだ」


「滅相もありません。 過大評価でございます」


……お袋は僕の認識以上に親バカだったみたいだ。

ちょっと図書室の本を読み漁ってニュートンの真似事をしていただけで天才扱いだ。

因みにこの世界でもちゃんと力と加速度は比例している。


クラウディア先生は満足げに微笑んだ。

「面白い子だ。 早速授業を始めよう」



二人で敷地内の裏山に行く。

いつもは兄貴達が訓練している場所だけど、今日は僕の為に空けておいてくれたみたいだ。

ほとんど話したことないんだけどね。


「それじゃあ早速始めようか。 魔素を操る訓練はもうしてる?」


「はい。 本に書かれてある程度のことはできます」


「……もうちょっと柔らかい表情と話し方できない?」


「自分の師を前にして敬語を外せと?」


僕の表情筋を理解できる人間がこの世に存在する事を切に願うね。


先生はバツが悪そうに頬をかいた。


「堅苦しいのは苦手なんだ。 ただでさえ周りの人間は堅物ばっかりなのに、

自分の弟子にまでそんな態度を取られちゃやりにくいかな」


あまり貴族らしくない人だ。

でも、子供同士だしな。

後になって咎められる事はないだろう。


「分かった。 敬語はやめにしよう」


「うん、そっちが良いよ。 私の事はディアって呼んでね」


おっと、急に距離を詰めてくるタイプの子だな。

精神年齢25歳のお兄さんが16,7歳の少女を名前呼びとか罪悪感で一杯になる。 多分。


「よし。 じゃあキミが持っている魔素をこの魔導具に込めてみて。 魔素の量と質を測るから」


先生は虹色に光る水晶に似た結晶を僕に渡した。


魔術を行使するために必要な魔素は、人によって保有量が大きく異なる。

それだけで人生を左右すると言われるほど重要な才能らしい。

進学先もこれでだいたい決まってしまうとか言ってた。


つまり、ディアに失望されないためにもちょいとばかり本気を出さなきゃいけないんだ。

物理学の力、見せちゃおうかな!


僕は全神経を眼底に集中させ、大量の魔素を()()()()


ディアがその綺麗なピンク色の頬を真っ青に染めた。


「冗談みたいな放出量だね……密度も高い。ただそんなに出したら一瞬で尽きない?」


「回復量が追いついているから集中力が続く限り無限に出せるよ」


実際は違うんだけど、話しても伝わらないだろう。

種明かしは後でちゃんとするから待ってて欲しい。


僕が生成した魔素を込めた途端、虹色の水晶が鋭い光を放ち始めた。

思わず目を逸らしてしまうほどだ。


怯えた目を僕に向けるディアが視界に入る。

脚のプルプル具合が面白い。


「ストップストップ! それ以上やると壊れちゃう!」


焦った口調でディアが言う。

僕はすぐに魔素の生成を止めた。

壊れたらどうなるんだろう……滅茶苦茶実験してみたい。

後で水晶に余りが無いか聞いてみようか。


「どうやら認識を改めなければいけないみたいだね……

これで自分の事を過大評価してるとか、ホント良い性格してるよ」


「それ褒めて無いでしょ」


「当たり前だろ」


面と向かって性格が悪いと言われると悲しくなるなぁ……。

辛辣な人だ。


「まぁ良いや、キミのお母さんが天才って言ってた位だから、

ギリギリ予想の範疇だよ。気を取り直して行こうか。

ヴィルは既に勉強していると思うけど、

魔術の概念について軽くおさらいしておくね」



 ディアが順を追って説明していく。

簡潔に説明するとだな、


この世界に存在するどの魔術書にも、

「魔術は精霊との対話である」という趣旨の内容が冒頭に記される。 

人間は自身が持つ魔素と行使したい魔術の内容を、

世界に計十柱存在する精霊に伝える事によって魔術を発動させる。


単に膨大な量の魔素が有れば良いというわけではなく、

精霊が理解出来る内容で正確に伝えないといけないため

「対話」という表現がされるということだ。


要するに精霊と仲良くしようね!ってことなんだろう。

なんか違う気がするけど。


「まずはヴィルと相性が良い精霊を調べよっか」


そして()()()人間と精霊には相性が存在するらしいんだ。

あいにく、どうして相性が人によって異なるのかはまだ良く分かっていない。

実験体が欲しくなるな……


「今度はちょっとの魔素で十分だからね? 

魔素が魔導具に軽く触れる程度で十分だよ」


ディアはそう言いながら懐から10個の水晶を取り出し、横一列に並べ始めた。

先程の物とは違い単色で、一つ一つ色が違う。


「個人差は有るんだけど、私が並べた順番で隣り合う3つないしは4つが反応するのが普通だね。

もっともキミに普通を教えたってどうにもならないだろうけど」


溜息をつくディアを横目に僕は右から順番に水晶を光らせた。

10個全部。


「ほらね言ったでしょ? 意味無いって」


僕の師匠は座り込んで膝を抱え始めた。

やだこの子可愛い。


「ちなみにディアは何個光るの?」


「……雷精霊1つだけだよ。 他の精霊には見向きもされないけど、

雷に関しては自信がある……と思いたい。 

単属性持ちは使える属性が少ない反面、

適正精霊に対して少ない魔素で魔術を行使出来るんだ」


単属性持ちは珍しくない。

僕が図書室で見つけた読んだ英雄譚にも、単属性持ちの人が登場していた。

アメリアも聖属性だけにしか適正を持っていないしね。

ただ後半の内容は初耳だな。


「適正精霊が多いと逆の事が起きたり?」


「そう。 魔素の要求量が跳ね上がる」


やっぱりそうなんだ。

良い事を聞いたな。

それだったら仮説が立てられるかもしれない。


「勉強になるよ。 本にはそんな事書いてなかった」


「だろうね。 昔から貴族連中は適正精霊が多い方が優秀だと思いこんでいるんだ。

なのに最近になって一点突破か器用貧乏かの差だけ、

なんて研究結果が出てきたら良い気持ちはしないでしょ? 

家同士のパワーバランスが崩れて、混乱を招く原因にもなるしね。

だから私が論文の提出をやめさせたんだ」


え? この子ってそんな権力持ってるの? 

……深掘りしないでおこう。


ディアはおもむろに立ち上がって大きく伸びをした。

銀髪が日の光を反射する。


「もうキミが何をしでかしても驚かないよ。

なかなか教え甲斐がありそうだし、最後まで面倒見てあげる」


見捨てられずに済んだようだ。

嬉しい限りだね。


「よし。 それじゃあ本番といこうか。 次は実際に魔術を行使してみよう」



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