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使命の勇者は怪異(魔王)を討つ  作者: 柚根蛍
散身編
7/7

旧校舎

 落ち着いて、私。

 そうだ、私は今何の為にこんな嫌な思いしてまでここに居るのか。

 分かりきっている、私は、魔王を倒す倒す為に!そうでしょ!?


 ──そうだ、私なら、使命を(使命)に出来る。


 逃げられない、私は使命を達成するしかないんだ。

 終わらせなきゃ、因縁を。


「そうだよ!相手が全部魔王だって思えば怖くはないんだから!」


 明らかに飛躍した理論ではあるけど、私にとってはそれが真実だ。

 思い返せ、魔王を討つためにあんなバケモノよりも化け物の敵をやっつけてきたのだろう?

 それと同じ、いやむしろ簡単なんだ!


「やる、もうやるしかない」



*固定スキル獲得「使命バカ」

いつ如何なる状況でも、使命を忘れない限り、何度でも立ち直れる



 私は、階段を降りる。

 行こう、そしてこの怪異なんとかを終わらせるんだ!

 決めてしまったらそこからの実行は早かった、まるで心が澄み渡っているような感覚。不安や恐怖はあれど、先ほどの比などでは全く無い。

 

 先程、メモに書かれていた3ーCに行く。

 それ以外のことは極力考えない、無理に思索してまた恐怖に飲まれたらいけない。

 私は非力ではあるが、だからと言って何も出来ないわけではない。私は今も勇者なんだ、魔王を恐れる勇者なんてかっこ悪くてやっていられない。


「ここがその教室…」

「ね、ねぇアンナ?さっきとは態度が違うけどどうしたの?」

「いいじゃん、早く終わらせよう!」


 フワリンに対する怒りも何故か和らいでいた。

 教室の目の前に着いた私は、鍵を受け取り勢いよくドアを開ける。

 ……中には、特に気になるものはないように思えるけれど──


 だけど匂う、勘とかじゃなくて悪臭。

 まるで肉が腐敗したような──


「うっ、くさい」


 吐き気を催すような、匂い。

 臭いの元は……。

 私は、そこで教室内の一つの机に注目した。そこから異様な気配を感じる。

 何が居ようと、関係ない。どうせならスライムだとでも思えば気分も落ち着くだろう。

 私は、その机に近づき、黒板とは逆の方に傾けた。

 ズルリ、何かがポトリと椅子に落ちた。とても生々しい感じだ。


「──っ!」

「うわぁー!なにこれ!」


 腕、だ。

 細い、少女の右腕。肩から先は無い。

 この切れ方は、切断されたような跡……。


 血液が凝固して、周りに(うじ)が湧いて、強烈な悪臭を放つ。

 しかし私は迷いなくそれに触った。

 

「な、何してるの!?」

「わからない、気でも狂ったのかな」


 実際狂っているのだろう、常人はこんな事しない。

 腕を触る、冷たく、固まっている。

 魔王の魔力は感じない。外れ──という訳ではなさそうだが。


「あ……」


 そうして、私が触って数秒後に、腕はすっと消えた。

 そして──部屋が歪み始める。ぐにゃぐにゃと、音を立ててキシキシと。


 私は、すぐに危険を感じ、逃げ出す。

 その歪みは、部屋だけではなく、波紋のように広がってゆく。


「逃げるよ!来て!」

「わ、わかったよー!」


 私は駆け出す、全力で。

 転ぶことなんて関係ない、階段を駆け下りて、そして出口を目指した。

 

「早くしないと!くっ……なっ!?あれは!」

「わわぁ!おばけー!」


 出口で待ち構えていたのは、下半身だけの化け物だ。

 でも、関係ない。私はやるって決めたらとことんやるんだ!


 私は駆け寄る、出口に、化け物の方に。

 向こうも猛スピードでこちらに駆け寄ってくる。


「邪魔!どいて!」

『!?』


 私は全力のキックを化け物にかまして出口を求めた。

 当然相手は激昂してこちらを襲ってくる、私は手に持つ物懐中電灯を力の限り相手に投げつけた。


「それっ!」


 懐中電灯に(つまず)き、化け物は姿勢を崩した。

 その間に私は旧校舎の出口から脱出することに成功した。

 その直後、ガラガラという表現では表せないほど巨大な音を立てて、旧校舎は崩れ去ったのであった、


「うっ、危なかった……それにしても一体どうして崩れたんだろう」

「わ、わかんないよー」


 そして思った、ここからどうすればいいのか。

 きっと、さっきの腕がキーになっていたんだと思う。

 理由は一切わからないがそれに関しては考えても仕方ないような気がする。


 それよりも逃げないと、先ほどの下半身があれで倒せたとは到底思えなかった。

 旧校舎が崩れた時、下敷きになったとは思ったけど、正直確認したくもないし早く行動したい。

 それで、そうだ。

 警備さんは一体どうしたんだろう。

 先ほどから姿を見ない……後者の上の買いに行くのが正解か。


 私は懐中電灯を再度スキルで戻して、握りしめた。


「校舎に行くよ、早く抜け出したい」

「そうだねー」


 こんな気味の悪いところを早く抜け出すには進むしかないんだ。

 嫌いや言っていたら本当に殺されてしまう、笑えない。


 私は駆け足で、渡り廊下に戻り、校舎の中へと入っていった。

 入って直ぐ、一階の奥までライトまで照らしてみるが特に変わったところは見られない、あった方が嫌なのだけど。

 それを確認したら、左手にある階段を駆け上がる、そして同時に先ほどの記憶が蘇った。

 同時に恐怖が募るが、私はそれを知らんぷりするようにする。そして階段を数字をしっかりと確認しながら上がっていく。

 二階を無視して、まずは三階についたところで廊下に出る。


「居るかな」


 教室の解放を頼んだのを思い出し、教室をガラガラと開けていく。

 中まで調べた方がいいとは思ったが効率的ではない、若干震えた手でパッと教室内を確認していく。

 そして数分後、三階の全ての教室が空いてることがわかった。

 音楽室、化学室辺りが気になったがまずか警備さんを探す方が優先だろう。

 そのまま向こうの階段側まで到着すると、私は四階へと上がっていった。


「うあぁ!?」


 校舎四階廊下、ライトを照らした先に見えたのは……。


 下半身が千切れた、制服姿の男性の姿だった。

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