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第四話 美しい転校生

 

 さあ、新学期が始まった。今日、僕は気を利かせて勇斗と咲良ちゃんをカップルで登校させたのだ。僕は一人で登校した。学校へ着き中に入ると、掲示板に新しいクラスの名簿が貼られている。

 

 どうやら、僕のクラスは二年B組に決まったようだ。


 今、僕達二年B組の生徒はみんな出席番号順に着席している。黒板を前にして男子が右の扉側、女子が左の窓側。僕のクラス二年B組は英語コース。そのため、女子の方が男子より二倍以上多いようだ。B組の教室はA組C組の教室に挟まれている。

 

 C組も同じ英語コース。女子の方が男子より二倍以上多いらしい。逆にA組は理数系コース。女子が方が少なくて男子の方が断然多いらしい。ちなみに、二年生になってからはもうクラス替えが無い。僕は三年生に進級してもこのB組で過ごすのだ。


 担任の男性教師、半田はんだ先生が教壇でクラス全員の名前を呼び上げる。名簿確認だ。先生は教室の扉を開け、廊下にいるらしい誰かに話し掛けているようだ。

 

「ではどうぞ、教室に入ってきてください」


 先生はその誰かに向かってそう言った。


 一人の女の子が教室に入ってきた。

 

「この春より、本校に転校してきた絹井七海きぬいななみさんです。本日から絹井さんは、皆さんと一緒に高校生活を送ることになりましたので、是非ぜひ皆さんよろしくお願いします。それでは絹井さん、簡単で良いので、改めて皆さんに自己紹介と挨拶あいさつをしてください」


「絹井七海といいます。父の転勤により、神奈川県の大和崎南部やまとざきなんぶ高校から、こちらの野名北部高校に転校となりました。好きな食べ物はコンビニのおにぎりとチーズケーキで、趣味はカラオケです。これから皆さんと一緒に、楽しい思い出を作りたいです。皆さんと仲良くなりたいので、よろしくお願いします」


 先生が紹介すると、転校生の絹井さんは自己紹介と挨拶をした。

 

 とにかく口調もお辞儀も丁寧だ。とても好印象である。


 見た目はとびっきりに垢抜あかぬけた女の子だ。髪色はかなり明るめ、髪型はツインテール。肌は白く顔も可愛く美しい女の子だ。僕が見たところ身長は一六○センチ台前半。しかも、モデルさんのような体型をしている。


 クラス内がざわつく。

 

「マジかよ。ちょー可愛いじゃん」


「あり得ねーよー。うちのクラスにあんな可愛い子が……」


「ぜってー彼氏いるよー」


「俺の彼女があんな可愛かったら……想像しただけでも……」


「マジ、本物のアイドル並みだよ」


「俺、今のうちにサイン貰っておこーかな。ついでにツーショット写真も」


 クラスの男子達が騒いだ。


「ね、あの子ちょー可愛くない?」


「え、ちょーやばいくらい可愛いんだけど」


「絶対、彼氏持ちだよねー」


「ねえねえ、あの子、早く話し掛けて仲良くなろうよ。早めにイケてるグループ作っちゃおうよ」


「どっかでモデルとかやってるのかな?」


「スカウトとかされてそうだよね」


 一方、女子達も騒いだ。


「それでは席順を決めます。今は出席番号順で皆さんに座っていただいていますが、最前列の席に座りたい人はあらかじめ挙手をお願いします」


 先生は大きな声で言った。

 

 手を上げるのはみんな勉強が得意そうな人達。男子二人女子二人が手を挙げ、合計四人が先に最前列の席へ決まった。

 

「では、残りの人達はくじ引きで席を決定しますが、よろしいですか?」

 

 先生がそう問い掛けると、シーンと静まる中、ちらほらと「はい」「はーい」という声が響く。


 僕の席は黒板を前にして教室の左側で、一番窓側の列の前から三番目に決定した。僕の前の席に決定したのは、なんと転校生の絹井さん。全員のくじ引きが終わると、クラス全員が新しい席へ移動する。僕は新しい席に着く。絹井さんが僕の前の席に着く。席に着いてから見ると、彼女は後ろ姿からして垢抜けている。正直、僕はドキドキしてしまう。


「よろしくお願いします。冴島くん……ですよね?」


 前の席から転校生の絹井さんが話し掛けてきた。

 

 僕は感じる……。男子達の嫉妬のような目線を……。


「あ、はいっ」


 僕は慌てて返事をした。

 

 あまりの可愛さに、緊張してなかなか言葉が出てこない。


「綺麗な所ですね、野名市って。前に住んでいた所も緑が豊な所だったんですけど、ここも自然が多くて綺麗ですよ」


 絹井さんは優しく言った。

 

(絹井さんて見た目は垢抜けているのに、凄く優しい感じだ……。緊張するけど、なるべく自然体で話そう……)


「はい。自然が多くて、えっと、あと、醤油の生産で有名なんですよ。ここは」


 緊張しながらも僕はそう言った。


「知ってますよ。醤油で有名って。それから、水清みずきよ公園も桜で有名ですよね。この前、パパと一緒に水清公園を歩いたんです。凄く綺麗でしたよ、桜。また来年の春もあそこに行きたいなー。今度はこの高校で友達作って、一緒に行ってみたいなー」


「水清公園かー。僕、小さい頃はあそこのアスレチックで遊んでましたよ」


「あ、そう言えばこの前行った時、子供達が楽しそうに遊んでました」

 

「冴島くんて、下の名前は武虎くんていうんですか? さっきくじ引きの時に、先生が冴島武虎くんて呼んでたから」


 続けて絹井さんが僕にそう聞いた。


「はい。武虎っていいます。でも、ちょっと古臭い名前ですよね」


「いえ、かっこいいと思いますよ。男らしくて」


「あ、ありがとうございます」

 

「あのー、そのー、なんというか、絹井さん、タメ口でも構いませんよ」


 続けて僕は思い切ってそう言ってみた。


「じゃあ、そうさせてもらうね。よろしくね、武虎くん」


 笑顔も凄く可愛い……。しかも下の名前で呼ばれた。今、僕を下の名前で呼んでくれる女子は、咲良ちゃんに続いて二人目だ。


「私もね、七海でいいよ」


 絹井さんはまた笑顔で言った。


「じゃあ、七海ちゃんて呼ぶね」

 

 冷静さを装っても、僕は緊張して今にも顔が真っ赤になりそうだ……。


 その後、七海ちゃんの周りにはクラスの女子が殺到する。七海ちゃんがとても可愛いからだろう。女子は誰よりもいち早く仲良くなりたいんだと思う。殺到する女子の後方集団には咲良ちゃんもいる。でも、この女子のむれを割って入っていくには厳しそうだ。

 

 そう言えば一年生の時、僕と勇斗と咲良ちゃんは三人とも別々のクラスになった。二年生になって、やっと咲良ちゃんとだけは同じクラスになることができた。勇斗は隣の二年C組になってしまった。C組も女子が多いから、多分、今頃は勇斗を見た女子がきゃーきゃー言ってるに違いない。

 

 それにしても、女子はまるでみんな七海ちゃんと仲良くなる順番を競っているように見える。男子が七海ちゃんに近付いて行ける隙は当然無い。僕の席もなぜか女子に占領されている。七海ちゃんの周りには女子だらけだ。


 第五話 放課後の約束 へ続く……

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