人格安定仮想ボディによる報告記録その二
封印の森及びその時点で手に入れた情報についての追記です。
森は大きく三つに分けられていました。
大魔王の遺骸が埋められている核区画。
ここに私と疾風は落ち、魔王が誕生したゴブリンが一時的に頂点に立っていた場所です。
大魔王の大きさはその広さと同じだったらしく、それが事実であるのなら怪獣どころの話ではありませんね。
対策のために怪獣映画でも疾風に見て貰おうかと思っているところですが、呆れられる未来しか予測できないのが困るところです。
エルフの里がある内区画。
遺骸が埋められている場所を取り囲むように大樹で作られた防壁の外側にあります。
瘴気を発するものがない影響か、魔物はおらず、里の周りは単純な柵のみでした。
封印結界の外区画。
大樹の防壁より更に外に行くと霊術による結界に形成されていました。
結界はある程度の大きさの物体を通さない不可視の壁は強固なようで、外からはある一定の力に対しては素通りさせる仕様があるようです。中からは流石に出ないように防ぐようですが。
量子通信すら遮断する恐るべきサイ現象なのですが、私達が結界内に無事に落ちられたのはその仕様のおかげのようですね。
また、エルフの霊術で解除して出る仕様からして、結界を強引に突破した場合は予測ですが彼らにその情報が伝わるのではないでしょうか? そうでなければ完全に通さない仕様にするでしょうしね。
とはいえ、エルフ達が私達について気付いていたかどうかは微妙なところでしょう。
どっちであったとしてもそれどころではなかったようですからね
なお、外区画には魔物が数多く生息していました。
魔王が生まれていないおかげか、私達の地球とはやや形状が違う動物も多く、一部が霊獣と呼ばれる存在になっているようです。
サイ存在であるため私には物理的に具現化した森の大精霊以外は視認できませんでしたが、精霊も多く存在し、霊獣と共に魔物と戦いバランスを保っていたが故に魔王が生まれなかったといったところでしょうか?
ですが、人を守る刃たる疾風で敵性存在を許すはずもなく、ウリスとついでに精霊達の協力の下に封印の森の魔物の殲滅は終了しています。
魔物
ゴブリン・オーク・スライム・コボルト・リザードマン・オーガ・ハーピーなどなど様々な魔物を確認しました。
そのほとんどが、こちらで考えられたような魔物の姿をしています。
推測の域を出ませんが、こちらが考える魔物の姿に酷似した姿の魔物が多いのは、魔物発生の原因となった古代魔法文明がこちらの人間を召喚したことによる影響なのではないのでしょうか?
なお、通常の個体は化学兵器などでも倒すことはできますが、その遺体を霊術などで浄化しないとその体からあふれる瘴気によって二次災害が起きる危険性があります。
生きている時でも瘴気が漏れているので、これによって魔物かそうでないかの区別が可能です。
また勇者個体と呼ばれるより瘴気に依存した個体が存在し、これによって単純な物理攻撃が効き辛くなります。
それらに対処するためには三元力の力をぶつけるしかなく、駆除するには最低でも二段階に分けて攻撃する必要があるようです。
アンデット
いるそうです!
失敬。つい興奮してしまいました。ゾンビ物とかは人類が作り出す物語の中でもある種の鉄板ですからね。
ともかく、浄化せずに魔物の死体を残していると、そこから瘴気があふれ出て瘴気だまりを作ってしまうそうです。
これにより汚染された土地は植物がなにも育たない死の土地になり、下手をすれば新たな魔物が生まれてしまう。それの一種が死体の魔物化、つまりアンデット! ゾンビですよゾンビ! チェーンソーが必要ですね! 疾風に早速提案しなくちゃ。
あ、却下ですか。はい……テンションが上がってしまってすいません。
精霊
現在準敵性存在に認定しているサイ現象生命体です。
一万年前の魔法文明崩壊時に増大する霊力の影響で変化した現象並びに法則。
魔王と同じく大中小の区分があります。
小精霊は子供のような存在らしく明確な意思は存在せず、元となった現象や法則に寄り添って存在しているだけだそうです。精霊術は基本的に彼らに霊力を分けて起こす霊法のようです。
中精霊は確固たる意思を持ち、コミュニケーションも可能であり、ある程度は元となった現象や法則から離れても行動できるとのこと。
精霊術を使える者の中には、それら中精霊と契約して常に一緒に行動することもあるとか。そうすることで小精霊だけでは起こせないより強力な霊法を起こせるようです。
大精霊は世界の裏側に存在し、現象や法則ではなくその概念によって生まれた世界のそれそのものと同意義な存在とのことです。
火であれば火の大精霊が存在し、顕現すればその一帯が火へと変わってしまうほどの影響力があり、それ故に普段は世界の裏側におり、常に世界の動向を見守ってバランスが崩れないように中小の精霊達に働きかけているとのこと。
そんな彼ら彼女らが姿を現すのは、魔物などにより大規模な破壊が起き、世界が崩壊しないようにする時ぐらいしか普通は姿を現さないそうなのですが……精霊術を使う者であれば接触は可能でウリスがそれをしようとしていたのですが、なぜか呼び掛ける前に森の大精霊が姿を現し、ひと悶着あって現在は精霊を準敵性存在として認定しています。
総じて三元力の世界バランスを優先し、そのありようも物理から離れているために思考がこちらと離れているため、ふとした拍子に人の命を奪いかねない危うさを魔物殲滅の協力を得る時に確認しています。
詳細に関しては疾風の自動記録を参照にしてください。
なお、疾風の三元力属性である万物が彼らにとって非常に好ましいらしく、妙に好かれやすいようですが……
神獣
一種の世界の免疫存在のようです。
一万年前の魔法文明崩壊時に増大する気力の影響で変化した現象並びに法則。
詳細はまだ不明ですが、大陸を沈めるほどの力を持った大魔王を倒せるほどの力を持っているようです。
獣人
一万年前の魔法文明崩壊時に気力の影響で変化した獣。
らしいのですが、現状遭遇してないので詳細は不明です。
ウリスちゃん曰く、人の姿に近付いているそうです。
霊獣
一万年前の魔法文明崩壊時に霊力の影響で精霊に近い存在になった獣。
大なり小なりこの世界の動植物は霊獣化が起きているのか、私達の世界の動植物とは違うところがあります。そういう意味では、この世界の動植物全てが霊獣だと言えるように思えますが、ウリスちゃん達からすると明確に霊獣と普通の動植物との差異があるようです。
確かに霊獣と呼ばれていた個体は明らかに普通ではそうならないような大きさや特徴を持っていたのが多かったですが……
なお、霊獣は基本的に動植物が長い時間生きることによりなるようですが、大精霊が素質ある個体に直接力を与えることによってなる場合もあるようです。
その関係のせいか、霊獣は精霊の言うことを聞くようですが、より長く生きた個体には自我が芽生えるため必ずしも全ての命令に応えるわけではないとのこと。
補足として、かつては一万年前に霊獣化した個体もいたようですが、そのほとんどは千年前の戦いで亡くなったようです。
また、人の中には霊獣と心を通わせやすい者がいるらしく、霊獣使いというロマンがあります!
が、なぜか疾風とウリスちゃんはわかってくれないのですよね……何故でしょう?
根源意志力
ありたいという最小意識。世界はこれの集まりによってできているという考え方をこの世界の人達はしているようです。
これだけの集まりでは不安定であり、安定した状態・無の状態に戻すための働きが常に掛かっているらしく、それを守るために肉体が物質が作られ、それでも壊されるため、後記の三元力を使用しているとのこと。
補うために魔力を、支えるために気力を、安定させるために霊力を。
感知できない私からするとどうにも理解できないところがありますが、実際に現象としての影響を確認している以上、これがあると想定して考えるのがいいのでしょう。そもそもサイパワーの時点でそういう結論に出てますしね。
意志力
そのまま意志の力。これによって三元力を操り三元法を起こす。
意志であるためか、使い過ぎると気絶してしまう、あるいは気絶しやすくなる模様。
アースブレイドでもそのような事例は確認されていますね。
三元力
魔力・霊力・気力をまとめた言葉。
これらは互いに影響し合い、魔力は気力に強く、気力は霊力に強く、霊力は魔力に強いとのこと。世界はこれがバランスを保っていることで安定しており、それが崩れると古代魔法文明が滅んだような魔力暴走が起こったりするとのこと。
発生場所とある場所はそれぞれ違うようで、魔力に世界(人の場合は肉体)が壊されてないように気力を生みたし、気力による過剰な強化を抑えるために精神が霊力を生み出し、霊力による過剰な干渉が起きないように魂が魔力を生み出すとのこと。これらの関係から、魔力は魂、霊力は精神、気力は肉体(世界)に宿っているようです。
そういえば疾風が力を使う時は、外からサイパワーを取り込んでいることもあるって言っていましたね。つまりそういうことなのでしょう。
なお、それぞれの力には持つ存在によって属性があるらしく、大体のものは三つそれぞれ別々の属性であることが多いそうです。
ウリスちゃんの場合は、魔力が大気、霊力が森、気力は大地なのだとか。
ただし、疾風のように三つとも同じ属性というパターンもあるようです。
なお、疾風は万物というレア属性であり、そのせいで万物の愛し子とか言われて大精霊に妙に好かれていました。
準敵性存在達に好かれてもただ迷惑なだけなのですけどね。かといって、下手に暴走されても困りますし。
魔力
三元力の一つ。魂の奥底に世界の外と繋がっている穴が開いているらしく、そこから流入する無色の可能性だそうです。
創造と破壊の力とも呼ばれているらしく、その言葉通りそこにないものを作り出すことも、そこにあるものを破壊することに特化しているようです。
魔術
魔力を操る術。詳細はもう少し情報が集まってからにします。
魔法
魔力で起こる法則・現象のことです。
瘴気
魔力が世界を無に還そうとする世界の外からの働き・無の祝福に侵された状態。
性質的には魔力と同じようですが、起きる魔法が全て破壊破滅へと動くようになるらしく、触れられた物質は壊れ、生命はその活動を弱らせ最悪は死滅してしまうようです。
霊力
三元力の一つ。魂を保護し、増減させる力。魂は肉体・世界と表裏一体のあるという意志の塊であり、それがあるから精神が生じ、肉体・世界が肉体・世界としてあり続けられると考えられているようです。それ故に、魂に霊力で干渉することで、本来では起こりえない現象を起こせるようですね。ただし、その性質上、そこにないものを新たに作り出すとかはできないようです。
霊術
霊力を操る術。精霊にお願いする精霊術もこれに該当するようです。それ以外にもあるようですが、それに関してはもう少し調べてからですね。
霊法
霊力で起こる法則・現象のことです。
呪力
強い感情の力によって変質した霊力。霊力より思いを留めやすく、叶えやすく、強く世界に干渉できる。普通ならそこにあるものしか干渉できない霊術が、これを使うことによる呪術になるとその制限もなくなるようです。ただし、それ故に瘴気と同様に世界を壊す力であるらしく、扱いには注意が必要なようですね。これが込められた武器などは呪いの武器として扱われるらしく、風人刀雷人刀はこれに当たるようです。確かに勝手に直ったり、異常な切れ味と強度を持っていましたし、作った刀匠が命懸けで打った代物ですから、なるほどとは思いますが……どちらかというと妖刀ですよね?
呪術
呪力を操る術なのでしょう。詳細は不明です。
気力
三元力の一つ。肉体・世界から生じる強化と増減の力だそうです。
疾風のサイ現象だと思われていた現象強弱化は、これによって引き起こされていたようです。
霊力と同様にそこにあるものしか使えない難点があるようです。
魔力が瘴気に、霊力が呪力に、となると、気力にも同様なのがあるのでしょうか? 後で確認したいところです。
気術
気力を操る術。向こうでは正しく認識されていませんでしたが、武術の中に気術が組み込まれていたらしく、適性があった疾風はそれをサイ能力だと思われるレベルまでに知らずに高めて使用していたようです。
遺跡
一万年前に崩壊した古代魔法文明の跡。
生きている防衛機構があったり、魔物の住処となっていたりと危険であるが故に千年ほど前までは禁忌の地として扱われていたようです。
後記の理由から探索されるようになったようですが、やはり時間の経過は影響が大きいのか壊れている魔法文明の遺産が多いとのこと。
私達が地球に帰るためにはいずれ訪れなくてはいけない場所ではあるのですが、果たして残っている送還装置はあるのでしょうか?
とりあえずこんなところでしょうか?




