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サムライドレスは異世界を駆ける  作者: 改樹考果
ファイル3『異世界の旅路はエルフと共に』
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ログ19『封印の森外区画魔物駆逐作戦下準備・後』

 空を蹴り、もっとも近い魔物の巣へ急降下。

 狙うは枯れ木の洞を巣にしているゴブリン達!

 外にはこれから狩りにでも出るところだったのか、簡素な木の槍や弓矢を持って外に出ている奴らがいる。

 その中でひと際大きい個体の傍に着地。

 そいつが群れの中心だったため二匹ほどついでに踏み潰しているが、気にせず落下の威力を加えた一撃を大型ゴブリンへと振り下ろす。

 流石は勇者個体とか言われているだけあってか、持っていた石斧を咄嗟に掲げて刃を防ごうとしていた。

 だが、雷人丸の切れ味はその程度で止まるわけがない。

 石斧ごと頭部から股下まで刃が駆け抜ける。

 結果を見ることもなく、周りのゴブリンが騒ぎ出すより前に再び上空へ離脱。

 それと同時に上空で待機していたサポートドローンが浄化の木の種を下に向かって投げ付ける。

 自身を浮かせている反重力飛行装置を応用しての投擲であるため、弾丸のような速度で大型ゴブリンの遺体半身にめり込んだ。

 おお!?

 (まさしく魔法! いえ、霊法ですね!)

 次の瞬間、一気に芽が現れ、まるで倍速再生でもされているかのように成長し、暴れるかのように伸びた根が残った半身へと伸びた。

 あっという間にゴブリンの勇者個体を苗床に小さな木が出来上がり、その姿を消失させたのだった。

 ついでに踏み潰したゴブリン二体も消えているが、他の死んでない個体までは影響がないようだ。

 しかしまあ、思わず空中で止まってしまうほどの速さだ。

 まあ、ウリスの霊術でそういう急成長は幾度も確認しているが、下手すれば俺と同じぐらいの高さがあるのが一瞬で出来上がれば驚くしかない。

 (でも、向こうで同じことを出来る人がいませんでしたっけ? そもそも、疾風だってやろうと思えば同じことできますよね?)

 それはあくまで俺やそいつが直接やる場合だろ? 今のは明らかに種だけで起きた現象だ。

 (確かに向こうで似たようなことをやれと言われたら……ナノマシン群体を駆使すれば似たようなことができなくはないでしょうかね?)

 いや、それナノマシンで構成されているから本当に似ているだけじゃないか?

 (細かいですねサムライの癖に)

 サムライだから細かくないってことはないだろうが! そもそもなんだそのサムライの癖にって!

 (はいはい)

 ぐっ! さっきの仕返しか? 仕返しなのか!?

 などと思考通信でやりとりをしながら止めていた足を動かす。

 反重力スラスターを使って空中と飛ぶように移動し、次の標的上空に到達と同時に前半回転。天地が逆になると同時に空を蹴り、再び一気に落下した。

 次は岩場を住処としているオークの群れ。

 一狩り終えた後なのか、ゴブリンらしき遺体を数体串刺しにして丸焼きにしているようだった。

 魔物間での弱肉強食って感じだな。

 (元とはいえ人型が調理されている様子は気分よくありませんね)

 サポートナビは繊細だな。

 (これでも女の子ですから)

 さいで。

 勇者個体らしきオークはゴブリンを焼いているたき火の前にいた。

 分厚い脂肪の上に硬質的ななにかを纏った騎士的な大型オークだったので、視認してからその後ろに着地する僅かな時間で少しだけ呼気を強める。

 雷人丸が纏うオーラが少しだけ増し、金色の軌跡を残しながら脳天から背骨を腰まで切り裂いた。

 ただでさえ種族的にゴブリンより大きい上に、更に巨大な個体であるため真っ二つにするには太刀である雷人丸では少々心もとないと判断したのだ。

 もっと深く刃を入れればそれも可能だろうが、脳と背骨を切断されて生きている生物はあんまりいない。

 特にこいつらは物理法則に縛られないところがある魔物とはいえ、元々が人間であるのなら急所となる場所は変わらない。ということは既に確認済みだ。

 騎士モドキオークが前のめりに倒れ、ゴブリン達と一緒に焼けるより早く俺はその場から飛び退いている。

 結果は後から付いてきているサポートドローンに種を撃ち込むことで確認させた。

 炎を物ともせずに浄化の木は成長して大型オークを消滅させる。

 あれって普通の植物として考えていい物だろうか?

 (どうなのでしょう? 少なくとも周辺環境には影響を及ぼさないようですが)

 どういう意味だ?

 (先程の大型ゴブリンを浄化した木が既に枯れ始めていますから)

 脳内ディスプレイに周辺警戒をさせていたサポートドローンの視点が映る。

 雷火の言う通り、映し出された映像の中で枝葉を崩している木があった。

 残ったゴブリン達がその手に持ったこん棒やら石斧やらで叩いているからってのもあるだろうが、既に生気を感じられないほどボロボロになっている。

 ウリスが言っていた浄化の木と大分違うな。

 (バランスとやらのための調整なのでしょうね)

 浄化し続けられると困るというわけか。確かに勇者個体を浄化し切るだけにしたとは言っていたがな。

 (ともかく、勇者個体の駆除はこれで問題なくできることは確認できましたね)

 まあな。

 (次は銃火器を使いませんか?)

 流石にそっちを使うと被害が出るんじゃないか?

 (浄化の木を見る限り、多少傷付いたところで問題ないでしょう)

 向こうでは過剰なほど自然環境が壊れるのを嫌ってるサポートナビの言葉とは思えないな。いや、さっきもルールがとか言っていたよな?

 (ええ。ここは異世界だということを加味して修正したのですよ。柔軟に行きましょう柔軟に。後、個人的に精霊達の掌返しというか疾風へのちょっかいが気に喰わないというのもありますが)

 人のこと黒いと言っておいて、お前も随分黒いと思うがな?

 (疾風のサポートナビですから)

 はっ! ならやっちまうか!

 (ええ。やっちゃってください)

 まずは銃身変形大型拳銃『ハウンド』の改良型『ハウンドクロウズ』だ。

 雷人丸を納刀する流れで、両手を股外側へ動かす。

 俺の意思に呼応して装甲が開き、レールハンドガン二丁が飛び出した。

 両掌に収まった二丁拳銃の感触を確かめながら、次のターゲットに向けて降下する。

 視界に入るのはコボルトの群れ。

 倒木が重なっている下に穴を掘り生活しているようだった。

 丁度獲物を狩り終え帰ってきたところなのか、猪らしき物体を巣の中に運び入れようとしている。

 その内の二匹にマークが付いているが、他の種族に比べてそれほど大きさに差異がない。

 むしろ、他のコボルトに比べて小型だといえるぐらいだ。

 群れの前を歩く杖を持っている個体は異様なほど痩せ細り、骨と皮だけのような姿をして猪の皮を被っていた。

 見るからに魔法を使うタイプなので、着地前にハウンドクロウズを撃っとく。

 銃口から射出されたのはホローポイント弾。

 前時代から使われている弾丸で、弾頭の先端に空洞がある形状をしている。これによって対象に命中した時に空洞部分がさく裂、あるいは膨張することによって高威力を発揮する。

 もっとも爆裂貫通金属噴流弾。通称EPM弾よりは流石に威力は劣るが、人間と同じぐらいの生物であれば絶大な威力を発揮した。

 金属噴流を使用する性質上EPM弾は生産コストが高いため、最下位種ぐらいであれば殺せることはブレインリーパー襲来時に確認されているので仕様を推奨されている。

 場合によってはこれより貫通力が高い前時代ではよく使われていたフルメタルジャケット弾という選択肢はあるが、今のところ魔物の中に奴らのように固い外殻を持ってる個体はいないようなのでホローポイント一択だろう。

 実際、上から三発撃ち込まれた魔法使いコボルトはその威力で頭から地面に叩き付けられ、若干バウンドしてそのまま動かなくなった。

 僅かにしかサイパワーを込めていなかったが、気付いてなければこれぐらいでも大丈夫ってことか?

 もっとも気付かれると流石に駄目だったが。

 右で魔法使いを撃ち左で群れの後ろにいた個体を狙ったのだが、トリガーを引くと同時に飛び退かれた。

 射撃アシストシステムであるアルテミスを使わなかったのがあだとなって、追い打ちの銃撃すら当たらない。

 (察知が早いと動きが速いのもありますけど、そもそも思いっきり外していましたね)

 うっさい。大体落下中にしっかりと狙わないで動く相手に当てられる方がおかしい。

 (それを言うなら落下中に狙いを付けて当てるのもおかしいですけどね?)

 普通だろ?

 (そりゃ一振り達からすればそうでしょうけど)

 などと会話しながら、コボルト達の群れに着地した。

 二匹ほど踏み潰しながら、倒木の周りにある枯れ始めの木々に隠れようとする勇者個体を狙う。

 枝葉なので身体全体を覆っている石のナイフを二振り持った奴なので暗殺者か?

 (気配察知も回避能力も優れている様子ですしね)

 見た目はさして変わらんのに個体差の激しことで。

 (これもスキルなのでしょかね?)

 さあな。

 思考通信で会話しながら二丁拳銃を連射しているが、右左上下に避けられ、かすりはするが致命傷にならず森の中に逃げ込まれてしまう。

 魔力で防御もしていたのだろう。普通であればかすっただけでもダメージを受ける銃弾をものともしない様子は、サイパワーを使った下位種以上のブレインリーパーと重なるところがある。

 少し違うのは、逃げ込む際にこっちを馬鹿にするような表情を浮かべたことだろうか? リーパーの見た目は昆虫に近かったので表情とかなかったからな……瞬。

 瞬間的に加速する飛矢折流身体操術で間合いを詰め、驚愕と共に更に奥へ進もうとするコボルトアサシンの後頭部に右銃口を叩きつける。

 同時に雷火が銃身のナノマシンに命令しその姿を変えさせた。

 ハウンドはブレイクと違い変化の自由度をある程度制限し、事前に組み込んだ形のみに変形するように設計されている。

 これによって少量のサイパワーでも実用に耐えられる銃以外の形状になることができというわけだ。

 そして、俺のハウンドクロウズは銃身のかぎ爪状に変化させる。

 勿論、ちゃんと掴む動きをもできるのでがっちりとコボルトアサシンを固定しつつ、

 「こぉおおおお!」

 ちょっと多めのサイパワーを込めた銃弾と叩き込んだ。

 一瞬だけ震えたコボルトアサシンを掴んだまま後ろへ振り回し、巣の方へ投げ捨てる。

 浄化の木の種が魔法使いに続いて投げ込まれた暗殺者にも撃ち込まれると同時に、その場から上空へと飛ぶ。

 ……次はアルテミスを使うか。

 (でしたらブレイクでの上空からの狙撃も試しましょうか)

 だな。

 そうして俺と雷火は完全修復できたサムライドレスの調子を確かめつつ森の勇者個体達を一掃するのだった。

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