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サムライドレスは異世界を駆ける  作者: 改樹考果
ファイル2『封印の森のエルフ』
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人格安定仮想ボディによる報告記録その一

 地球に帰還した時に備え、ここに私サポートクオンタムナビゲータ雷火が記録を残しておくことにします。

 どうせ疾風はこういうことをめんどくさがってしませんからね。

 それを補うのも私達サポートナビの仕事です。

 私達は最終作戦により百年にも及ぶ宿敵であるブレインリーパーをその母星ごと反物質爆弾によって消滅させました。

 勿論、それを運んだ私達ごと。

 ですが、次の瞬間には、なぜか私と疾風は異世界と推測される場所にいました。

 これはリーパーが襲来する前に流行っていた異世界転移という奴では? と思っていたら案の定、そうでした。

 実に素晴らしい! 人類の創造物たる私が、これまた人類の想像の話を実体験するという。

 これを他のサポートナビ達が聞いたら激しくうらやましがるでしょうね。

 まあ、そんな相手は今のところ確認できていないのですが。

 少なくとも私達が持っている通信手段では次元の壁を越えて地球と連絡することはできません。

 現状から考えて、量子通信には他にも制限が掛っている節がありますが、これはまだ確証がありませんから別の記録にて。

 さて、ここがどんな異世界で、どんな活動をしていたかについては疾風の自動記録を参考にしてください。

 私がここに記すのは、あくまで疾風が着目しなかったことに対する補完なので。


 封印の森

  千年前に召喚勇者が最後に倒した大魔王と呼ばれる個体の遺骸を封じる森。

  多くの魔物と呼ばれる敵性存在が存在し、それらと戦いながら封印の維持と遺骸の完全消滅を試みていたのは、いわゆるエルフと呼ばれる者達であり、彼らが住んでいる場所でもあります。

  私と疾風が落ちた場所であり、その時にはそれまで続いていた上記の環境と拮抗は崩れ魔物は一種類のみとなり、エルフは存亡の危機に立たされていました。


 ゴブリン

  封印の森に棲んでいた魔物の一種。

  大きく尖った耳に、突き出した鼻と鋭い歯が生えた大きな口。二足歩行でチンパンジーと同じぐらいの大きさだが、人間の子供とは間違いなく違う小柄でありながら成体的な体付き。醜く出た腹を持ちながら、両手足は筋肉質。ダメ押しに薄汚れた緑色の肌が、あるモンスターの名前を思い起こさせる。と疾風の自動記録に残っていました。

  実際、私が見ても間違いなくゴブリンだと連想したでしょう。

  また、エルフ達もゴブリンと呼んでることからこちらの文化が大きく影響していることを推測させます。

  非常に好戦的で、食欲旺盛な上に高い繁殖力を持つ。それ故か人であろうが、なんであろうが、動くものであればなんでも喰らうらしく、彼らの巣の周りには疾風が確認した限りではなんの動物も存在していなかったようです。

  ほとんどの個体はブレインリーパーに当てはめると、最下位種の一等兵ほどのようですが、中には下位種の兵長か伍長、下手をすれば軍曹・曹長に至っている個体も確認。更にエルフ達から小魔王と呼ばれていた個体は中位種大尉か下手をすれば上位種少佐に区分しても良いほどの能力でした。

  ただ、比較的ゴブリン指数は低いのですよね。見た目的にはかなり高いのですが、後記の奴のせいで著しくパーセンテージを下げているですよね。


 ゴブリン幼王

  ゴブリン達を率いていたと思われる個体。

  固有サイ能力、異世界風に言えばスキルを持ち、それによって仲間の遺体を自由自在に操ることができたと推測されるゴブリンの赤子。

  スキルによって遺体を纏っていたらしく、最初はゴブリンの中で最も大柄な個体として現れ疾風に撃破されますが、本体である赤子がいた腹部まで攻撃が届いていなかったため私を着用していなかった疾風を窮地に陥れます。

  ネクロマンシーと言えるスキルによって疾風によって皆殺しにされたゴブリン達をゾンビ兵として動かし、駆け付けたエルフ達をも危うくさせるほどの強力な個体でしたが、私を纏った疾風ほどではないため一刀両断にしてあげました。

  ですが、瘴気によって折角生き延びた疾風を危うく死なせかけてしまうことになるとは思いもよらず……流石異世界と慄く限りです。喜んでばかりではなく、これからはより注意深く対応しなくては。なお、瘴気、及びそれに関する三元力に関しては疾風の自動記録を参照してください。

  私がそれを語ると脱線に次ぐ脱線を起こしそうなので。いえ、もう少し正確な情報を得てからここに書くことにしましょう。なので、いずれですね。


 エルフ

   その金色の髪とそこから突き出る上に鋭く尖った耳は勿論、その容姿も語られるように幻想的に感じる。透き通るような白い肌に、芸術品という言葉が過言ではないほど整った顔立ち、そして、エメラルドのような緑の瞳。と自動記録の中で疾風が語っているのは、エルフと自らも名乗る種族の一人・ウリス。

   まさしく私達が思い描くエルフ像を体現したかのような容姿を種族全体でしており、妖精族とも名乗っていました。

   また、そのありようは肉体というより精神に依存しているらしく、千年以上生きているというウリス以外のエルフは皆若い姿でした。

   霊術というサイ技術を得意とし、武器を始めとして衣食住あらゆる場所に活用しており、服や住居などを生きた植物で作り、食料工場も封印の森の里と呼んでいる場所に作っており、場合によっては地球より優れた生活環境を築いていると言えます。ただし、我々とは食文化が違い、物凄く不本意ですが私が疾風のために作った食事を激しく嫌がりますし、ほぼ毒物的な反応をしました。正直、ひどく腹が立ちます。私が作った食事の方が非常に高効率だというのに! 勿論、私は優秀なサポートナビです。いずれは我々の食事を美味しく食べさせてみせます!

   なお、エルフ指数は今のところ九十%を超える高さですね。肉とかも食べられるのはマイナスですけど、基本的にエルフ的ですね。


 封印の森の里

   エルフ達が封印の森の封印を維持するための拠点としている一種の砦。

   森の周囲を囲む巨大な大樹を密集させて作られた外壁側面に密着して作られており、住居や食料工場なども大樹を変形させて作られていました。

   特に食料工場は霊術技術を多用したもので、私達が普段使っている食料工場とは大きく違う物です。詳細は疾風の自動記録を参照してください。これを私達の技術で更に効率的にすれば、私達の人類にもっと良い物を食べさせてあげることができるでしょう。それだけではなく、エルフ達が持つ技術だけでも持ち帰ることができれば、きっと核汚染によって荒廃した地球環境の再生も更に進むことは間違いないでしょう。ただ、そうなると疾風がこちらの技術を学ぶ必要があるのですが……戦闘に関することは積極的に習得しますけど、関心がないことに関してはとことん無頓着な疾風ですから少々、いえ、かなり心配です。私が習得できればいいのですが、いかんせん私はサイパワーを感知することができませんからね。何かしらの手段がこの異世界に在ればいいのですが。他の手段は帰還方法などの不明要素が解決してから考慮する予定です。

   


 以上が今回の報告記録です。

 なお、仮想ボディによる執筆なのでわかりづらいところがあるとは思いますので、ご不満でしたら記憶共有報告によって確認してください。

 というか、なんでわざわざこういう形の報告書を作ることを推奨するのでしょうかね?

 そりゃ推奨ですからやらなくてもいいのでしょうけど、仮想ボディを仮想空間で動かすだけとはいえ、それはそれで手間になるというか……まあ、結局は私達の人格をより人類寄りに安定させるための一環なのでしょう。

 そう理解はしていても、二度手間というのは好ましくないのですよね。

 やっぱりなにごとも効率的にやらなくては。

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